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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.3-1
小西孝久氏
(東京海上日動火災保険株式会社 人事企画部 次長 兼 企画組織・能力開発グループリーダー)
×相原孝夫

これまでの2回も、同世代ながら明らかに自分にはないものを持っておられ、学ぶところが大である方々にご登場いただきましたが、今回も同様の観点から選定させていただき、普段あまりお聞きできないことも含め、いろいろとお聞きしたいと思い、東京海上日動の小西さんにお願いいたしました。

ミーティングに参加させて頂く中で、部下である課長の方々から、小西さんに対する明らかな信頼と親しみが感じられたので、この親しみの方については、いったいどのようにして醸成されてこられたのか、ぜひともお聞きしたいと以前から思っておりました。今回お話をお聞きし、この点について予想をはるかに超えるレベルでクリアに理解することができました。それと共に、大企業の管理職は自分にはとても務まらないという思いを強くした次第です。この点についての直接的な内容は第4回目になりますが、全回を通して非常に興味深い内容になっておりますので、ぜひご一読頂けましたら幸いです。

キー語録(Vol.3-1)
どのような人が相手だとしても、まずは“フラット”な感覚でその人と向き合うところから入っていける、というのがたぶん自分の大きな特性なんじゃないかなとは思います。
「この会社が常識だとは絶対に思うな」と、当時の上司が繰り返し言われていたんです。
「相手が必要としているのは何もしないことじゃないの?」とか「やめることじゃないの?」とか、よく言います。
そのまま回っていくという仕事があんまり僕は好きではないんです。
現場視点の良さを活かすために、「ここは譲れないな」という部分を、しっかり表現する人とそうでない人で分かれてくるという気がします。

(相原)
まず入社されてからこれまでのご経歴を教えてください。

(小西)
平成元年に入社し、最初は本社の法人営業部門を8年間、マスコミのお客様が主でした。今、振り返っても入社後、最初の1年はきつかったですね。学生と社会人の違い、基本動作を徹底的に教えられる日々で、今の自分の原点は間違いなく、そこにあると思っています。自分の無力さを痛感する毎日で、毎朝、今日だけ頑張って、会社を辞めようって感じでした。先輩が毎晩誘ってくれなかったら、今の自分がいなかったかも知れません。感謝しています。

9年目で初の人事異動を経験、都内の公務マーケットを担当する営業を5年間やって、14年目に所謂、管理職に昇任して大阪に転勤、リテール部門で営業拠点長を任命されました。有名な“キタ”や“ミナミ”といった中心から離れ、所謂“河内”と呼ばれるエリアの営業支社。どっぷりと地に足つけて、20名を超える部下や情があふれる地元の代理店さんに支えられて4年間を過ごしました。この時期に営業支社長という逃げられない立場を経験でき、マネジメントでも試行錯誤を積み重ねる中で、得たものは現在に至るまで自分のマネジメントの基盤になり、大きな自信になっています。組織をあずかる楽しさと厳しさ、を若くして経験させてもらった人事に感謝しています。

ところが18年目、突然全く予期しない本社コーポレート部門への転勤発令が出た時は本当に驚きました。えっ?て。経営企画部で特命の仕事を1年間、その後、持ち株会社で人事を1年間、そして現在、人事企画の仕事にかわって3年目になろうとしています。営業17年で3場所の後、コーポレート5年で3場所、なかなかなテンポ(笑)です。人事はとんでもないことをする、そう思っていた自分が今は人事の仕事をしているから不思議な感じです。

(相原)
営業が17年ですから、そのギャップはさぞ激しかったでしょうね。

(小西)
そうですね。本社から出先の営業拠点、首都圏から河内エリア、法人営業からリテール営業、現場第一線の営業からコーポレート部門など、これでもかっていう極端なギャップを経験させていただき、会社には心から感謝しています(笑)。場所場所で感じるもの、見える視界が違っていて、いろんな角度から物を見たり、考えたりする力が、こうした環境に置かれる中で育ったように思います。ギャップを経験することで、人間の幅は広がっていくことを実感させてもらいました。でも、やっと仕事に慣れ、見えてきた!と思ったところで転勤・・、確かに貴重な経験をさせてもらってますが、なかなかハードではありますね。

(相原)
ご本人としては本社に戻って来て、管理部門で仕事をしてみたいという希望はありましたか?

(小西)
正直、全くなかったですね。少しお話すればわかると思いますが、まったく“理”より“感”の人間です(笑)。この部分は全員一致!でしょう。もともと多くの人と関わる中で、自分の強みが活かせると、漠然と考えていたので、一貫して営業志望です。もちろん今も(笑)。しかも17年間、希望通り営業一筋で仕事をさせてもらっていたので、コーポレート部門はもう視界になかったです。自分が活躍するイメージもまったくゼロ、異動先が経営企画部での特命事項と聞いた時は、自分自身はもちろん、河内エリアは大騒ぎでした(笑)。

(相原)
確か、理工系のご出身でしたよね?

