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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.3-3
小西孝久氏
(東京海上日動火災保険株式会社 人事企画部 次長 兼 企画組織・能力開発グループリーダー)
×相原孝夫

キー語録(Vol.3-3)
第一線の視点だけでは、どうにもならなくて・・。広いというか、深いというか・・。考える切り口が足りなくて、自分が見えていた視界だけで考えると、全てがおかしく見えたり・・。くやしいけど歯が立たなくて。
どちらかというと、“外の視点”を重視してきたんじゃないかと思いますよ。
自分からキャッチボールをしかけて、働きかけていく、こういう動きはおそらく、どの世界でも基本じゃないですか。相手に関心を示して、相手をしてください、という意思表示だと思うんです。
この10年を預かっている自分たちが、次の10年にしっかりとバトンを引き継いでいく、そういう繋ぐ観点も大切なんだと思います。
そりゃ、いつも喜ばれる事をしていたい・・。でも、大胆に厳しい面を打ち出して、憎まれ役を買う、というのは、コーポレートにこそ求められるんだろうと。
判断まではできても、「よし、これでいくぞ」と最後のボタンを押す決断力、最後に上に立っている人は、ここが違うな、と感じています。

 


(相原)
コーポレートに来た後にご苦労されたことは?

(小西)
第一線との“ギャップ”を感じましたね。なんか違う世界というか・・・。会社に入った直後の新人のように、視界がまったく違って、先が見えない・・そんな感じだったと思います。もういい歳でしたが、毎日ストレスとの闘いでしたよ(笑)。営業第一線を15年以上やってきて、それなりに自分の価値観のようなものができあがって、自信もあって、余計にギャップが大きかったんだと思いますね。代理店さんやお客様のことを最優先で考えてきた第一線の視点だけでは、どうにもならなくて・・。広いというか、深いというか・・。考える切り口が足りなくて、自分が見えていた視界だけで考えると、全てがおかしく見えたり・・。くやしいけど歯が立たなくて。

第一線の現場の視点で考えると疑問に感じることが、会社全体といった大きな視界で考えると正しいようにも思えてくる・・・。それでもやっぱり何か違う・・、違和感や批判心も湧いたりして・・、日々答えのない中で、自分の視界の狭さ・・不勉強さに気づくことも多くて、とにかく葛藤とストレスの日々でしたね。

(小西)
キャッチボールを続けていくうちに、「現場しか知らないからな・・」といったニュアンスの言われ方が少しづつ減って、「第一線の感覚をどうやって活かして、実現していくかだ」といったやりとりが増えていったように思います。とにかく疑問をぶつけながら“キャッチボール”を積み重ねる。このキャッチボールで少しずつ自分が成長できたと思いますね。

野球もキャッチボールが基本、学ぶことが多いんですよ。 どこか、ひっかかりがあったりすると、社外や部外の人とキャッチボールがしたくなる。意外に新鮮なヒントやアイデアがあったりする。第一線が長かったこともあるでしょうが、どちらかというと“外の視点”を重視してきたんじゃないかと思いますよ。


(相原)
コーポレートの視界というのは、先ほどのお話にあったようにコーポレートの中でのキャッチボールを積み重ねる中で見えてきたということでしょうか。

(小西)
そうですね。とにかく関わりのある人とはキャッチボールを重ねて、相手の考え方や視界を感じて、また少しずつ「自分」という存在も相手に知ってもらう・・・。自分からキャッチボールをしかけて、働きかけていく、こういう動きはおそらく、どの世界でも基本じゃないですか。相手に関心を示して、相手をしてください、という意思表示だと思うんです。特に職場や仕事がかわった直後は、誰でも自信がないし、相手も半信半疑、といった状態。コーポレートで言えば、ずっとコーポレートで仕事をしてきている者は、後輩や部下で
あっても、それは大先輩の部分もある。

そういう後輩から学べることがいっぱいあるんです。いくら座学で勉強していても、それだけではダメ。人と人との関係の中で信頼感を作っていくんです。キャッチボールを重ねて、自分が持っているものを相手に伝える・・こういう働きかけは絶対必要ですよ。


(相原)
第一線の視界とコーポレートの視界の違いということでいうと、コーポレートは部分ではなく全体最適といいますが、全体を見た上での判断が必要になってくるという点が重要となるのでしょうね。

(小西)
全体感も大切だし、中長期の目線というのも重要ですね。会社がこれから10年先、20年先、そしてその先まで成長を続け、存続していくには、しっかり次の世代にバトンを受け継ぐというか、この10年を預かっている自分たちが、次の10年にしっかりとバトンを引き継いでいく、そういう繋ぐ観点も大切なんだと思います。転勤族は嫌なことは先送りして、逃げることもできてしまうので(笑)。でも、ここで差がでるんですね。今、やっておかないといけないこと、こういうことが、特に変革の時代に入った今は、いっぱい出てきている。自分の世代でやるのかどうか・・、もうここは信念とか覚悟、思いといったものがないと、一歩を踏み出せない。やりがいのある時代だと思いますね。


(相原)
場合によっては現状では社員の反感をかってしまうこともあるわけですね?

