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【コラム】第87回 「ピーターの法則」

ハイパフォーマーであっても、立場が替わると途端にハイパフォーマーではなくなるということがある。今回はこの点について述べたいと思う。この現象は営業職などに多く見られる。営業パーソンとしての圧倒的な実績を買われて抜てきされたものの、リーダーになった途端に精彩を欠くということがある。「営業パーソンとしてあれほどの輝きを放っていたのになぜだろう?」と周囲は訝しく思うかもしれないが、これは役割の変化によるものだ。

いちプレーヤーとしては優秀であっても、部下の面倒を見たり、成果があがるように指導したりすることがからきしダメな人というのはいる。能力がないというよりもむしろ、向いていない、適性がないと言ったほうがいいだろう。個人プレーが得意な人は、人の面倒を見ることは苦手なことも多い。自分で成果をあげるのと、部下に成果をあげさせることとでは、適性はまったく異なるのだ。

逆に言えば、いちプレーヤーとしてそれほどの実績があがらなかった人でも、リーダーという立場になったとたんに輝きを放つ人もいる。このことは、スポーツの世界を見ればわかりやすいだろう。優れた監督の中には、優秀なプレーヤーだった人ばかりではない。優秀なプレーヤーの中でも、優秀な監督になれる人は多くはないのだ。いちプレーヤーとしての適性も、指導者としての適性も、両方とも持ち合わせているという人のほうが稀であろう。

会社組織など階層社会に関する社会学の法則に「ピーターの法則」というものがある。「人は無能になるまで出世する」というものだ。詳しくは以下のようになる。
1. 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。すると有能な平構成員も無能な中間管理職になる。
2. 時が経つにつれて人間はみな出世していく。無能な平構成員はそのまま平構成員の地位に落ち着き、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は無能な人間で埋め尽くされる。
3. その組織の仕事は、まだ出世の余地のある、無能レベルに達していない人間によって遂行される。
(『ピーターの法則 ‐〈創造的〉無能のすすめ-』 ローレンス・J・ピーター/レイモンド・ハル)
つまり、人は、有能な間は昇進を続け、昇進して仕事が変化した結果、その立場に適合せず、無能になると昇進が止まるということだ。この説からすれば、「組織の各階層はほとんど無能な人々の集団となり、まだ無能レベルにまで達していない人たちによって組織は維持されている」ということになる。会社で上の方にいる人たちを見て、「どうしてあのような人たちがその立場にあるのだろう」と思われることもあるかもしれない。その場合はこの法則による結果なのかもしれない。

この法則は、能力主義ということを前提としているが、能力主義というよりはむしろ実績主義といえる。次の立場への能力を判断して昇進させるのであれば、このような不適応は起こさないはずである。前職での実績をもとに、次の立場への適合性を見ずに昇進させるところに問題がある。いわゆる「論功行賞」による出世が問題なのだ。西郷南洲遺訓に「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」という有名な言葉がある。もともとは、中国最古の歴史書『書経』の中にある言葉だ。この言葉が端的に表わしているように、功績のあった人には報酬で報いるべきであって、立場はその立場に相応しい人を就けるべきだが、功績があった人に立場で報いてしまうことによって「ピーターの法則」にあるような組織的問題が発生するのである。



プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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