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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.1-4
山崎正晴さん(横河電機株式会社 執行役員 人財本部長)
×相原孝夫

キー語録(vol1-4)
意思決定のスピードは階層を1つや2つ減らしたところで、そうは変わらない。
コミュニケーションを規定したことが失敗だった。目標管理制度はやめました。
昔はこれ以上やったら失敗するよというのが分かっていたと思うんです。
スポーツと同じような感覚があります。
仕事をしないでいるというのはあまり考えられませんね。
駅伝ランナーみたいなイメージをもっていて、限られた期間の中で、今より良くして次にたすきを渡したいという気持ちがあります。
一番怖いのが内部から壊れることです。

意思決定のスピードは..

コミュニケーションを..

(相原)
次に、職場についてお伺いしたいのですが、職場は何かとクローズアップされてきています。全ての問題が職場で起こることなので、当然ながら職場というのは重要な単位であり、問題発生場所でもあるわけです。その職場力、あるいは現場力が弱ってきているということがよく言われています。10年前、あるいはそれ以前と比較して、職場でどういう変化が起こっていると思いますか?


対談

(山崎)
変化は結構たくさんあると思います。薄くなったと感じていることで言えば、例えば、職場単位でも個人単位でも、対人的な直接のコミュニケーションが圧倒的に少なくなったように感じています。それから、中長期的にものごとを考えるということや、失敗への「寛容さ」なんかも減ってきたような気がします。

(相原)
コミュニケーションについては、何故に薄くなってきているのでしょうか?

(山崎)
さまざまな要因があって、Eメ-ルなんかも一つの要因だと思いますし、組織のフラット化や成果主義の人事制度の流れなんかも影響しているかもしれません。社会的な大きな話しでは、少子高齢化や学校教育なんかも影響があるのかもしれません。

(相原)
フラット化というのは、その目的の一つにコミュニケーションの円滑化ということもあると思いますが、むしろ逆に働いているということでしょうか?

(山崎)
フラット化の大きな目的の一つは、意思決定のスピードを上げる、ということだったと思います。でも、組織の階層を1つ2つ減らして、果たして現実にどれだけ意思決定のスピードが速まったのだろう?という見直しの風潮が出てきていると思います。
また、上司と部下の間のコミュニケーションということを考えると、組織をフラット化して管理単位が大きくなる一方で、個人情報保護やCSRや内部統制や成果主義制度やらの流れで、現場のマネージャーの負荷は、以前に比べて圧倒的に増えていると思います。そういう流れのなかで、現場のマネ-ジャ-は疲弊してしまって、部下と念入りにコミュニケーションをとる余裕がなくなってしまっている、というのが実情なのではないかと思っています。
今後、グローバル競争をしていくなかで重要なのは、組織図に描かれたハコ(ポジション)や組織階層の数や与えられた役割ではなく、やはり結局最後は「人」なんじゃないか、というあたり前の問題認識が出てきているように思います。

(相原)
小さな組織の単位がないことによって、コミュニケーションが薄れてきたということでしょうか?

(山崎)
そういうこともあると思いますし、あとは新卒の採用数が減ってきたり、高齢化が進んでいるというようなことも関係あると思います。昔のように、職場に絶えず後輩が入ってくるという状況ではないので、後進を指導する機会そのものが減ってしまったということも影響していると思います。

(相原)
成果主義的人事は、コミュニケーションにどのような弊害をもたらしているのでしょうか?

(山崎)
コミュニケーションのあり方を、制度として「規定」してしまったことが問題だったと思っています。
例えば、当社では、もうずいぶんと前から目標管理制度を実施しています。目標管理制度では、ある決まった時期に、決まった様式とやり方で上司と部下は面談しなさい、と「規定」するわけです。当社の場合は、さらにご丁寧なことに、面談の実施状況を労使でチェックしたりまでしています。
でも、こういうコミュニケーションというようなものは、本来、制度やル-ルで規定したり、制約してはいけないのではないか、規定してしまうことはむしろ自律性(自立性)や変化への対応を阻害してしまうのではないか、と考えています。コミュニケーションを制度で規定することは、これからますます重要になる「変化への対応」という面では、むしろ阻害要因になるのではないでしょうか。
そう考えて、当社では今年度からマネージャーの報酬制度を全面改定したのですが、新制度では目標管理制度はやめてしまいました。

(相原)
要するに定期的にと定められていることがあるがゆえに、それ以外の、日々のコミュニケーションがおろそかになったということでしょうか?

