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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.3-4
小西孝久氏
(東京海上日動火災保険株式会社 人事企画部 次長 兼 企画組織・能力開発グループリーダー)
×相原孝夫

キー語録(Vol.3-4)
専門性を尊重しながら、全体最適になるよう横串しを通す、これこそが自分の仕事なんですが、専門性のない素人の自分には最初はものすごく難しかったですね。
「俺にブレーキを踏ませてくれ」って、よく言いますね。アクセル踏みこんできたメンバーにはホントうれしくなって、ついついみんなの前で喜んで誉めてしまいます。
どうやって、自分の存在をこの組織の中で立ち上げていくのか、っていうのがものすごくストレスであり、難しかったですね。
自分がメンバーに勝てるものがあるとすれば、それは「思い」というか、「本気度」みたいな、気持のとこだけなんですよね。専門性では完敗ですから。
一戦目は絶対に負け。二戦目も多分負けですよ。でも、これを三戦、四戦とやっていくうちに、僕の言動から、ちょっとずつ何かが伝わり、感じていってくれるんだと思うんですね。
しこりが残る状態をそのままにしておくことが、すごくストレスなんです。自分が最も弱いところかもしれません。一番嫌なんですよ。
組織で働いているメンバーが今健全な状況かどうか、表情や眼の輝きみたいなものが、すごく気になるタイプなんです。どちらかというと、過剰に気になるタイプかも知れませんね。
今の仕事で自分に求められているのは覚悟をもって「決断する」ということですね。決断できないと、自分の存在価値はない、そう思って、いつも決断と向き合っている感じです。

 


(相原)
現在の部下の方々の場合には、大阪南支店でのマネジャーの時のような我慢は必要ないですか?

(小西)
全く違った種類の我慢ですね・・・。組織を統括する立場という意味では我慢するのは当然なんでしょうが、コーポレート部門の一員として、皆それぞれが専門性やプライドを持って仕事をしているんですね。この分野では自分が第一人者です、といったふうに。当然、部下であろうが、若い担当者であろうが、一定の年数、どっぷり使命感もってやっているので、転勤したての自分なんかより、ずっとずっと専門性があるわけです。それはほんと立派で、尊敬するほどです。

でも、専門性だけで答えがでるほど、時代は簡単じゃない、「正しさ」をふりかざした自己満足の仕事になって、変化の時代に求められているものとは違ってしまう。だから、専門性を尊重しながら、全体最適になるよう横串しを通す、これこそが自分の仕事なんですが、専門性のない素人の自分には最初はものすごく難しかったですね。

自分には、少なからず重ねてきた経験があり、うまく説明できない“感性”みたいなものが当然あるわけなんですが、専門性においては部下の方が圧倒的にすごいわけで、専門性のどこを生かして、どこを捨てるのか、いつも悩み、気を遣いながら、この専門性に向き合い、時にはぶつかり稽古も重ねて、仕事で本当に活かせる専門性について、少しづつ着実に学んできたように思ってます。

「今求められているのは“守り”じゃなくて“攻め”」といったことをよく言うんですが、自分たちの仕事は、どうしても変化を嫌い、リスクを嫌い、どうしても守ってしまう。やってきたことにも“正しい”といったプライドも無意識の中にあるので、“やめられないか”“変えられないか”と言われると、まず“できない理由”を専門的にならべてしまうんです。過去からこういう整理になってますから、と。いわゆる“前例主義”ってやつですね。

大切に守りを重視してきた組織なので、それはそれでわかる気はします。でも時代は動いてるんですね。「ゼロベースで考えたら同じことをやるか?」といった“ゼロベース視点”の問いかけを、いつもいつもずっと続けていると、メンバーは“ゼロ”の必要性を理解してくれ、主体的に攻めに転じることの仕事の“やりがい“のようなものも感じ、今は本当にゼロベースが浸透してきている実感があります。

変えることが自己否定であるかのような感覚もあったのでしょうが、それは“否定”じゃなくて、”前進“なんだ、ということが腹落ちしてきたんだと思います。「俺にブレーキを踏ませてくれ」って、よく言いますね。自分がアクセル踏んでちゃダメで、「アクセルを全開踏みこんでこい!」って。少し極端くらいに、リードするくらいでちょうどいい感じだと思います。なかなか簡単に習慣を変えられないのが普通の人間だと思うので。でも、アクセル踏みこんできたメンバーにはホントうれしくなって、ついついみんなの前で喜んで誉めてしまいます(笑)。

(相原)
そこが一番伺いたかったところで、格別に優秀な方々が集まっていて、(失礼な言い方かもしれませんが)プライドも格別に高い方ばかりだと思うんですよね。だからマネジメントも難しいだろうなと思っておりました。