(小西)
そうですね。そりゃ、いつも喜ばれる事をしていたい・・。それでも、大胆に厳しい面を打ち出して、憎まれ役を買う、というのは、コーポレートにこそ求められるんだろうと。もちろん、前提には会社の将来、社員の将来のために、という強い思いがベースにあるからこそできることなんだと思いますけど。

(相原)
短期的な視点ではなく、より中・長期的視点で見ていく必要があるという点も、現場の視点と異なる点ということですね?

(小西)
そうです。どうしてもついつい目先の、短期的な視点に陥りがちになってしまう・・・。5年先、10年先にバトンを渡せるのか、という自問自答をしながら、そういう意識を持ちながらやらないと、目先に走ってしまいます。 偉そうに言っても目先で走ってることが多いですけどね。実際は(笑)。


(相原)
現時点で考えればこれはおかしいけれども、10年後を念頭に考えればそうではないということがあるわけですよね。

(小西)
そういう意味では「決断する力」ですね。これが凄く求められている。決断できる、決断する人がいないと、舵を切れず、気づいた時にはもう遅い・・、こういうことが起こってしまう時代では、正解なのか間違いなのかは誰にもわからない、答えがない中で物事を決めて進まなきゃいけない。この決断力が勝負なんだと思います。

これこそ経営をあずかっている人が持っている力、すごく感じますね。コーポレートで仕事をして、最も大きな気づきかも知れません。極端に言うと、判断まではできても、「よし、これでいくぞ」と最後のボタンを押す決断力、最後に上に立っている人は、ここが違うな、と感じています。優秀と言われる人はどの会社にもそれなりにいるのでしょうが、リスクというか重い判断と向き合って、“よし!”と決められる人が会社を動かすんだなと。

こういう世界に出会えたことは、コーポレートに来て学べたことだと思いますね。部下も、結局は、そういった上司の背中に魅かれるというか、結局は決断する人のもとに信頼が集まっていくんだと思う。正しいことだけを言う評論家はどこにでもいますが、じゃあどうするんだ、って言うことを、決められる人はそんなに多くはいないんでしょうね。

(相原)
今、言われた点がまさしく一つの点だと思いますが、コーポレートの仕事の醍醐味とは何でしょうか?

(小西)
会社全体、社員の将来に、すごく影響を与えるような、とても大きな責任、役割を担わせてもらってる、ということは、これは緊張感のあるやりがいの原動力になってます。

もちろん経営レベルで判断することが圧倒的に多いので、巷で言う中間管理職のような自分にとって、いつも緊張感と隣あわせです。考えていることが増えましたね。家でも「ねぇ、聞いてるの~!」って娘から言われたり(笑)。いくら考えても答えがない世界なんですけど・・。やっぱり考えないと・・(笑)。今の人事の仕事では、「ひとりでも多くの社員が活き活きと輝くために、人事として何ができるのか、それを追い求める」ことを、組織のビジョンに掲げてやってるんです。

担う役割がひとりひとり違う中で、目指す方向感を共有できれば、それは強い力になります。これは本当に大切ですね。目的がはっきりすれば、目的から外れた仕事は思い切ってやめたり、削減すれば良い。よく“ゼロベース”で考えよう、と口にしてますが、仕事の目的や意味を原点に戻って考えよう、ということです。メンバーひとりひとりがそうした考え方で仕事をするようになってくると、これはもう頼もしいですよ。

(相原)
今、中間管理職という言葉が出ましたけど、中間と言うように上の下の板ばさみというように、難しい立場だと思いますが、その立場をうまくやっていくコツみたいなものはあるんでしょうか?

(小西)
そうですね。やっぱりコミュニケーション、その質と量でしょうか。同じ話ですけど(笑)。上司とのキャッチボール、部下とのキャッチボール、結局そうした対話の中で、相手を知り、自分を知ってもらう。そこから信頼感・安心感が生まれる。上司の話を文字通りに部下に伝える、またその逆というような、単に伝書鳩をやっていては、それは仕事じゃない。本質をしっかり掴んで、自分で納得して、自分の言葉で伝えていくことが、中間管理職には絶対に必要と思いますよ。

でも、意外にそれができる人が少ないようにも思っていて・・、ここは問題意識が大きい。上司であろうと、部下であろうと、相手の話に正面から向き合って、自分の考えもしっかり挟みながらキャッチボールをしていくと、中間管理職にこそ、情報が集まり、活躍フィールドはいくらでも広がると思いますね。やりがいも大きいですよ。伝書鳩のうちはそりゃ楽しくないでしょうね。

(相原)
ご自身については、上、下どちらに厳しいとか甘いとかありますか?

(小西)
どうでしょうか。自分ではどちらに偏っているとかはないと思うのですが・・。さて、部下はどう見ているのでしょうか。上司にも意見する方じゃないかと思います。一緒に仕事をしている部下と共感・共有したものは、上に対してもしっかり伝えないと、そりゃ信頼なんて生まれないですよね。でも、全てがうまく行くわけではなく、その時に大きなストレスを感じてしまうんですね・・、組織人としてまだまだ自分の甘いところだと思ってます(笑)。思いの実現に向けてリードすることが自分の最大の使命なので、なんだか、部下に申し訳ない気になったりして・・。もちろん最後は気持ちよく従いますが、決めるまでは結構、しつこい方だと思います(笑)

(つづく)

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