(山崎)
それだけが原因とは思いませんが、先に述べた和魂じゃありませんが、米国のような多民族の国家で、何らかのルールで規定しないと集団を動かせないような社会と違い、日本の会社で、その中でも当社のようにコテコテの人間関係を重視する会社では、わざわざコミュニケーションを規定することはかえってマイナスなのでは? という仮説にたって、いま実験をしているというところです。だから、とりあえず目標管理をやめてみて、まだこの先どうなるかはわかりません。やっぱり、目標管理制度は必要だという話になるかもしれませんし・・・。

昔はこれ以上やったら..

山崎正晴氏

(相原)
失敗への寛容さが少なくなってきているというのは何故でしょう?やはり成果へのプレッシャーが高まった結果でしょうか?

(山崎)
環境が変化し、先行き不透明感が強まるなかで、成功モデルが描けなくなってきたということがあると思います。昔は、ある成功事例が確立されていて、またどうすれば成功できるかというプロセスもある程度明確になっていたので、経験の浅い若手が多少の失敗をしても、先輩や上司は、親が子どもの成長を見るような目で見守ることができたのだと思います。でも、環境変化が速く激しくなるにつれて、先輩や上司自体が成功モデルを曖昧にしか描けない。

それで寛容になれなくなってきているのだと思います。昔は、「ああ、このやり方でこれ以上やったら失敗するだろうな」というのが、先輩や上司の方では、経験値からわかっていたんだと思うんです。でもいまは、そういう経験値がそのまま当てはまらない状況が増えてきている、ということがあると思います。
失敗から学んでそれを蓄積する、という以外に解決策はないと思うのですが、一方で、成果への圧力が強すぎると、本人は失敗を恐れる、先輩や上司は失敗に寛容になれない、だから経験値が増えない、という悪循環に陥る危険があるように思います。

(相原)
フラット化の是正などすでに手を打たれているようですが、職場をより望ましい状況にするために他に重要なことはどんなことがあるのでしょう?

(山崎)
風土づくりが重要だと思います。例えば、直接対話を重視する風土、結果よりプロセスを重視する風土、短期よりも中長期を重視する風土・・・、などなどです。
そして、風土づくりのためには、まずは社内の風通しを良くして、組織の枠を超えたコミュニケーションを活発にすることが必須だと思っています。当社では、今年度から、「風通しをよくする運動」と銘うって、人財本部が主導する全社運動展開に取り組み始めたところです。
制度や仕組みなどのハード面の整備はもちろんですが、ソフト面の整備を同時に進めることが重要だと思っています。

(相原)
ソフト面ということでは、山崎さん自身、部下の方々との付き合い方で気をつけていることは何かありますか?

(山崎)
私自身が発展途上なので、メンバーとの付き合い方では、日々反省することが多いです。気をつけていることといえば、人の話は最後まで聞くようにしようとか、挨拶はきちんとしようとか、あたりまえのことばかりです。

(相原)
部下を叱りますか?

(山崎)
叱るということではないですが、マネージャーやリーダーの立場の人に対しては、敢えて厳しい要求をすることはよくあります。

(相原)
社内でも常に穏やかな感じなんですか?

