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対談「光と影と表と裏」

多くの企業の方々と関わりを持つことができる点が、私共のような仕事をする者の一つの喜びです。そのような中でも、特に人間的魅力に溢れた方々のうち何名かにご協力をいただき、数度にわたりお話を聞かせていただく予定です。・・・(続き)
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Vol.1-3
山崎正晴さん(横河電機株式会社 執行役員 人財本部長)
×相原孝夫

キー語録(vol1-3)
まずはラインを目指します。だから結構動かします。
自分の手に負えない分野にどう対応するかが人材育成の中でも求められます。
現場とスタッフがあいまって人を見ていく、その一方を担っているというのが醍醐味じゃないかと思います。
人財本部というプレゼンスといいますが、誇りが持てるような取り組みをしていかなくてはいけないな、と意識はしています。
今はまず壊すことを求められているのかもしれませんね。
「均質化」と「和魂洋才」、グローバル化はこの2つのことを同時にやらなくてはいけない。
新しい事をやるよりは「復活」、「回帰」ということに取り組んでいきたいと思っています。

まずはラインを目指します..

自分の手に負えない分野にどう対応するかが人材育成の中でも求められていると思います..

(相原)
山崎さんは、人事以外にも様々な部署、役割を経験なされているわけですが、今回はまず、日本企業特有ともいえるローテーションということについてお聞きしたいと思います。ローテーションというのは、良い面と悪い面の両方があると思いますが、本当に多くの人にとって必要なものなのでしょうか?

ローテーションというのは会社の意思で動くわけですから、いろいろな仕事を経験できるということで会社全体を知るという意味がまずありそうです。

相原孝夫

個人としては面白みもある反面、厳しさもあると思います。また、ある分野の専門性を身につけるという点や、組織としての競争力を高めていくという観点からするとマイナスとも思えます。日本企業の場合は特に、結構な数を動かすわけですが、実際経験されて、自分の意思ではなく会社の意思で何度も動くということについて、どのように思われますか?

(山崎)
いきなりヘビ-な質問ですね。まず、当社を例にとりますと、例えば新卒を考えると、育成段階ではまずはラインマネジメントを指向させて積極的にローテーションをかける方が良いのではないかと考えています。ある時期でライン長としてリーダーシップを発揮するのか、それともエキスパートとしてリーダーシップをとるかに分かれていくのですけれども、ある時期に行くまでには基本的にラインメンジメントを指向するほうが良いだろう、と思っています。

その背景にあるのは、当社の場合は、自社の固有のリソ-スに依存する仕事のやり方が多いものですから、専門性を発揮するにしても、そういったものを幅広く身につけなくてはいけないということがまずあります。
また、いずれエキスパ-トとして活躍する場合でも、全社的な視野や全体最適の考え方を身につけ、ワンランク高いところから専門性を見る力は不可欠ではないかと思います。経営全般を見渡してモノを考える習慣を身につけたエキスパ-トであってこそ、ラインのマネージャーと一致団結して目的を全うできるのだと思います。

山崎正晴氏

(相原)
ラインを動かす上では全社的視野が必要で、いくつかの部署を経験することで全社的視野が築かれるということですね。

(山崎)
そう思います。今はソリュ-ションビジネスと言って、昔のようにハード提供ということよりは、お客さんの求めるソリュ-ションを提案し、お客さんと一体になって作っていくことが必要です。会社で設定した専門性というよりは、お客さんの現場に入り込んでニーズを把握でき、それに対してどうすればいいかという、曖昧な状況からいろいろ作り上げていくということが求められています。そういった力をつけるためには、ローテーションというのは一つの有効な手段ではないかと考えています。

また、キャリアの形成上も、ラインマネジメントの階層が上がっていくほど、自分ひとりでは手に負えない分野も圧倒的に大きくなってきますので、そういう状況に対応する力をつける上でもローテーションは有効なのではないかと思います。

課長昇格時には、自分でやる立場から組織でやる立場への意識転換を強調しますが、マネジメント範囲はまだ自分の専門性でカバ-できる範囲が対象です。
それが、さらに上位の部長クラスになると、複数の組織を統括するようになりますので、ここでは自分の手に負えない分野というのが多くなってきます。そこにどう対応できるかというのが人材育成の中でも求められていることかなと思っています。そういう意味で、ローテーションは、自分の専門性を深めるという意味では効率が悪いところがあるのかもしれませんが、当社のような個人というよりは集団で仕事をするような会社で、より大きな組織を動かす力をつける上では大きな意味があると思っています。

(相原)
ローテーションして畑が違うところに行き、分からない中でやっていくという経験が上の立場になって、手に負えない部分が出てきた時にどうするか、という能力をつける上で役立っているということですね。

(山崎)
はい。それから、ローテーションのもう一つの意義は選別です。例えば、マネージャーになるような人は、その分野では一流なのですが、別の分野やさらに上位階層でのポテンシャルがどうかということは、動かしてみないと会社としても見極めがつけられないところがあります。人事的に言うと、異動は選別のための手段の一つともいえると思います。

(相原)
外資系企業が動かさずにアセスメントを徹底して見極めるのとは違って、実際に動かして適性を見るというのは日本企業らしいといえるかもしれません。実際にやってみて自分自身についてこれまで見えてなかった面が見えるということはやはり結構あるものでしょうか?