(小西)
ええ、自分という存在を立場を超えて認めてもらえるようになるまでは、すごく難しかったですよね。大げさではなく、相当悩みましたね、最初の頃は。彼らにすれば、必要なんじゃないかと。

それぞれの専門ラインとしてですね。「お飾り」くらいにしか思われていないんじゃないか、って感覚ですよね。さすがに「お飾り」って言われることはなかったですが、たぶんそんな風に思っているメンバーもいたかも知れませんね。自分自身もそのように感じていたかもしれません。だからどうやって、自分の存在をこの組織の中で立ち上げていくのか、っていうのがものすごくストレスであり、難しかったですね。

(相原)
それぞれ皆さん優秀ですし、自律的でしょうからね。

(小西)
唯一、自分がメンバーに勝てるものがあるとすれば、それは「思い」というか、「本気度」みたいな、気持のとこだけなんですよね。専門性では完敗ですから(笑)。これから、何をするのか、どこを目指すのか、といった「思い」のところは、局面、局面でいつも口にすることで、「ああこの人本気だ」ということが伝わっていったのかなという気がしますね。

(小西)
たとえば、いろんな局面、局面があって、僕がこうした方がいいんじゃないか、と言うと、いえ、それはこうです、となって、敗戦・・ってなるわけですね。一戦目は絶対に負け。二戦目も多分負けですよ。でも、これを三戦、四戦とやっていくうちに、僕の言動から、ちょっとずつ何かが伝わり、感じていってくれるんだと思うんですね。“距離”をおいたままでは何も変わらないですけど、しっかり向き合って、一戦、二戦と重ねていくかどうかなんでしょうね。

転勤して最初に、何となく違和感を覚えたんです。優秀で専門性高いメンバーが集まっているんだけど、何か組織に一体感がないっていうのか、組織全体として、どこに向かって、何をしようとしているのか・・・。多分、組織として向かう目標みたいなものが、はっきりしていなかったんだと思います。

逆に言うと、そこをはっきりさせベクトルがあえば、これだけのメンバーがいる組織、相当強力になるし、メンバーにも数段やりがいが出て、さらに活躍するんじゃないかと。このあたりの感覚は自分が現場第一線でずっとやってきたマネジメントに通じるものがあったのではないかと思います。

(相原)
組織変革そのものだと思うのですが、一戦、二戦、三戦と膨大な対話をメンバーの方々とされていく中で、小西さんの観点であるゼロベースで考えるとか、外の視点で考えるといったことが一人ひとりに浸透していったということでしょうか。

(小西)
そうですね、みんな僕から言われたからやっているわけではなくて、「ああそういうことが必要なんだな」という本質のところが、だんだん各自の中で腑に落ちていったんだと思いますね。言われたからといって、その通りにやるような簡単なメンバーではないんです(笑)。やはり、プライド持った優秀なメンバーなので、上から言われたから「ハイ、やります!」というふうにはならないんですね。

本質のところで腹落ちするようにならないと、絶対浸透していかないですね。そこがしんどいところなんですが、逆に言うと、腹落ちすると本当に強い。目指しているところが、会社にとって、あるいは社員にとって意味がある、役にたっている、貢献しているといったことが、少しずつ腹落ちしてきたんだと思います。

(相原)
メンバーは自己否定され、プライドが傷つけられることで、しこりが残りませんか?

(小西)
意見がぶつかることがあっても、しこりが残る状態をそのままにしておくことが、すごくストレスなんです。自分が最も弱いところかもしれません。一番嫌なんですよ。だから、もし、反りが合わないなと思うメンバーがいると、何度でも向き合って話すんですね。飲みに行くも含めてですけど。それで自分の思いも伝え、相手の意見も聞きながら、“思い”共有していくっていうイメージですね。同じ方向に向かってやって行こうと。アプローチの仕方、プロセスが少々違っても、目的さえ共有できればいいのではないか。

向かう方向を共有できれば、お互い信頼感も生まれる、基本的に「HOW」はできるだけ任せるように意識はしていますね。細かい“HOW”は任せて、どこに向かうのか、何をするのかといった「WHY」「WHAT」は、最初にしっかり論議して、共有するようにしてますね。そこを抜きに「これでいきます」と完成版で来られたものを「アカン!」と言うと、流石に担当もヤル気がなくなるし、かといって妥協するわけにもいかない。

方向性やスタンスの共有から企画をスタートできると、いいスタートが切れ、健全な状況で仕事を進められる。仕事がきついですけど、変なストレスを感じることは、あまりなくなったと思ってます。

(相原)
しこりを残さないという点では、何度でも話すということに尽きるわけですね。

(小西)
そこは営業でのトラブル対応で身に着けた仕事の基本のようなものでしょうか。お客さんを怒らすと、怒らせたままには絶対しませんからね。関係改善に向けて、全力を注ぎますので、そういうアプローチの仕方というのはあるかもしれませんね。

(相原)
先にストレスを感じる状況についてお話しいただきましたが、逆にモチベーションの源泉となっていることは、どんなことでしょうか?仕事の醍醐味という点で言われた、全体への影響度という点が一つあると思いますが、それ以外ではいかがでしょう?

