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  4. 【コラム】第83回 仕事を抱え込みがちなリーダーの悪循環
コラム

仕事を抱え込みがちなリーダーの悪循環

前々回、職場でのあいさつが好循環の起点になっている可能性について、そして前回は人材の観察軸としてのタイプ分けについて述べた。今回はそれらの続編として、職場で多く見られる悪循環の起点となっている事象について、タイプ分けの視点も入れて考えてみたい。

「仕事を抱え込みがちなリーダー」というのは、どこの会社でも比較的多く見られる。これは悪循環を招く典型的な事象だが、なかなか減少の方向へ向かう気配はない。多くの場合、仕事を抱え込んでしまう背景には、「自分でやった方が早い」という思いが共通にあるものの、とはいえ仕事を抱え込みがちなリーダーにもやはりいくつかのパターンがあるようだ。

一つには、「遠慮がちな新人リーダー」というパターンだ。私自身も経験があるが、年上のメンバーが多いような状況では特に、仕事を誰かに振ることを躊躇し、つい自分でやってしまいがちということも多い。振り方が分からないということもあるだろう。しかし、これを繰り返していると、いつまで経っても仕事を振るタイミングがつかめず、気が付いてみるとリーダーというよりも、いちメンバーと変わりぼない存在になってしまっているということにもなりかねない。

新人リーダーに多いもう一つのパターンとしては、「リーダーとしてのあり方が分からない」というものだ。優秀な上司の下にいた人などはその人をロールモデルとして学んでいるものだが、不幸にも、そのような上司に当たったことのない人の場合、自身がその立場となった時に、どのように振舞ったらよいのか分からないということがある。その場合も自ずと仕事を抱え込みがちとなる。リーダーとして価値を出すことができないため、プレーヤーとして価値を出すことで安心しているともいえる。

また、少し違ったタイプとして、「他人を信用しない利己的なリーダー」というケースもある。部下の育成になど関心がなく、チーム成果を挙げて、自らのさらなる昇進を目指そうとするような場合だ。部下に仕事を教えながら時間を掛けて行うよりも、重要な仕事は自分でスピーディーに高品質で仕上げた方がよいという判断となる。過去に、リーダーとしての役割を果たそうと試みたがうまくいかず、部下との関係がこじれてしまった等の苦い経験を持つ人なども、その反動としてこうしたスタイルに閉じこもってしまっていることも多いようだ。

このように、いくつかのタイプはあるものの、リーダーが仕事を抱え込めば、必ずそこから悪循環が始まる。リーダー自身に余裕がなくなり、本来のリーダーとしての役割-意思決定や計画策定、業務の優先順位付け、メンバーの指導、育成などができなくなる。結果としてチーム力は低下することになる。下が育たないので、いつまでも仕事を任せることができず、やがて物事が後手後手に回り始め、仕事の品質は低下し、ミスも多発し、その対応に追われてさらに余裕がなくなるという悪循環となる。

組織を率いる立場として、どのような役割に徹することが組織のパフォーマンス向上につながるのか。薄々はわかってはいてもできない、そこをあえて直視しないということも多いに違いない。星野リゾートの星野佳路氏は、「マネジャーは現場を見て回ったりせずに、意思決定者に徹するべき」と言う。「観光業界ではよく総支配人やマネジャーに現場を日々よく見ろというのですが、必ずしも見て回る必要はないのです。現場はやはり最前線の現場社員が分かっているので、その意見を吸い上げ、正しく反映するように意思決定するのがマネジャーや総支配人の仕事です。歩き回ってもたまたまの現象しか発見できません。管理者が均等に現場を把握するのはとうてい、無理な話です。マネジャーは意志決定者に徹するべきです。」-管理職は現場主義では務まらない(星野佳路氏の経営者ブログ)日本経済新聞 電子版2014年5月

リーダーが本来なすべき役割に徹して、メンバーに仕事を適切に割り振ることは確かに容易いことではない。メンバーそれぞれの習熟度に応じて仕事を割り当て、状況を観察し、アウトプットをレビューし、指導、育成しながらチームのパフォーマンスを挙げていく、こういうことは当初は大きな手間に違いない。しかし、それがマネジメントそのものであり、組織のリーダーを任された以上、そうした役割が期待されていることは間違いない。逆に、そうした役割を首尾よくこなしているリーダーを見てみると、「周囲を支援することに喜びを感じる」ということや、「部下の成長を楽しみにしている」というような特質があることがわかる。これらの特質は、「仕事を抱え込む」という行動とは逆に、好循環の起点となり得るものである。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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