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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.11-4
古川 明日香さん(AIG富士生命保険株式会社 人事部長)
×南雲道朋


前回に続き、古川明日香さんとの対談です。今回掲載する部分は、現在のこと、そして、これまでの経験の結果として出来上がってきた人事のスタイルについてのお話が中心です。

キー語録(Vol.11-4)
いろんな立ち位置でアドバイスすることができたのです。それまでは、そういうタイプの人事部門の人には個人としては出会ったことがなかったので、私はそれをしたいな、と思ったのです。
人事というのは実は営業だと思っています。ほぼ20年営業をやってきたようなものですね。
人事をやるには何よりも先にまず、人について知りたいという興味、自分への興味より人に対する興味、があったほうがいいでしょうね。

(南雲)
そうして、AIG富士生命に移られたわけですが、ポイントは人事部長という立場になられたことだと思うのですが、それで変わった視界などありましたらお聞かせください。

(古川)
目線はあまり変わらないのですが。ただ、人事部長という立場になってよかったと思うのは、経営者と間を挟まずに直接話ができることですね。

また、会社の規模としても、ある程度直接目が行き届かせることができる会社ですので、ダノンのときにある程度人事のスタイルを築くことができたと思っているのですが、そのスタイルを今の会社でも発揮することができますね。

もうひとつは、マーサー時代にせっせとやっていた「Pay for Performance」とか「Pay for Job」といった考え方はAIGは持っていますので、それを実際に運用していく立場で、社員にわかるように説明する機会があるということです。人事部長といってもそんなに人事制度に詳しくない場合もあるわけですが、そこは私の場合コンサルタント時代に人事制度を設計して職務評価を死ぬほどやってきたので、「こういう考え方です」ときちんと説明でき、だからマーサー時代の経験も今は結構役に立っていまして、もっと言うと、ダノンのときはあまりマーサー時代の経験が役に立たずどちらかというと学ぶことが多かったですが、ちょうどいま、マーサーでの経験とダノンでの経験が合わさって、役に立っている感じがします。

(南雲)
ダノンで築いた人事のスタイルで今生きているものとは?

(古川)
社員との距離感とか経営者との距離感、といったものですね。ダノンの人事ももちろん、人事部門の人によったのですが、私は社員との距離感をすごく近くとったのです。ほぼ全員と1対1で面談をして、工場もあったので工場まで出向いて行ったり、入社して3ヶ月くらい経った人みんなと面談をしたり、かなりいろんな人と個別に話をすることができました。一緒にお昼に行ったり、夜食事に行ったり、割と身近な人事をやってみたのです。

ダノンの価値観で「Proximity」という英語があるのですが、これは「近い関係」という意味なのですが、要は人との間に壁を作らないのです。フランス人って人と会ったときに握手ではなくてキスをするんですね。あれには驚愕したのですけれど。オフィスでこんなことしていいんですかって(笑)。すごく距離感が近い間柄を作るので、自然に社員に対しての愛情を感じることができたし、困ったことがあれば人事の立場として聞く場合、友人の立場として聞く場合、といろんな立ち位置でアドバイスすることができたのです。それまでは、そういうタイプの人事部門の人には個人としては出会ったことがなかったので、私はそれをしたいな、とダノンでやりながら思ったのです。

それは今の会社でもやろうとしていて、最初は社員からびっくりされるんですけれど。というのは、もともと富士生命には、人事部門というと「日本の人事部」的な人事権や評価権を持っているところというイメージがあったようなので、それをなんとか突破していこうと思ってやっています。

(南雲)
全社員と面談をされるのですね?

(古川)
ダノンのときはほぼ全社員でした。今の会社では、管理職レベルの方から始めて最近担当者レベルの方に広げ始めているところです。いい評判がたてば相談してくれやすくなるので、なんとなく壁がなさそうな感じの人から入っていっています。

(南雲)
人が怖いか怖くないか、というのはそのスタイルをとる上でのポイントになるように思いますが、人が怖いということはありませんか?

(古川)
銀行にいたころは人が怖かったです。今でも人見知りのところはあります。でも仕事のときはスイッチが入ります。人が好きになります。週末は無愛想なんですけど(笑)。多分営業をやっていたせいもあるのですが、銀行時代からそうです。銀行時代の仕事って営業もやるんですよ。マーサーも営業をやりますよね。

人事の仕事って営業の側面があると思っていて、例えばいろんな部門長の方に話をするときに「何か困っていることはありませんか?」とか「課題はありませんか?」とちょっと聞くと「実はこんな問題があって」と言ってくださるんですね。それが大きな火種の基になっていたりすると未然に防ぐことができるので、人事というのは実は営業だと思っています。ほぼ20年営業をやってきたようなものですね(笑)。

マーサーでプロジェクトマネージャーとしてお客さんとの間の一番前に立つと失敗したときに謝るというのは当然だし、課題を引き出す作業も提案するときに当然やりますよね。だから同じだなと思っています。今人事のメンバーには「席にいないでね」「歩き回ってね」と言っています。着任したときに最初支給されたのはデスクトップPCだったのですが、「私は動き回りますからノートPCにしてください」と言って変えてもらい、動き回っています。

