多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.4-2
西村隆氏(朝日ビール(中国)投資有限公司 総務部長)
×相原孝夫
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(相原)
西村さんの文章は文学的だなぁと感心していたら、西村さんは東大の文学部のご出身だったんですね。それはそのはずです。普段はどんな本を読まれることが多いのでしょう?
(西村)
実は怒られちゃうかもしれませんが、それほど本を読むのが好きではなくて・・・。ただ、たまたまですが、上海に赴任する前に北方謙三さんの「水滸伝」を読んでいました。最近後編の「楊令伝」が文庫になったようなので、日本から少しずつ取り寄せ読み始めています。
上海赴任後は、同僚から進められたこともあって、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」に始まる一連のシリーズ、「珍妃の井戸」「中原の虹」を読みました。中国の清朝末期を舞台とした話で、自分も中国にいるということもあり、非常に入り込んで読むことが出来ました。出張中の機内で読んでいて思わず涙がこぼれてしまい、周りの人に気づかれないようにしながら涙をぬぐった記憶があります。
あとは、そうですね、読むのに解釈を要するような本は疲れてしまって長続きしないので、楽しんで読める本がいいです。宮部みゆきさんの本も結構好きです。
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(相原)
赴任して2年で、仕事上も私生活上も、日本にいるときとほとんど変わらない、という順応力を西村さんは発揮されていますが、皆が皆そうではないであろうと思います。日本人が中国で働くにあたって、人によってはうまく馴染めない人もいるかと思いますが、その場合、どんな点に馴染みづらさを感じると思われますでしょうか?
(西村)
上海は日本人も多く、日本人にとってとても住みやすい街だと思います。まずはそういう点で恵まれているのかもしれません。
ただ、やはり外国にいますので、仕事でも私生活でも、言葉の問題や習慣の違い等によって、全てを自力で解決する、もしくは自分がありたいと望む目標やゴールイメージを、自力で実現することが出来ない、ということが多くあるように思います。例えば買い物一つをとってみても、金額や機能、デザイン等で自分が手に入れたいもののイメージを持って買い物に出かけたとして、結局それを100%実現できないまま妥協せざるを得ない、もしくは大変な労力を要するといったことがままあります。
同じことは仕事でもそうでして、日本にいれば当然自力で解決できるようなことが、自力では何ともならず、すっきりしない形であきらめざるを得ない、もしくはどうしていいのか分からなくなってしまう、といった状況に置かれることがあるんだと思います。
コミュニケーションも同じでして、何とも煮え切らない形で尻すぼみになすような事が多いように思います。 自分も結構そういう体験をしました。そのあたりを自分の心の中でどう折り合いをつけて処理するか、ということが大事なのかもしれないですね。一方で仕事面では目標達成を求められるわけですから。
自分は結構いい加減な性格でして、まあそれでよしとして、適当に済ませてしまえることも多いように思います。すみません、自慢できることではなく、反省しなければいけないですね。。。
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(相原)
前回も少々お書き頂きましたが、そちらの職場の状況はどんな感じでしょう?日本での日本企業の職場と較べて、何か特徴的に異なる点はあるでしょうか?
(西村) 日本との違いとして目に付くところとすれば、当社はほとんど残業がないです。就業時間になるとほぼ全員がすぐに会社を出てしまいまして、残業している人は非常にまれです。他の日系企業では結構残業しているという話も聞きますが中国では日本と比較するとはるかに残業が少ないと思います。 |
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(相原)
私がかつてシンガポールに赴任していた時、シンガポール人の同僚の物言いがあまりに直接的なので、当初は戸惑いもあったものの、慣れてくると分かりやすくていいと思うようになったものですが、そのような、コミュニケーションスタイルの違いなどはいかがでしょうか?
