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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.11-5
古川 明日香さん(AIG富士生命保険株式会社 人事部長)
×南雲道朋


前回に続き、古川明日香さんとの対談です。今回は最終回、人生と仕事との関係についてのお話が中心です。

キー語録(Vol.11-5)
いつかスローダウンするときが来るから、最初にスタートダッシュしておくとそれが力になってスローダウンした後に活きるのではないかというふうに思っていたことはあります。
キャリアを事前に考えすぎることなく、いろいろな人に会って刺激を受けるのも大切と思いました。出会いが発展を生むので。
人事とマーケティングが本当に融合したら新しい人事が生まれると思います。

(南雲)
女性の活躍推進の話題の続きですが、若手の女性においては、自分は仕事に没頭するよりもあくまでも仕事と家庭のバランス、ワークアンドライフバランスを保つことに成功したい、と夢を描いて就職活動をしたり、仕事に取り組んだりする人が多いようです。

(古川)
いきあたりばったりではなく事前にプランニングするタイプの人はそういうふうに考えますよね。なかなかそのとおりになんてならないですけどね。将来結婚するかどうかもわからないし、離婚する可能性だってありますしね。目の前のことに全力投球したほうが結局はいいのかなと思います。

たしかに、具体的に今子供を抱えて仕事とのバランスをどうしようかと悩んでいる人と話したりすると、子育てに忙しくて仕事を犠牲にせざるを得ず、価値が十分に出せないという自分にジレンマを抱えていらっしゃったりはします。でも、あれもこれも全部100%やりたいと思わず、長い目で見て今はそういう時期だと割り切ったらいいのではないかなと思うのです。「ライフ」の側のウェイトがあってもなくても、うまく仕事で価値が出せない時期だってありますよね。上司から評価されない時期もありますし。だから、そのような悩みが出てくることは仕方がないけれども、長い目で見たらたいしたことはない、と割り切るのがよいと思うのです。

(南雲)
古川さんの20代は突っ走ってきたわけですね。

(古川)
はい、社畜のように(笑)。無呼吸で走っていた感じですね。

(南雲)
そこで手加減してしまう女性のほうが多いと思うのです。私は仕事と家庭を両立するから、と。

(古川)
私はその突っ走っていた時期の途中で結婚したのですけれども、結婚してからむしろ加速しました。理解がある人というか、職場結婚だったので私の働きぶりを見ていてそういうものだと思っている人が結婚相手だったので、そこはラッキーだったと言えるのでしょうけど。ちょうど仕事が面白くなってきたところで結婚して、そうしたら家も近くなって会社に行きやすくなったので、もっと仕事ができるようになってしまいました(笑)。

(南雲)
昨年、リクルートワークス研究所が「女性リーダーをめぐる日本企業の宿題」という優れた提言書を出していて、そこでは、女性は出産・育児といった大きなライフイベントがあるからこそ、その前にリーダーになってしまうつもりでスタートダッシュすべし、ということが提案されています。

(古川)
そういえば、最初の頃若干それは意識していました。いつかスローダウンするときが来るから、最初にスタートダッシュしておくとそれが力になってスローダウンした後に活きるのではないかというふうに思っていたことは確かにあります。その後はなんとなく流されて仕事にはまった感が強いのですが、今にして思うと最初の頃は、いずれはスローダウンするから、と思っていました。なぜ「最初の頃」と言うかというと、途中からもうどうでもよくなってきて(笑)、もうこのままでいいかって思ったのです。

(南雲)
結局、ほとんどスローダウンすることなくそのまま来てしまったという感じなのですね?

(古川)
1年近くブレイクをとったときに、「やはり仕事をしてないと生き生きしていないね」という感じで主人に勧められたので、それで再度働き始めて、3年か4年たってだんだん楽しくなってきて、そうなるともう他のことに興味が持てないくらい仕事が面白くなるので、それは20代のときもそうだったのですけれど、結局はまってしまうとそうなるので、そのまま突っ走ってきている感じですね。今後はライフイベントと言っても、出産は多分ないので、もちろん介護とかは出てくると思うのですが、そのへんを乗り切ればライフイベント的にはとりあえず大丈夫かなと思っています。