(山崎)
それはあると思います。私自身もこれまでの異動経験の中で、都度新しい発見がありました。特に、異文化経験などは、実際に海外に住んで生活しないと実体験が出来なかったりするので、海外駐在を経験しないとできない発見です。異動して新しい環境を経験することでの気づきというのは必ずあると思います。

現場とスタッフがあいまって人を見ていく、その一方を担っているというのが醍醐味じゃないかと思います..

(相原)
では次に、人事の仕事に焦点をあててお聞きしたいと思います。人事を長くされていて、人事の仕事の醍醐味はどんなところにあると思いますが?

(山崎)
人事をそれほど長くやっているわけではありませんし、意外とそういうことは普段は考えていないのですが、まずはやはりよく言われるように、人にかかわることを扱うということは醍醐味なんじゃないかなと個人的には思っています。

(相原)
人事の仕事以外では関われないような点は、どんな点でしょうか?

(山崎)
事業のラインとは、人に関わる際の切り口とか期間とか着眼点が若干違うところがあると思います。事業ですと当然毎期の目標を抱えてやっていくので、その時々の最適化っていうのがテーマになると思うのですが、将来価値、ポテンシャルを見て拾い上げていく、そういう視点でコーポレートという、事業とはまた違う我々のようなスタッフが人を見ていくと複眼で見られると思います。事業の視点だけでもダメでしょうし、我々のようなスタッフの視点だけでもダメでしょう。それが現場とスタッフがあいまって人を見ていく、その一方を担っているというのが醍醐味じゃないかなと思います。

(相原)
グループ2万人ともなると、あまり一人一人について関わるという感じではないですよね。そうした中でも人に関わっているということで、人事の仕事としての喜びは感じられますか?

(山崎)
割と当社では、組織風土や社員の人心のような、集団としての雰囲気みたいなものに独自のこだわりがあるんです。それを醸し出してくるものの最小単位が人ですので、個別に2万人全員は見られないとしても、2万人の集合体としてのそういう組織文化的なところに関わっているというのは、喜びと言えるかわかりませんが、人事の仕事のいい面だなと思いますね。

(相原)
それ以外ではいかがでしょう?

(山崎)
当社の人事では、歴代の上司や人事に携わってきた人から、5つの「人事運営の基本的な考え方」というものが受け継がれてきています。具体的に言いますと、「1.性善説にたつ、2.真の平等を目ざす 3.美点凝視、4.小事にこだわらず大事を見据える、5.健全な労使関係は経営の要」というものです。 基本的な考え方を、具体的な制度や仕組みとして体現していく必要がありますが、例えば最初の性善説に立つということで言うと、当社はタイムカ-ドを廃止したのは日本のなかでも最初の方だったのではないかと思います。 このように、理念を具体的な制度に落とし込んで、理念とそれを体現する仕組みがうまくマッチングがとれたときは、担当者としては面白みがあるんじゃないかと思います。 

人財本部というプレゼンス

山崎正晴氏

(相原)
人事の方々自身のモチベーションはどうなのでしょうか。モチベーション高く働くためには何が必要でしょうか?

(山崎)
そういう話は、職場のなかでもしています。一つには、自分の仕事に誇りを持てるということがあると思います。当社は、これまで世の中に先駆けて新たな人事施策に取り組んできたということを誇りに思う部分があります。そうした取組みが最近少し薄れているかなということはありますが、新たな取組みが外部に紹介されたり、自分達でも新しいことに挑戦しているという実感があったり、メンバ-もうちの人事はユニークな立場なんだという認識があると仕事に誇りがもてますので、そういうところはモチベーションにつながるんじゃないかと思います。

今、私の立場でやるべき重要な事の一つが、人財本部という組織のプレゼンスを高めて、メンバ-が誇りが持てるような取り組みをしていかなくてはいけないな、と意識はしています。

(相原)
従業員の目から見ると、労使関係や制度改訂、教育研修など以外は、人事は何をやっているのかが具体的に分からないということもあるのでしょうね。

(山崎)
大きな制度改定がない時の方がむしろ重要だと思ってまして、現場とのコミュニケーションとか現場の中期的な部分を拾い上げたり、人事の専門的な立場から対応したり、そうした現場とのやり取りやそれを通じて現場からの信頼感を得られれば、人事は信頼されているなということが肌感覚で分かります。そういうこともモチベーションにつながると思います。

(相原)
現場との信頼関係を築くための手立てとしてはどんなことがありますか?

