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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.5-3
田中潤氏
(株式会社ぐるなび 執行役員 管理本部 人事部門長 兼 総務部門長)
×相原孝夫


キー語録(Vol.5-3)
「次の世代に何かをしたい」という気持ちが結構強くなり、大学生の支援などもやっていたのですが、「次の世代の多い、若い会社がより発展できるように、何かできたら」という思いもありました。
やることがたくさんあって、面白そうという印象でした。
ぐるなびはいろいろな意味で世の中を変えてきました。
会社にもコミットし、ロイヤリティも持ちますが、人事という世界にもロイヤリティを持ちます。この2軸を持たないといけません。
外のネットワークを社内でどう活かしていくか、という点に面白みを感じます。情報を仕入れたり、悩みを共有したり、困った時に助けてくれる人をどれだけ持っているか、というのが大切です。



(相原)
田中さんが、もとは日清製粉にいらしたということを伺った時には、実はすごく驚きました。食べ物という共通性はあるものの、会社の歴史も、規模も、業種もまったく異なるのに、よく転職をご決断されましたね。

(田中)
そうですね。1900年設立の日清製粉とぐるなびという現法人で営業を開始したのが2000年のぐるなび、100年違いますからね。転職については、46才の時になる頃にたまたまお声がけいただきました。特に転職したいと思っていたわけではないのですが、漠然とですが、若々しいタイプの会社で、人事で一定のポジションをもらえる機会があればチャレンジしてみたいなとは思っていました。世代継承欲求というのでしょうか、40才を過ぎてから「次の世代に何かをしたい」という気持ちが結構強くなり、大学生の支援などもやっていたのですが、「次の世代の多い、若い会社がより発展できるように何かできたら」という思いもありました。

以前に日清製粉から出向していたフレッシュフードサービスのときに、私が判断してぐるなびの法人営業部門の顧客になったことがありました。

付加価値の高い冷凍麺の販路拡大施策を検討していたのですが、ぐるなびの法人営業部門の営業担当と相談して、客単価が比較的高い都内の店舗に紹介をしてもらうプロモーションを頼みました。その時に、単に飲食店のサイトを展開しているだけではなく、飲食店と直接のパイプを構築できている食の分野ですごくポテンシャルのある会社だなと感じました。食品メーカーにとっては、実は外食というのはまったくの暗黒大陸なのです。街の飲食店に食材が届くまでには、卸売が間に何重にも入っています。ですから、メーカーは自社の商品がどこの飲食店で使われているかすらわからないケースが多いのです。例えば、渋谷の街に日清製粉の小麦粉を使用している顧客が何軒あるのか、これが把握できないのです。でも、ぐるなびの詳細情報掲載店は9万9千店(2011年12月)あります。そして、その多くに実際に営業や巡回担当が足を運んでいます。これはものすごい潜在的な財産だと感じました。会った営業担当者のイメージも含めて、ぐるなびという会社に対しては、非常に面白い会社だというイメージを持っていました。

(相原)
転職に関して、不安はありませんでしたか?

(田中)
不思議と切実な不安はあまりなかったですね。家族も特に反対しなかった。でも、これはとてもありがたいことだと後から思いました。人事を離れて再び営業をやっていた4年間を私は「浪人時代」と呼んでいますが、この時期も人事関連のセミナーにはよく行き、ネットワークも広げていたのを知っていたので、理解してくれたのかもしれません。

冷静に考えれば、将来設計の面では若干不安はありました。例えばぐるなびには退職金制度はありません(現在は確定拠出年金制度が導入されています)が、日清製粉はこのあたりは充実しています。しかも、あと3年いれば、退職金が割増しになる年齢でしたし。仕事については、何とかなると思っていました。日清製粉から出向してフレッシュフードサービスに行った経験が大きかったと思います。その時もそれなりに楽しく仕事できましたから。たぶん、その経験がなければ、転職には踏み切れなかったかもしれません。。ひょっとすると、転職した当時はもっと不安があったのかもしれませんが、覚えていません。そもそも、不安の方が大きければ転職しないでしょう。

 


(相原)
転職当初のぐるなびの印象はどうでしたか?

(田中)
仕組み的には、思っていた以上にやることがたくさんあって、仕事としては面白そうだなという印象でした。また、想像以上に色々な人がいて、一人ひとりのバックグラウンドが本当に多様です。日清製粉みたいな会社に比べると、社内ダイバーシティ度が全然違う。また、日清製粉は組織で仕事をするのが強いが、ぐるなびは人で仕事をするのが強いという感じがしました。

(相原)
そうした大きく異なる環境に対して、適応にご苦労されたことは?