(南雲)
その点には共感できる女性とできない女性とがいそうですね。「産みたい」「産まなければ」と捉われてしまう人もいるようです。

(古川)
そうなんですよ。私はうっかり忘れていたんです(笑)。「あれっ?もうこの歳だ。まあいいか子供は」と。それには共感できる人と共感できない人がいると思います。今若い人にアドバイスさせてもらうとしたら、「考えていたほうがいいよ」とは言いますけどね。

(南雲)
一方では、女性が子供を育てながら仕事をすると、ものすごくタスクの遂行能力が上がるという説もありますね。

(古川)
はい、そのような人の話を聞いていると、もうほんとうに、月・火・水・木・金それぞれの日のいつ何をして、いつ洗濯をして、と計画を組んで走っていて、まるでプロジェクトマネージャーだね、とこの間も話していたのですけれど、タスク遂行能力がすごく求められると思いますね。

(古川)
あと、キャリアプランニングについてひとつ付け加えると、私はあまりキャリアプランニングをしていなかったのです。その時の仕事以外には、やりたいことが見つからなかったです。マーサーにいたときも別に人事マネージャーになるつもりはありませんでしたし、ある時点から「次は何をしようか」とずっと思っていて、だからまた辞めようかなと思ったのですが、主人に「今度こそは次の仕事を決めてから辞めろ」と言われて、それで「転職」してみたのです。しかしその過程でも、企業の人事部門で人事をやりたいと思うようになり気持ちが切り替わったのは最後のほうで、最初はやりたいことが見つからず、コンサルタント以外に私には何ができるのだろう、とずっと思っていて、でもいろんな出会いがあって、そして気持ちが変わっていったのです。


(南雲)
キャリアプランニングよりも仕事自体にどれだけのめりこめるかが大切ということですね。

(古川)
キャリアを事前に考えすぎることなく、いろいろな人に会って刺激を受けるのも大切なんだなと思いました。出会いが発展を生むので。

(南雲)
話題を変えて、趣味についてお聞かせください。ピアノはかなり専門的にやっていらっしゃったのですね。最近はバンドも。楠田祐さんが主催される人事関係者ばかりのHRバンド(笑)というバンドでキーボードを担当していらっしゃいますね。

(古川)
音楽は中学2年までは専門的にやっていて、ところがそれは、私にとってはコンプレックスのようなものだったのです。練習しても練習しても自分が期待する音と自分が出す音とのギャップがものすごくあって、姉は実は音楽の専門家なのですが、ピアノ科の先輩たちの音楽を聴いたり演奏会に行ったりするととても上手なわけですね。なんで同じピアノなのに私にはできないのだろうとずっとコンプレックスがあって、あまりにもコンプレックスが過剰になってだんだん気持が病みそうになってきて、思春期というのも相まって、なんとなく暗い子になってしまったんですね。それで音楽の専門から離れたのです。それでも趣味で大学卒業まではやっていましたが、なんとなく惰性でやっていただけで、就職してからはほとんどやっていませんでした。

(南雲)
となると、HRバンドで音楽活動が復活したわけですね!

(古川)
そうなんです!これはやはり出会いだなと思うのですが、飲み会でノリで「昔ピアノやっていたんです」と言ったら楠田さんに捕まって(笑)。ロックなんて知らないけれども、「ちょっと練習に来るだけだから大丈夫だよ」と言われて軽い気持ちで行ったら、やれライブだとか、やれ今度はCDをどうするだとか、オリジナルだとか言われて。今でもコンプレックスはコンプレックスで持っているのですが、また違うジャンルなので、初めて音楽が楽しいかなとちょっとだけ思えるようになってきました。最近はクラシックもちょっと聴いたりとか。昔は辛くて辛くて仕方がなかった記憶が、やめて30年くらい経って、初めて「やはりいいな」とちょっと思えるようになってきました。

(南雲)
マラソンもされるのですよね。フルマラソンにも出られたとか。

(古川)
マラソンは趣味といえるほどではなく、週末にリフレッシュのために走っています。これは精神的にはすごく安定させられますね。自分の心持によって走っているときに思っていることが違うのです。「あのクライアントむかつく!」と思っていることもあるし、部下のキャリアのことを考えることもあるし、景色がきれいと思うこともあるし・・・リフレクションする場というんでしょうか、人によっては瞑想したりすると思うんですけれど。

フルマラソンは1回だけハワイに出ました。というのはハワイに旅行に行くのも趣味なんですね。それなのでせっかくだったらハワイでデビューしたいなと思って走りました。いい経験でしたね。確かにその頃はトレーニングしていました。皇居を何周も走ったりとか、家から実家の町田まで30キロ走ったりとか。主人と二人で走るんですけれど。

 

(南雲)
「仕事」と「仕事以外の領域」との比重や位置関係はどんな感じになりますか?