(山崎)
普段も、いまこうして対談させていただいている、そのままの感じだと、自分では思っています。自分では穏やかな方だと思っているのですが、メンバー、特にチームリーダークラスはそう思っているかどうか、わからないです・・・。  穏やかな言い方で強い圧力をかける、そんな感じです。

スポーツと同じような感覚・・

仕事をしないでいる・・

(相原)
前回お聞きした中で特に印象的だったのは、「仕事に何を求めるか?」という質問をした時に、「仕事をしているということが当たり前で、あまりにも普通のことなので、改めて聞かれると難しい」というようなことをおっしゃったことです。たしかに、「あえて仕事に意味を見出さなくても」というトーンの方も結構いらっしゃいます。「生活のためです」とあっさり言われる方も多いです。

対談

「生活のためだけど、どうせ人生の多くの時間を使っているわけだから、どうせなら楽しくやりたい」と続くことが多いようです。山崎さんの場合、仕事がなくなると、収入以外の面で困ることは?

(山崎)
それはいっぱいあります。仕事を通じて糧になっていることはお金以外にもたくさんあります。それらがなくなってしまうと、人生が寂しくなってしまうと思います。例えば、もともとは赤の他人だった同士が、縁あってチームになり、同じ目標に向かっていっしょに何かをやっていく、なんていうことは、仕事を通じてでないとなかなか得られないです。チームスポーツと同じような感覚があります。それから、社会の発展に直接貢献できるのも仕事を通じてですし、仕事を通じてのことは、他にもすごくたくさんあると思います。

(相原)
チームでやっているプロセスが特に楽しいということですか?

(山崎)
はい。一人でやるよりは、チームでやる方が楽しいと思います。結果も大切ですが、楽しみはそこまでのプロセスにあると思います。 幸いなことに、まだ失業したという経験はないのですが、昔、交通事故で長く会社を休んだことがあります。仕事をしないで毎日病院や家にいたり、リハビリだけやっている、というのは結構苦痛でした。まだ定年まで間がありますし、仕事をしないでいるという状況は、ちょっと想像できないですね。

駅伝ランナーみたいな..

一番怖いのが内部から壊れること..

(相原)
結果としてどこかに到達するということではなく、その時々で目標としていることに向けて精一杯取り組みたいという感じでしょうか。

(山崎)
仕事についても、現在のポジションについても、駅伝ランナーのようなイメージを持っていて、いまの自分の担当区間で少しでも良い状況にして、次の人や次の世代にたすきを渡せるようにしたい、という気持ちがあります。 一人ひとりが、自分の区間で全力を尽くして、次の走者にたすきをつないでいけば、職場も会社も自然と継続発展していくのではないでしょうか。

(相原)
自己実現のために会社を利用するという感じではないわけですね?

(山崎)
そういう感じではないですね。それとはちょっと違う感じだと思います。会社は一つのコミュニティなのですから、自分もその一員であるところの会社を利用する、というような感じでは、コミュニティとしてうまく機能しないのではないかと思います。無私の精神のようなものを大切にしながら、互いを尊重し合えるような、そういう感じを目ざしたいですね。

(相原)
自分の適性を活かして、いくつかの会社で活躍していくという人もいるわけですが、会社と共に生きていくという職業人生と、どちらが幸せなのだろうかと思ったりもします。

(山崎)
人それぞれの価値観があるので、どちらが幸せかはわかりませんが、少なくとも当社のようにお客様との長期的な信頼関係を求められる会社では、定着率を高めて、理念や価値観を共有できるような集団を作っていかないとやっていけない、という思いはあります。

(相原)
そういう社員が多い会社は強いですよね。前回、「うちは新入社員も会社に入ってから変わりますので心配していない」というお話をされていましたが、そういう育成があって成り立っているのでしょうね。

(山崎)
当社の競合は欧米のコングロマリッドで、それはそれで脅威なのですが、それよりも、もっといちばん怖いのは、自分たちで内部から壊れてしまうことです。 先のサッカーW杯のフランス代表ではありませんが、試合で相手にやられたというよりは、自分たちで勝手に中から壊れてしまった。 会社も、これからの環境変化に応じて、制度や仕組みなどのウワモノは常に見直していかなければならないと思うのですが、そういう時代だからこそ、人事基盤をしっかりと固めることが改めて求められるのだと思います。(完)

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