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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.4-3
西村隆氏
(朝日ビール(中国)投資有限公司 総務部長)
×相原孝夫


キー語録(Vol.4-3)
中間管理職として、自分が部下に対してOKの意思決定をした後に、さらにその上の段階で覆されてしまうことが極力ないよう、自分がまずは自分の上司としっかりコミュニケーションをとって、考え方のすりあわせをしておくよう心がけました。
人事部長は「最後は俺は社員を信じる」と言い切りました。
1つの仕事が終わったら次の仕事へと、淡々とやってきているのかもしれないです。

前回の書簡の中で、「社員に対して社内で将来どのようにキャリアアップしていけるか、当社で働くことでどういったメリット(スキルや知識が身につく等)があるか、そういったことを人事部門としてちゃんと社員に示していくことの必要性を痛感しました。」とあり、そのあとに、「ただ、よく考えてみると、これは日本と大きくは変わらないですよね。」と付け加えておられた点が非常に印象的でした。こうした、人事労務上の原点ともいえる点が、日本の職場の中ではなおざりになっているということに改めて気づかされます。

(相原)
さて今回は、当対談シリーズで主としてお聞きしている、ご自身のキャリアなどについてお聞きしたいと思います。まずは、西村さんの入社後のご経歴についてお聞きできますでしょうか?

(西村)
はい。入社して最初に配属になったのは、東京大森にありました東京工場の総務部です。主に勤労部門の業務を担当しました。主な担当業務は工場の臨時社員の採用・雇用管理、工場の安全衛生業務、福利厚生等でした。会社の仕事がどういったものか全く分からない状態で、周りの皆さんには大変迷惑を掛けたと思うのですが、何とか仕事を自分でこなしていけるよう、鍛えてもらいました。

工場には4年勤務しまして、その後首都圏エリアの営業拠点である首都圏本部の総務部に異動になりました。ここは3年勤務しまして、こちらでも主に勤労業務を担当しました。首都圏本部は当社で一番大きな営業拠点でして、営業現場の空気を身近に感じることが出来るとともに、多くの社員と顔見知りになることができました。

その後、1年間労働省に出向しました。配属先は本省の労働経済課でして、労働経済分析の補助や労働白書(現在の労働経済白書)の執筆等に携わりました。ちょうどこの間、省庁の再編を経験しまして、労働省から厚生労働省に変わりました。省庁の皆さんと一緒に、引越作業をした記憶があります。ここでは、初めて自社を外部の視点で見るという経験をしました。またいろいろと見聞も広まりまして、組織風土の違い等で苦労もありましたが、その分貴重な体験が出来ました。

出向から戻りまして、人事部に配属になりました。人事部には8年在籍し、期間が長かったこともありまして、人事企画部門、労務部門をひと通り経験することができました。

本社ということで、会社全体の方針策定に携わる経験も出来ましたし、また現場とは異なり、制度や枠組みそのものの企画立案や、制度・枠組みを基軸としたある意味間接的で総括的な全社の人事管理・労務管理を体験することが出来ました。

その後、2年前に現在の部署に異動になり、今に至っています。

(相原)
これまでのご経歴の中で、その後の職業人生を決定付けるような、転機となった出来事などはありましたでしょうか?重要な出会いですとか、新たな役割など。

(西村)
そうですね・・・、実は、自身が本当に正しい方向に、というか、会社員として望ましい方向にしっかりとステップアップしてきたのか、どうにも自信がないので、あまり立派なことは言えないのですが・・・、振り返ってみて強く印象に残っている時期として2つ紹介させていただきます。

1つは、入社して一番最初に配属になった東京工場総務部です。配属直後は先輩社員の下について仕事を一から教わっていたのですが、数ヶ月と経たないうちにその先輩社員が異動になってしまいました。そのため、まだ仕事に慣れていない段階で、もっと言いますとまだ会社生活そのものにも慣れていないような段階で、いきなり一人で仕事をやらなければならなくなってしまいました。当時の部長は「責任は自分がとるから思い切って仕事をしろ」という親分肌の人でして、相当迷惑も掛けましたし、時には厳しく指導もされましたが、大変お世話になりました。その中で、やはり自立して仕事をすること、仕事を自己完結させることの重要さを身をもって知ったように思います。また、周囲のメンバーも非常によく面倒を見てくれまして、お陰さまで何とか自分の会社生活のスタートが悲惨な形にならないようになりました(笑)。その後も当時のメンバーとはよく飲みに出かけています。