(小西)
色々ありますけど、監督をやってきた影響もあるのでしょうが、組織・チーム状況への意識がすごく強いので、その組織で働いているメンバーが今健全な状況かどうか、表情や眼の輝きみたいなものが、すごく気になるタイプなんです。どちらかというと、過剰に気になるタイプかも知れませんね。今、あそこがうまくいってないなとか、トラブってるなという状態になると、ストレスが生まれ、その状況を放置し続けることはできません。それを修復したくなるわけです。

でも、好循環な組織の状態が維持できていると精神状態はいいのですが、モチベーションが高まるという感じではありませんね。何かおかしい、改善しないといけない、といった感じになると、モチベーションが働くタイプかもしれません。有事になると全開!って感じでしょうか(笑)。これまでの携わってきた仕事は、結構ストレスのかかるハードな職場がほとんどでした。昔、お世話になった上司に「お前の主食はストレスだ!」と言われたことがあるんですが、ストレスのある職場が一番向いていると。今思うとあながち間違ってない気がしますね(笑)。

(相原)
今後もむしろ問題のある組織を担当したいですか?

(小西)
自分では意識していないですが、自分の持ち味はそういうところにあるのかもしれませんね。会社にとっては、都合よく便利に使われるタイプかもしれません。まあ、それでも使ってもらえればありがたいですけど。それから、もっている実力を十分に出し切れていない人の力を引き出すというか、元気を与えるというか、そういうところは、大阪でもそうでしたが自分のモチベーションになっていますね。

目的や目指すところを熱く語るということと、一人ひとりのやる気というか本気度をいかにして引き出すか、というこの二つがすごく重要かなと思ってます。これがうまくできたらマネジメントはうまく機能するように思うんですが、なかなかそう簡単ではないんですよね。

(相原)
東京海上に入ってどんな点がよかったですか?

(小西)
それはやっぱり素晴らしい人に出会えたということです。それが断突で一番ですね。元々は保険の仕事をしたいと思って会社に入ったわけでもなくて、就職活動中にいろんな会社の方と話す中で、この会社の先輩から受けたインパクトがまったく凄くて、これが動機になりました。会社に入って、どこに行っても常に学べる人が周りにいて、刺激を常に受け続けられている理由です。まだまだ上司から指導されることが多いですが、自分に足りないところを指摘され、いつまでも学び成長していけることは、本当にありがたいことです。

今の仕事、立場から、担当役員や社長との接点もありますが、存在感が違う。本気度っていうか、一言一言に信念を感じて、経営を預かるっていうことはこういうことなのか・・って、感じます。決断への覚悟とかそういうものが、ビンビンに伝わってくる。後ろ支えのない立場で決断している人の強さというものだと思います。「お前、本気か」と目を見つめて聞かれたとき、「もちろん本気です!」と言いきれる自分を持っていないと、なかなかお話などできないですね。

(相原)
仕事上大切にしていること、信条で付け加えられることがあれば、最後にお聞かせください。

(小西)
今の仕事で自分に求められているのは覚悟をもって「決断する」ということですね。決断できないと、自分の存在価値はない、そう思って、いつも決断と向き合っている感じです。メンバーにゼロベースでの企画が浸透してきているのに、自分が決断から逃げて、「まあ、ゆっくり考えよう」などと言っていては、組織にエネルギーが湧いてこなくなってしまう。“思い”を持って企画してきた案について、YESにしろ、NOにしろ、自分なりの決断をタイムリーに行うことが、重要だと思っています。やめるならやめてしまう、中途半端にしないことです。

それから、やっぱり組織の健全具合といったものを大切にしています。同じ組織で働いている組織のメンバーの表情から伝わってくる様子がすごく気になるんです。だからつまらない一言であっても、メンバーへの声掛けは多いと思います。彼らは迷惑かもしれませんが(笑)。組織のメンバーひとりひとりが健全で、基本的な信頼関係があれば、少々のことは乗り越えられますね。

(完)

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