多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.2-5
太田直樹さん(MSD株式会社 取締役執行役員 人事部門統括)
×相原孝夫
(2010年10月1日、万有製薬株式会社とシェリングプラウ株式会社が統合してMSD株式会社となる)
| キー語録(vol2-5) |
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| ・ | この会社が良くなることで確実に世の中のためになっているという確信が自分には必要です。 |
| ・ | 会社に行くのが嫌だと思ったことは、生まれてこの方あまりないような気がします。 |
| ・ | 人事という仕事は正に経営そのものだと思うんですね。 |
| ・ | タフメッセージを伝えなければならないとき、相手に最大限のリスペクトをもってするということが大切なことです。 |

(相原)
これまで4社ご経験なされて、その都度なんらかのチャレンジを求めてご転職をされてきたわけですけれど、仕事を通して何を求めていますか?
(太田) 自分、会社、世の中の3つがちゃんとセットになっていてほしい。会社は世の中の役に立っているけど、自分は成長しないっていうのではやっぱり面白くないし、自分ばかり成長しているけど、こんな会社なくても誰もどうでもいいと思っているみたいなのもやっぱり耐えられないし。まず自分が昨日できなかったことができるようになるというのが、そ れは単なる自分のエゴのためじゃなくて、自分が |
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これは趣味とかそういうものではなかなか得られない連関だと思うんですよ。趣味でどんなに自分が向上してもそれで世の中が良くなると思えないだろうし。仕事というのは、自分自身を鍛錬することが世の中のためになるというつながりを持てる場だと思うので、それが自分にとっては重要ですね。
(相原)
基本的に毎日仕事は楽しいですか?
(太田)
会社に行くのが嫌だと思ったことは、生まれてこの方あまりないですね。銀行にいて営業をやっていて数字ができなかったときにはさすがに会社行くのがいやだと思う朝もありましたけど、そのときぐらいですね。あとは会社に行くのが嫌だと思ったことは一度もないような気がしますね。
別にだからといって仕事馬鹿というわけでは決してないと思います。私は焼肉も寿司も大好きなんですが、仕事が焼肉で遊びがお寿司だとすると毎日焼肉でもいいし、毎日寿司でもいいんですよ。
朝から晩まで寿司でも多分文句は言わないと思うし、朝から晩まで焼肉でも、これはなんか健康に悪そうでうすが、文句は言わないと思います。同じように、毎日朝から晩まで仕事でもいいし、朝から晩まで遊びでもかまわない。とにかく食べておいしければ、つまりやっていて楽しければ毎日仕事でもいいし、仕事よりも楽しい遊びがあったら遊びにするだろうし、そういう感じですかね。バランスを考えるタイプではないんですよ。本当は人事部長としては失格かもしれないですけれど。
(相原)
仕事とプライベートをはっきり分けるというような発想はあまりないですか?
(太田)
ないですね。たとえばゴルフがすごく好きな人がいるとします、ゴルフがすごく好きな人は何百回も素振りを繰り返しても苦にならないと思うし、ゴルフをするために早起きしたり、上手になるために筋トレしたりするのも嫌じゃないと思いますよね。素振りだけ、筋トレだけやっていろと言われたら嫌だと思いますけど、でも大好きなゴルフがうまくなるために筋トレをやっている時間は楽しいんだと思います。
仕事もそんな感じですよね。別にエクセル打ってて楽しいとか、パワポ作ってて楽しいとかは思わないけれど、でもそれも全部、自分が仕事を上手くやるためのプロセスだと思うと、素振りや筋トレをしているかのごとく、それも自分としては楽しい時間に入ってしまうという感じがありますね。
(相原)
だから休みの日に会社のこと、仕事のことと思い巡らすということはごく自然なことなんですね?