(西村)
そうですね、実は私はあまり気にしていないのですが、同僚の話からは、やはり中国人は非常に自己アピールをしてくると言いますね。特に面談等評価に関係する場面ではそのあたりは非常に顕著のようです。また給与の情報等はほぼ筒抜けになります。そういった意味では、会社もしくは上司はしっかりと説明責任を果たす必要があるように思います。
あと、なかなか興味深く思ったのは、研修等で参加者に個人の意見を求めると、ほぼ皆が自分の意見をちゃんと主張します。中国語なのでその内容がどれほど妥当なのか良く分かりませんが、立場の高低や年齢の大小に関わらず多くの人は堂々と意見を言っているように思います。他社も同じなのか良く分かりませんが、このあたり、興味深く感じた記憶があります。

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(相原)
中国人社員には、愛社精神などは期待すべきではない、ということを、かつてある日本企業の中国駐在員の方が言っておられましたが、やはりそうした点はそう思われますでしょうか?ちなみにその方は、自分の右腕と見込んでいた中国人社員に、もっと条件のよい先が見つかったからと、あっさり辞められてしまったという苦い経験があったようです。
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(西村) 私も赴任前は「愛社精神が薄い」といった話を聞いておりました。ただ、こちらに来て少しずつ中国語が分かりだして、直接コミュニケーションを取れるようになると、実は意外とそうではなく、当社商品への愛着心といったものも含めて持っているんだなあと思うことが多くなりました。 |
確かに、有望な社員がすぐに転職してしまうという話はよく聞きますし、私も一度苦い経験をしました。ただそれは愛社精神とは別の次元なのかなと思っています。私もその時の経験から、ちゃんと社員に対して社内で将来どのようにキャリアアップしていけるか、当社で働くことでどういったメリット(スキルや知識が身につく等)があるか、そういったことを人事部門としてちゃんと社員に示していくことの必要性を痛感しました。なかなかうまくできていないのが実情ですが・・・・。今は、当社の平均勤続年数の長さという点を前向きに捉えて、もっと社員育成に力を入れていかないといけないと思っております。
ただ、よく考えてみると、これは日本と大きくは変わらないですよね。こっちで実感しているのは、確かに社会環境や歴史が異なりますから国民性というものがあって人の考え方も全く同じではないのでしょうが、ことさら日本人と中国人の違いを意識する必要なないのではないかと思っています。 ただ自分の思い込みで仕事を進めすぎないように、特に人事施策については、自分の中国人の部下や中国人幹部に意見を聞きながら進めるよう心がけているつもりです。
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(相原)
話は少々変わりますが、「中国の精神障害者は2009年時点で1億人以上に上り、このうち重度の患者は1600万人を超えた」という新華社通信からの報道を目にしましたが、
中国でも職場のうつの問題は、(御社でということではなく)一般に問題になっているのでしょうか?
(西村)
私も広く情報を集めたことはないのでかなり感覚的になりますが、それほど問題になっていないように思います。発症者が少ないのか、社会がまだ認識していないのか、何とも言えないですが、日本の状況とはかなり異なっているように思います。
社内でもメンタルヘルスの問題はまず聞かないですし、課題としても特に認識していないです。他社の知り合いの日本人に聞いても私と同じ感覚のようです。
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(相原)
最後に、少々仕事内容に関する件をお聞きしたいと思います。人材育成が一つの大きなミッションとのことですが、中国では、あるいは上海では、流行りの人材育成法ですとか、何か特徴的な育成法はあるのでしょうか?
(西村)
いやあ・・・すみません、私もそれを知りたいくらいで・・・。
こちらでよく聞くこととしては、中国組織は比較的トップダウン型だという点です。多くの企業が、強力なリーダーシップの元、トップダウンで意思決定していくというように聞いています。急速な経済成長の中でスピード感をもって対応していくという点で、もしかしたらその方が有利なのかもしれません。そうしますとそういった前提で組織作りをし、強力なリーダーを育成する、もしくは獲得する(中国の労働市場的には後者が多いのかもしれませんが)ことが企業の大きな課題という捉え方が出来ます。
一方で、最近では少しずつコーチングの考え方が支持されているようにも聞いていますので、ボトムアップ的な要素も取り入れ周知を結集していけるような組織運営も必要なのかとも思います。このあたり自分でも正直よく分かりません。ただ当社の場合、社員の勤続年数が比較的長いので、それに少し頼って、手探りで人材育成施策を実施していくしかないかなあと思っています。少なくとも、社内研修は、中国人社員のモチベーションアップに大きく寄与しているように思います。研修を求める思いというのは日本人以上に強いのかなあと感じます。
気をつけているのは、研修プランを企画には中国人社員にも参画してもらって、なるべく彼らの意見を取り入れているところです。 また別の方面ですが、こちらで多くの方からも聞きましたし、実感もした点としては、OJTがほとんど機能していないという点です。
その方向が正しいのかどうなのか、まだ確信はないのですが、現在の自分の思いとしては、社内で社員が仕事を通じて成長し、その中から幹部社員を輩出していく、そういった組織にしていきたいと思っております。そうしますと、OJTが非常に大事なのですが、推進はなかなか苦労しています。中国人はなかなか自分の得意技を人に伝えたがらないとも聞きますし、リーダーの行動や考え方にもその部分のウエイトが小さいように思います。そういった意味では、OJTの模範を示し、推進するという役割を日本人駐在者に求めていければいいなあと思っています。
(つづく)
