(田中)
特に強くはありませんでした。あまり慌てないでやろうと思っていましたし 、新しい世界に来たのだから、必要に応じて柔軟に自分のやり方を変えようと思っていたのも良かったのかと思います。前に人事にいた時は13年間も、担当者の頃からずっと同じ部署で上にあがりましたから、いつまでたっても自分でつい手を動かしてしまっていました。ほとんどの部下は自分の後任ですから、仕事のやり方も含めて細かいことまで気になってしまい、干渉してしまうところがありました。そのスタイルでやったら良くないと思っていたのです。フレッシュフードサービスでは、業務内容が違ったので、幸いそのようなマネジメントはできませんでした。それもよかったのだと思います。また、前職ではよく怒ったり、どなったりしていましたが(笑)、怒るのはやめようと思っていました。そんな話をすると昔の部下には驚かれることがあります。でも、今はほとんど人前で怒っていません。

細かなところに口出しをするのは、控えているつもりですが、しなきゃいけないところはしています。どんな組織にでもその組織のやり方があるので、新しい組織に入ったら一度はそこ流にやってみて、そうなっている理由を理解して、それでもやっぱり違和感を感じたら変えていく、という段階を踏むのが大切だと思っていました。自分ではそれなりには我慢しました。周囲はそう思っていないかもしれませんが・・・。とにかく、まずはやるべきことが多かったので、それが逆に良かったのかもしれません。


(相原)
会社についてお聞きします。優れた点、誇れる点はどんな点ですか?

(田中)
ユニークな点としては、純粋な意味での同業他社がない会社ということです。飲食店を紹介するサイトを運営していても、それぞれのビジネスモデルが違うので、逆に誰とどう戦うかが非常に難しいということはあります。日清製粉では取りあえず戦う目の前の相手はわかりやすかったですからね。そのため、常に自分たちのオリジナリティを磨くことが重要になります。創業者が徹底して、その点を追求し続けていることはすごいことだと思います。

(相原)
ネットで探して飲みに行く文化を作りましたよね。

(田中)
そうです。ぐるなびはいろいろな意味で世の中を変えてきました。店舗側の代表的な変化の1つとしては、駅前や大通りの一等地に出店しなくても集客ができるようになったことがあげられます。ぐるなび以前の時代では、路地裏の地下の店なんて誰にも気付かれずに見落とされていましたが、インターネットの世界では一等地にもできるんです。表通りの一等地と比較して土地代が数分の1の場所であれば、元手は少ないけれども、思いとアイデア・技術のある人が店を出せるようになります。家賃が安い分、サービスの質を上げたり、食材費にかけたりできる、誰にとっても素晴らしいことですよね。社会的にも実にすごいことだと思います。一般ユーザーにとっても、ぐるなびを見てから食べに行くというような新しいライフスタイルをもたらしましたよね。ぐるなびが社会を変えてきたことについては、社員みんなが誇ってよいと思います。

また、事業領域を絞り込み、飲食店のサポーターに徹していることもなかなかできないことだと思います。インターネットというキーで安易に事業を横に広げてこなかったところも私は良いと思っています。食は日本の文化であり、その舞台の1つが外食です。そのサポーターを徹底してやり切るということです。もちろん会社としてはまだまだ常に成長途上であり、テーマは山積みですが、何にしてもやるときは徹底してやることができる会社です。




(相原)
人事の仕事の魅力、醍醐味は、どんなところにあると思いますか?

(田中)
人事の仕事は専門職、プロフェッショナルだと思っています。会社にもコミットし、ロイヤリティも持ちますが、人事という世界にもロイヤリティを持ちます。この2軸を持たないといけません。例えば、会社がおかしいことをしようとしたら、人事の立場から言わなきゃいけない。でも、単に人事のプロというだけではいい仕事はできません。

自分の属する会社のビジネスモデルと現場をよく理解する必要があるわけです。このように「2軸がある」「2軸が求められる」というのは面白いと思います。

人事の人って、まったく外に出ない人とよく出ている人に二極化していますね。人事関連の会合に行くと、「また会いましたね」という人もいる。出れば出るほど、様々なものが得られます。人事部長は社内に1人しかいませんが、営業所長はエリアごとにいます。ですから、営業所長は社内で同じ仕事をしている仲間と互いに悩みを共有できます。でも、人事部長の本当の意味での苦しみや悲しみを理解してもらえる存在は、どんな会社であっても社内にはいないのです。でも、外に出れば、会社の数だけ人事部長はいます。そういう観点で見ると、外部の方と一緒に思いを共有できることはすばらしいと思います。また、若い年代の人事の人と語り合うのも楽しい、という思いもあります。まぁ、そういうことが好きなんでしょうね。

(相原)
人事の仕事の魅力は?という質問に対して、ネットワークについて話される方は多くないですね。

(田中)
私のスタイルでしょうか。外のネットワークを社内でどう活かしていくか、という点に面白みを感じます。情報を仕入れたり、悩みを共有したり、困った時に助けてくれる人をどれだけ持っているか、というのが大切です。例えば、社長と話していて「○○はどうなっている?」「あそこの会社ではどうなってる?」と質問された時、電話1本で回答できるような自分のブレーンを社外にどれだけ持っているか。これは、今の人事責任者の一つの必要要素かとも思っています。自社のビジネスモデルと現場の理解と同様に、リアルな今の外の状況をどれほど理解しているかも大切です。ここでも2軸ですね。

(つづく)

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