(小西)
はい、理学部卒です。でも、4年間体育会で野球漬けの毎日を過ごしていたので、例にもれず、やっとのことで卒業単位をとれた部類のひとりです。理系ですがアクチュアリーなどをイメージして保険会社に就活していた訳じゃありません。就活中に会った社員の中で、圧倒的に輝きを感じた会社が当時の東京海上だったんです。商社や証券会社、銀行など社会勉強!と思って、20社以上は回ったでしょうか。

名誉のために言うと、一応学部からも推薦がありましたが「営業志望です!」と早々に宣言したところ、「そうか」(笑)。確かに実態は理学“部”で

はなく、野球“部”だったので当然です。子供の頃から野球一筋で、この奥の深いスポーツに取り組む中、漠然と“人間性”“人間力”のようなところで勝負できる仕事に魅かれていたのかも知れません。強みかどうかはともかく、“人”に対する許容範囲が広いというか、間口が広いというか、人に恐怖心や違和感などの類を感じることはあまりないですね。どのような人が相手だとしても、まずは“フラット”な感覚でその人と向き合うところから入っていける、というのがたぶん自分の大きな特性なんじゃないかなとは思います。


(相原)
それは学生時代、スポーツをやる中で身に付いたものでしょうか?

(小西)
そうかも知れません。野球を通じて、いろいろな仲間に出会いました。監督・コーチ、親まで含めると、相当な数になると思います。選手全員が上手いわけではなく、それゆえ野球に対する選手の価値観や親の期待もさまざま。当然、皆社会人になっていますが、会社員のほか、教師、園長、公務員、鍼灸師、工務店、税務署、大学、消防士等々、様々です。見た目が真面目な奴もいれば、“コワイ”人相の選手もいる。でも案外、そういう奴が優しかったりする。人は見た目で判断できない!ってことを無意識に学んだのかも知れません。

それから関西出身ということも大きく影響してますね。都会育ちの人は関わりがあっさりしているように思います。関西人はとにかく絡んでくる(笑)。執拗なくらいに関わってきます。お祭りがあれば必ず知らないおっちゃんが話しかけてくる、友達のおばちゃんから本気で叱られるなんて、当たり前。そういう意味では関西はダイバーシティー、多様性の地域なんでしょう。野球を通じて、或いは関西という環境の中で、あいつは変だとか、あの人は怖いだとか、少なくとも表面的な印象で人を決めつけずに、逆にフラットに近づいていける、そういう一面が自分にはあるのかなと。勝手な先入観で、勝手に線を引いてしまい、距離を置くことで、チャンスを逃しているとすれば、ほんとうにもったいない。懐に入れば同じ人間、というのが基本的なスタンスなんです。

(相原)
そういった「対人対応」には最初から自信がおありでしたか?

(小西)
自信というより、自分の中ではごく普通の感覚に近いかもしれません。相手によって、価値観も違えば、関心やニーズも当然違うでしょうけど、相手と自分の間に信頼関係を築くためには、線を引いていては無理ですよね。間違いなく、チャンスも逃してしまいます。まずは、意識的にでも勇気を出して、その人に正面から向き合って関心を寄せてみる、その人のことをあれこれ聞く、ということがスタートじゃないかなと思います。

(相原)
そういう特性、強みは、コーポレートになってからも活きる場面は多かったですか?

(小西)
そうですね。17年もの営業経験で培った強みを活かさないと、自分の存在価値が示せなくて・・・(笑)。コーポレートでも、関係者との連携や交渉などは日常で、立場や役割の違う人の中で、自分の強みが活かせているのではないかな、とは思います。コーポレートの仕事こそ、本来、「熱い思い」や「人間力」といった“情感”の部分が必要と思うのですが、うっかり机上の論理偏重になってしまうと、知識や論理こそが力に感じてしまい、専門家による蛸つぼ化、よく言われる縦割りの弊害が起こりやすくなるんですね。

専門家同士がお互いに間をとって、踏み込むことをしない。そういう風土ってどの企業にもあり得るように思うんですよ。でも変革が必要なんですね。専門家よりも素人感覚がヒット商品を生んだりする・・。外に敏感で柔軟性のある感性がすごく重要になってくるということだと思うんです。お客様って論理じゃなく、センス“感性”に反応する。所謂専門家と素人が健全にぶつかりあって、生みだすもの。多様性をどうやって活かしていくのかが、時代のキーワードだと思います。新と旧、プロと素人のような。ぶつかり稽古をすると、お互いの距離が近くなって、意外にも親近感や信頼感が高まったりする。そういう意味では、個々の持っている力を最大限に活かすような、組織の力を高めるような、個人へのアプローチ、働きかけ、広い意味での環境作りという部分に、自分の持ち味を発揮できているのかも知れません。信頼関係を築くプロセスにおいて、臆することなくズバッと切り込んでいける”鈍感”さの背景には、人に対する基本的な信頼があるのだと思います。まずはフラットに・・・、入り口での苦労はあまりないかもしれません。

(相原)
そうすると、コーポレートの中では比較的少ないタイプといえるでしょうか?