もう1つは、4、5年程前ですが、人事部で労務グループのリーダーになった時です。初めて所属長を拝命しました。内部昇格みたいな感じでしたので、仕事についての不安はまだそれほどではなかったのですが、それでもやはり身が引き締まる思いがしました。その時に思ったのは、部下としっかりと向き合って仕事をしようということでした。部下の考えや言い分はしっかり聞く、逆に、言いにくいことでも言うべきことはこちらからしっかり伝える、そういったことを強く心に誓った記憶があります。また、中間管理職として、自分が部下に対してOKの意思決定をした後に、さらにその上の段階で覆されてしまうことが極力ないよう、やはり自分がまずは自分の上司としっかりコミュニケーションをとって、考え方のすりあわせをしておくよう心がけました。うまく役割発揮できたかは分かりませんが、自分の仕事のやり方を意識的に変えようと努力した時期だったと思います。

(相原)
これまでに出会った上司や先輩等で、重要なことを教えてもらったというご経験はおありでしょうか?

(西村)
いろいろとあるので、これは、というものをご紹介するのは難しいのですが・・・、今自分の立場で心がけていることに絡むこととして、1つだけご紹介できればと思います。といっても本当に小さなことなのですが。

人事部で労務リーダーをしていた際、ある社員の私生活の行動が原因で外部の方からクレームをいただいたことがありまして、そのクレームの主の方と何度かお会いして、解決に向けてお話をさせていただいたことがあります。先方に不快な思いをさせてしまったこと自体は事実でしたので、当社としてお詫びすべき点は誠心誠意お詫びをしたのですが、その後の段階として当然社内の処分を検討しなければならなくなります。そうなりますと、その背景や原因、細かな事実等も考慮していくことになるのですが、双方の話からは確定できない部分も当然出てきます。

一体どちらの言い分が正しいのか・・・といった点です。例えば故意によるものか故意ではないのか、といった点も当然論点になります。そんな時、当時の人事部長が言った一言が非常に印象的でした。その社員については、私も人事部長もそれほど深く知っている人間ではありませんでしたが、人事部長は「最後は俺は社員を信じる」と言い切りました。その時、正直はっとしました。これが原点なんだ、と思った記憶があります。まあ、実際はいつもきれい事ばかりでは進まないのが常ではありますが、それでも、社員を信じようと思ったその時の記憶は非常に鮮明です。

今も、それをベースに、社員の皆さんと接するよう心がけているつもりです。そうでない時もあるかもしれませんが・・・そうだとしたら・・・すみません。

(相原)
ご紹介いただけるご苦労話などがございましたら、お聞かせください。併せて、そうしたご経験を通しての学びなどもお聞きできればと思います。

(西村)
苦労話ですか・・・結構いい加減な性格なのであまりこれといって深刻になったことはないものでして(笑)。日常の仕事の細かい部分で、いつもつまずいたり、遠回りしてしまったり、引き返したりと、いろいろと苦労したことはあるのですが、改めてご紹介するほどのことでもなさそうでして申し訳ございません。総じて、それなりに楽しく仕事をしてきたように思います。

ただ、やはり人事部にいた時は忙しいことが多く、残業も相当ありました。全社に影響する仕組みや制度を作り上げていくためには、部内でも相当議論をしますし、社員、労働組合、役員等とも相当議論をしますし、情報を集め、説明を尽くして進めていくことになります。そういった中で自分の権限の範囲で自らも意思決定を積み重ねていくのですが、そういった仕事の厳しさは、やはり時につらく思ったこともあります。まあ、当然多くの方が既にそういったことを乗り越えていらっしゃるのでしょうが。

(相原)
成功体験についても、ぜひお聞きしたいと思います。併せて、その中で成功に導くことができた要因についてもお考えをお聞かせください。

(西村)
成功体験ですか・・・。これはもっと難しいですね。正直に申し上げて、残念ながら自分の仕事に関して、とても満足できたとか、これは成功だった、と実感できた経験があまりないもので・・・。1つの仕事が終わったら次の仕事へと、淡々とやってきているのかもしれないです。むしろ失敗の方はたくさんあります。導入した制度にいろいろと不具合が生じて数年後に廃止せざるを得なくなったとか。

現在も、試行錯誤しながらやっていますので、後日振り返って本当に良かったと思えるのか、結構不安もあるのが実際です。それでも、勇気をもって意思決定していくしかないのですが。。。質問にお答えできていませんが、こんな感じでよろしいでしょうか・・。


(つづく)

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