(南雲)
GE出身で現在LIXILの副社長をされている八木洋介さんが、「戦略人事のビジョン(光文社新書)」という本の中で、組織の中を歩きまわって組織の状態を把握し、活性化のツボを押す、歩きまわる人事について語っています。

(古川)
確かに、会議に出るのが一番わかりやすいですね。この会社はここが今スタックしているな、ということを把握するには会議に出るのが一番だと思いますし、人材育成でも会議に出るのが一番いいかなと思っています。

「この人は仕事はできるのにプレゼンテーションがもったいないな」と思ったら「トレーニング受けましょうよ」と提案できるんですね。いろんな現場を見ていくことで、単に「プレゼンテーションのトレーニングがありますよ、皆さんどうですか?」と投げるのではなくて、こちらから「○○さんはここに課題があると思うので、いかがですか」と提案できるのです。

 (南雲)
そのような古川さんのスタイルを、コンピテンシー的に整理したらどうなりそうでしょうかね。対人関係コンピテンシーが中心、というわけでもなさそうですね。

(古川)
やはり自分のスタイルとしてはあくまでもプロマネで、目的を与えられて、タスクを決めて、それを進めていくというのをいろんな人たちと協業しながらゴリゴリやっていく、そういうタイプだと思っています。

(南雲)
キャリアアンカー(キャリアを形成するにあたって、これだけは譲れないという拘りの価値観)としてはどうでしょう?

(古川)
自分の中にはいろいろなアンカーがある感じがします。でも「役に立っている感を感じたい」ということは重要なこととしてあります。かつ、自分の力の全体を使いながら「役に立っている感」を感じたいということがあります。自分の7割の力で役に立ってもあまり満足感はないですね。だから「仕事が好きだ」ということになってしまうのですが。手を抜いて役に立ってもあまりうれしくない。

(南雲)
それはおもしろいところですね。手を抜いて力を入れずに効果が生まれるのがうれしいというスタイルの人もいますよね。

(古川)
そのような状態だと成長しないような気がして。マーサーを卒業するときもダノンを卒業するときも、そういう状態になりかけたので、もう卒業したほうがいいんだなと思いました。居心地が良すぎちゃって(笑)。

(南雲)
卒業という言葉が出ましたが、卒業していって、そして最後に目指すところはどこですか?

(古川)
そうですね、あまり会社の一員ということにはこだわっていないんです。だから最後はピン芸人みたいになっていくと思っているんですけれど(笑)。何か役に立てることがあれば呼ばれて、そこで問題を解決していく。

あまり難しいことはできないんですけれど、その場で困っている人がいたら助けてあげることができて、できるだけ多くの人に価値を与えることができて、そのような観点で経営者から必要だと思っていただけるようになる、というのが、自分という人間の活かし方という意味では正しいのかなと思っています。

(南雲)
ある意味でお母さん的な存在を目指すとも言えそうですね。

(古川)
困っている人がいると何とかしてあげたくなってしまうんですね。

(南雲)
女性のリーダーはお母さん的なスタイルでやるとうまくいく、という話があります。ご自身のリーダーシップということについては考えますか?

(古川)
リーダーシップという言葉を自分に当てはめて考えたことはあまりないですね。なんとなく自分らしくやればいいかなと思っていて。もっとも、それを周りから見た時にどういうリーダーシップと言えるか、という話は別途ありうるとは思いますが。

(南雲)
女性の活躍推進というテーマが今いろいろと話題になっており、指導的な立場の女性割合を増やすことについて政府目標もあったりもします。それについてのお考えはいかがでしょう?

(古川)
そのテーマについてはまだ整理がついていないのですが、女性は、派閥を作ったりとか、自分を自分以上に見せたりとか、そういうマインドセットは比較的少ない気がしています。逆にそこが出世の妨げになるとはよく言われますが。でもそこは、自然体でしなやかに活躍できる人が組織の中にいれば社内の潤滑油になるし、そういう動き方が男性にも刺激を与えるでしょうし、良い方向に働くと思います。今私自身は、女性であることですごく仕事がしやすいと感じています。管理職は男性がすごく多いのですが、言っていることを聞いてもらえますね。

(南雲)
女性とHR(人的資源=人事)分野の親和性という点ではいかがでしょう?世界的にHRは女性の王国みたいなところがありますね。

(古川)
グローバルにそれはありますね、人事のスタイルにもよるのだと思いますが。HRと女性的なスタイルの親和性が高いということはありますね。先ほどの個人一人ひとりと接点を持ってという人事のスタイルにはお母さん的コンピテンシーのほうがいいのかもしれません。一方ではやはり、戦略を作ってちょっと難しい決断をしていく、といったところでは、女性的なスタイルだけだと腕力が足りないところがあるのかもしれませんし、両方併せ持っていればベストだとは思うのですが。

女性のジェンダーとHRファンクションとの親和性は高いと言っていたほうが簡単かもしれませんが、ジェンダーとファンクションの関係ということについて、どういうふうに整理したらいいのか、私の中で解はないですね。別にエンジニアでもR&Dでも、女性が活躍できることはあると思うので。

いずれにしても、人事をやるには何よりも先にまず、人について知りたいという興味、自分への興味より人に対する興味、があったほうがいいでしょうね。

(続く)

(次回掲載は、人生と仕事との関係についてのお話が中心です。)

 

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