(小西)
確かに多くはないかもしれませんね。希少価値ということで(笑)。コーポレート部門に限定せずとも、当社においては一般的ではないかも知れません。ちゃんと自負しています(笑)。失礼なことはよく言ってるんだと思いますよ、きっと。でも、相手に受けとめてもらえている、ほんと恵まれています、得な性分なんです。ただ、自分は、いつも相手に正面から向き合おうとはしていますね。正面から向き合えていれば、些細な表現なんかは二の次なのかも知れません。まあ、失礼がないに越したことはありませんけど(笑)。

(相原)
失礼ながら、外部から見ても小西さんの場合、御社に対して抱いていたイメージとは多少異質な感じはありました(笑)。

(小西)
それは褒め言葉に聞こえますね。自分の存在を認めていただいたようで(笑)、先ほども話しましたが、入社直後の上司の影響がとても大きいのですが、その上司もかなり個性のある憧れの上司でした。実は当社で活躍されている諸先輩の多くが、異質、というか個性的なリーダーが多いんです。その当時の上司は「外へ行け!外を感じろ!外では今何が起こっているのか!世の中がどうなっているんだ!とにかく外に目を向けろ!」「遅くまで仕事ばかりしているより、遊びに行って世の中を感じろ」などとよく言われたもんです。「当社の常識は世の中の非常識」とも。常に、自分を見つめ直せる良い言葉だなと思って、自分も部下に話したりしていますね。こういった外からの視線は本当に大切だと思います。

 

(相原)
その教えはその後の仕事の中で、どんなところで役に立っていますか?

(小西)
今、様々な検討をする上で、原点においている考え方になってます。ゼロベースで考える!ってことですね。特に変革が求められる現代では、こうした「外」の視点で物事を考えることは本当に重要だと思います。どうしても内向きの発想になりがちで、一所懸命にお客さんのことを考えているつもりでも、それがお客さまから見てどうなんだろうか、ひょっとすると勝手な思い込みで、まったく相手の求めているものになっていない、なんてことが、案外多いような・・・。ゼロベースの視点を強く意識して、スタート地点に立つ、この「ゼロベース」がキーワードと思います。「相手が必要としているのは何もしないことじゃないの?」とか「やめることじゃないの?」とか、普段、よく言ったりします。企画セクションにいると、何がしか新たなことを始めがちですが、それゆえ、その新しいことが本当に会社や社員にとって必要なのか、不要なんじゃないか、といった視点が絶対に必要だと思います。

(相原)
客観的になって、いったん問い直してみるということですね。

(小西)
その通りです。自分の職場でも、すっかり「ゼロベース」の意識が浸透してきたと思いますし、そういうメンバーは、とても頼もしく映ります。仕事の目的や意味を原点から考えることは、少々面倒かもしれませんが、実はそこに働きがいややりがいの本質が隠れていたり・・。なので、自分はルーティン、そのまま回っていく、といった仕事があんまり好きではないんです。やりがいを感じない。「それってやる意味あるの?」とか、「やめたほうがいいんじゃないの?」とか、普段から発信していると、部下からは面倒な存在に映るのでしょうが、リーダーがそうした投げかけを続けていると、必ず伝播していくと思うのです。まあ、勝手にそう思っているんですけど(笑)。人事の仕事で言えば、社員が成長し、輝いていくために人事部門ができること、果たすべきことは何か、どういった貢献ができるのか、そうした考え方が習慣になれば、良い仕事ができると思うのです。

(相原)
そういうご経験からの現場視点をコーポレートでも持ち続けることが重要ということですね。

(小西)
コーポレートと現場では、当然、ミッションが異なるので、判断の軸も、現場とは違ってくることは仕方のないことですけど、その時に、現場での経験、視線を頭において、意識しながら、考えていけるかどうか。現場で大活躍した社員がコーポレート部門に異動したとたん、人が変わったように保守的になったり、ルールブックになったり・・・。これだと営業経験がまったく活かされていない。コーポレートでも、現場視点の良さを活かすために「ここは譲れないな」という部分を、しっかり表現する人とそうでない人で、分かれてくる気がしています。現場感覚をしっかりと反映させていこうという、そういう視点をもって、仕事を見渡せる人が増えていくと、揺るぎのない、力強い会社でいられるように思います。言うは易し!で、そう簡単ではありませんが。
(つづく)

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