(山崎)
これはもう汗水たらして現場を回って、現場の悩みを聞いて、組織の枠を超えたコミュニティの場を提供したり、日常活動の中で積み上げていくしかないと思います。あとは社内にはいろんなインフォーマルのつながりがあって、それが組織の枠を超えた情報共有になっていたりするんですが、そういう網の目ネットワークが最近薄れてきたように感じているので、そういうものも復活させたいと思っています。

今はまず壊すことを求められているのかも知れませんね..

(相原)
人事はどうあるべきか、という場合、経営の視点と従業員の視点の両方があると思います。それぞれ、どういうことが期待されていると思われますか?

相原孝夫

(山崎)
経営からの期待は、経営者によって若干違うと思います。ビジネスが海外の比率が高くなってきたこともありますが、求められているものもこれまでとは変わってきたのかなという実感はあります。 これまでは健全な労使関係を保ちながら人心をきっちりと押えて環境変化に対応していくような仕組みを作っていくのを求められていましたが、 今はどちらかというと壊すことを求められているのかもしれませんね。文化というものはショック療法がないと変えられない部分もありますから。

(相原)
人心を押えながらという点は、人事としては当然ある期待という感じですが意外とないがしろにされている点かもしれませんね。では従業員からの期待についてはいかがでしょう?

(山崎)
当社では伝統的に、割と人事への信頼感は持ってくれているのかなと思います。先達が先ほどの5つの基本的な考え方でそういう立場を築いてきてくれたというのもあります。全社を横断するような場作りですとか、コミュニケーションの活性化ですとか、そういう人心に直接関与することは、人事にリーダーシップをとってほしいという期待は感じますね。

(相原)
信頼感が厚いというのは何よりも望ましいことですが、これはプロセスを大切にしてきたからなのでしょうね。

(山崎)
当社では、歴代の社長が家族主義という理念を掲げてきました。社員は大切な財産ということを体現するために、歴代の経営者や人事担当者が真摯に取り組んで信頼感を築いてきたのだと思います。大切な財産ということを、実際の行動や、社内の仕組みに落とし込むというのは意外に難しいと思うんですが、そういう取り組みは、どんなに環境が変わっても大切に受け継いでいかなくてはと思っています。

「均質化」と「和魂洋才」

新しい事をやるよりは「復活」「回帰」

(相原)
今後は人事をどのようにしていきたいと思われてますか?

山崎正晴氏

(山崎)
人事で一つ間違いないキーワードは「グローバル化への対応」。これは割とうちの社内では古くから言われていて、いろんなことをやってきているんですけど、売上も主力の制御ですと7割、8割が海外という時代になってきましたので、言葉だけでなく、本当にグローバル化への対応をどうするかを構築していかなくてはいけないという状況です。

グロ-バル化にはどういう日本語を当てはめるといいか、というディスカッションをしたことがあります。単純に約すと「地球化」、「地球規模化」などになりますが、それでは肌感覚ではフィットしないんです。「均質化」、「和魂洋才」とか、そんな日本語の方がちょっと肌感覚に近いかなという話になりました。そういう話を通じて社内でグローバル化の取組みの共通イメージを持とうとしています。

グローバル化は、ある意味、2つのことを同時にやらなくてはいけないと思います。「均質化」という言葉が出たんですけど、ある面は均質にしていかなくてはいけない。ある面は「和魂」じゃないですけど日本とか当社のソウルといったものが何かを固めていかなくてはいけない。均質化する動きと自分達の内面に回帰する動きという2つを同時にやらなくてはいけない。そういうところがグローバル化の難しさだと思います。

とかく、どちらかに偏りがちで、これまでの取り組みはグロ-バル化という言葉ばかりが先行して、いろんなことが仕組みとしてついていけてなかったりするので、均質化と内面回帰と2つを同時にやる作業なんだということを共通認識として持ち、それで覚悟を決めれば、じゃあそれぞれを仕組み化する上で具体的に何をするんだという話になってくると思うんです。単に英語を公用語にするとかということではなく、会社の仕組みを変えてグローバル対応できるような取り組みをしていきたいと思っています。

あとは、本来うちでは大事にしていかなければならないことで、この10年くらいの環境変化で薄れてきてしまっていることがあるように思っていますので、新しい事だけでなく、「復活」、「回帰」ということにも取り組んでいきたいと思っています。

(相原)
例えばどんなことでしょう?

(山崎)
例えば、労使関係や、社内のインフォ-マルなネットワ-クやコミュニティといった場などです。組織の単位なども見直そうと思っています。組織のフラット化やマネージャー比率なども、事業の特性に応じて見直しをしようとしています。それもやはり、戻すということですが。

(つづく)

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