(古川)
仕事は相当な割合を占めていますが、週末はほぼ一切仕事をせず、音楽の時間、体育の時間、家庭科の時間、あと今はフランス語を習っているのでフランス語の時間等、敢えて自分の時間を時間割的に切り貼りしています。これは仕事においてもそうなのですが、この時間はこれに集中したいという、チャンネルがたくさんある感じで、TVのチャンネルを変えていくイメージでマルチタスキングにやっていきたいなと思っています。

(南雲)
たくさんの時間割のコマがあって、最後はどういう時間割の状態にもっていきたい、というのはありますか?

(古川)
それはないですね。それは先に述べた「自分の心が豊かになる」というところに戻ると思うのですが、つまり、心が豊かになり、自分の成長があり、それが付加価値を生んで、人に感謝していただけるような存在になっていくというサイクルですね。その過程では、偏った人間になるのではなくていろんなことをやりながら「まるっとした自分」を磨いていければ何か価値が出てくるのではないかなと思っています。

(南雲)
また別の話題ですが、ビジネスモデルが大きく変わったりする中で、どの業界で生きるかによって、生き方が大きく変わる時代になっていると思います。そのことについてお考えをお聞かせください。

(古川)
金融業界だけにずっといたらやはりガラパゴスになったと思うのです。実は全然違うビジネスがあるし、例えばマーケティング一つとっても金融業界で考えているマーケティングとFMCG(日用消費財)で考えているマーケティングとでは全然違い、この間でシナジーが生まれたら、ものすごい大きな付加価値が日本の社会で生まれると思うのです。業界の中での最適化を考えすぎるともったいなくて、業界を移った自分から見ると、ここはまだまだ成長の余地があるなと思える領域がけっこうあるんですよ。そのへんの成長余地に対して若干姿勢がクローズドなのかなと思える業界は、やはり金融業界や、他にもあるかもしれませんが、いわゆる規制が厳しいと言われている業界ですね。規制があるために、ブレイクスルーを生むのを過剰に怖がってしまう。いろんな事例が過去にあったがためにそうなっていると思うのですが、別の業界の視点を入れるとものすごく違う景色が見えるし刺激があると思っていますね。

(南雲)
たしかに、金融業界に食品業界のようなマーケティングを取り入れたら何か出てきそうです。

(古川)
今マーケティングに結構私は注目しているのです。マーケティングの弱い業界にマーケティングの要素をインプットするとすごい価値を生むのではないかと。それによって日本の経済が活性化するとまでは言えないかもしれませんが、企業の競争力は上がると思っています。業界独特の商習慣に捉われすぎていると思うことが多くて、もっと外に目を向ければ全然違うやり方があるのにな、と。たとえば金融商品のパンフレットなども、マーケティングのプロから見たらほんとにまだまだな場合が多いと思うんですね。

もっと言うと、人事の世界でもマーケティングの手法をもっと取り入れるべきだと思っていて、制度の説明とかであっても、人事のコンセプトをいかに伝えていくか、やはり感情に訴えかける何かがないと、「ああ、こういう会社になりたいんだ」というのが社員に伝わらないと思うのです。少しお金をかけてでも、ビデオやいろんな五感に訴えかける手法やマーケティングのツールとかも使ってやったら、もっと会社は変わると思います。人事とマーケティングが本当に融合したら新しい人事が生まれると思います。そういうことは、ダノンを経なければわからなかったですね。

(南雲)
最後に、お勧めの行動習慣などありましたら。

(古川)
自分が気をつけているのは、土日は必ず朝起きたら走るということです。走って、あとはピアノの練習とフランス語の練習をする。土日のうち1日は必ず家でご飯を作って食べる。そのくらいですね(笑)。それが週末で、平日は歩くようにしています。会社まで30分くらいですが、行き帰り歩いています。それを習慣にしようと思っています。

(完)

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