(太田)
ええ、それはけっこう自分の中で楽しいと思います。僕は思いつきをいつでも書き留めておけるように、家中のそこいらにメモとペンを置いてるんですけど、その紙を取って「ああ、何か湧いてきた、湧いてきた」と思って書いている時間というのは、自分では趣味の時間と同じくらいの楽しさがありますね。
(相原)
実は私も仕事とプライベートを特に分けない方なので、そういう気持ちはよく分かります。
(太田)
西洋の人の言葉だったと思いますけど、「それが仕事なのか遊びなのかというのは本人には関係ない。それは周りの人が決めることであって、本人にとっては夢中になってやっている限り、それは仕事でもあり遊びでもある」というようなことが誰かの言葉であったと思いますけど、それは自分としてはすごくしっくりくる考え方ですね。

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(相原) (太田) |
例えば、社長として一番インパクトのある仕事のひとつは後継者の育成と選定だと思うんですよ。そういう場に自分が携われるということがやっぱり人事の仕事の一番の醍醐味です。
だから私が今まで人事の仕事をしてきて最もやりがいがあったなと思うのは、自分のいる会社で社長の後継についての相談をされて一緒に考えるときだとか、あるいは社長が新しい経営陣をつくるときのプランニングを考えたり、そういうときに「太田さん、まだ誰にも話してないんだけど、こういうことを考えてるんだけど、どう思う?」とか「太田さん、誰にも言ってないけど、自分は3ヵ月後に帰国することになったんだけど、後任どうしようか?」と言われたときに、あぁ、こういうことを相談してもらえるようになるために、正にこういう経営者のパートナーとしての仕事をするために今日まで頑張ってきたんだよなと思いますし、そういう仕事をしている瞬間というのが、一番の醍醐味ですかね。人事をやっていて「冥利に尽きる」というのは実はそこなんじゃないかなと私は思っています。
(相原)
一方、人事の仕事の辛さ、大変さというのはどのあたりなんでしょうか?
(太田)
人事の仕事は経営のパートナーであるのと同時に社員のサポーターでもあるというふうにいつも思うんですが、この二つが両立できるときはすごくいいと思うけれども、この二つが背反を起こすときが当然あるわけですよね。たとえばそれはリストラとかでしょうか。両方を両立させるのは非常に難しい。
だけどベストを尽くすことはできると思うんですね。タフなメッセージを誰かに伝えなければならないときとか、いわゆる難しい話をしなければならないときですね。そのときもそういう仕事をしなければならないということをあまり恨んだり嘆いたりしても始まらない。 タフなメッセージを人に伝えなければならいのであれば、せめて相手に対する最大限のリスペクトだとか、そういうものをもってしてやるということが自分にとっては大切なことかなと思うんです。辛いけど大切なことですね。
相手に喜ばれない話をするのは私だってうれしくないけれど、精一杯誠意を込めて相手に対する敬意を持ってやろうといつも思っています。それで、そういう時の相手の方が2年後、3年後に挨拶に来てくれたり、「お陰様であのときよくしていただいて、今はこんなに元気にやっています」といって下さったりします。恨まれてもおかしくない、「お前のせいで」みたいなことを言われてもしょうがないのに、そうやって戻ってきて挨拶をしてくれる人がいるというのは、逆の意味でまた冥利に尽きるなと感じます。
(相原)
一番辛い場面から生まれる喜びですね。
(太田)
そうですね。そういうところでも逃げずに精一杯やらなくちゃいけないなと思います。そういうときこそ、今度は能力ではなくて人間性が問われるんだなという緊張感がありますね。肩書きとかを超えた人間としての真っ当さみたいなものを問われている、人間としてテストされてるんだな、ということはよく思います。
(相原)
企業で人事の仕事をする人たちへ向けたメッセージを何かお願いできますか?
(太田)
私もたまに人事に関するレクチャーをする機会があるんですけれども、いつも最初にする質問が、「あなたの会社の重要課題を3つ書いてください」ということです。「今我々の会社はこういう部門を強くしなければいけない」だとか「我が社は今こういう経営環境にさらされていて、緊急にこういうことをしなければならない」とか皆書くわけです。で、次に、「今あなたがいる人事部の課題を3つ書いてください」と言います。「今こういうことをやっている」、「こういう制度を導入する」とか「ワークライフバランスだ」と書く人もいます。
それぞれ3つ書いてもらって、「ではあなたの人事が取り組んでいる課題3つと会社にとっての課題3つはリンクしていますか?」と訊いてみます。「リンクしていないとしたら何かおかしくないですか?」と。「今日はそういうところからスタートしましょう」といつも話をするんですよ。つまり、そこで自信を持って「今我が社はこういうことが急務だから、人事がこういうことをやっているんだ」、あるいは「中長期的にこういうことが課題だからこういうことに取り組んでいる」とそのリンケージがわかっていればいいと思うんですが、会社は必死にあっちへ行こうとしてるのに、人事はそれとは関係ないところで仕事しているみたいなのはおかしい。
だからどんなに仕事が細分化されていようと、あるいはジュニアなレベルで仕事をしていようと、それのリンケージを頭の中で繋げていないと人事の仕事の本当の面白さは得られないと思います。そういう考え方ができないと、さっき言ったような冥利に尽きるところにはたどり着かないような気がするんですよ。一方で、どんなに若くても常にそういうことを考えるようななら、人事の仕事の面白味・醍醐味・冥利というものをどんどん感じていけるようになるんじゃないかと思います。 (完)

























