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  4. 【コラム】第82回 「他者への関心」と「人材タイプ分け」
コラム

「他者への関心」と「人材タイプ分け」

人材マネジメントの根幹は「他者への関心」である。他者への関心がない中では、評価も育成も成り立たない。しかし、この点が希薄化してきている。それが職場の崩壊を招く。極めて本質的な問題だ。他者への関心が薄れてきている理由はいろいろと考えられるが、人材が多様化していることも一因であろう。同質化した中で他者を観察することは容易い。基本路線が同じであれば、各人の特徴的な点は識別しやすい。基本路線すら異なる異質な人はさらに分かりやすい。しかし、非正規社員が増加し、置かれた環境も価値観もまったく異なる人たちの中では、一人ひとりを理解することの困難さは増し、理解しようという意欲は薄れがちである。

従って、他者に関心を持つためには、他者を理解するうえでの何かしらの手助けが必要となる。一つには、観察するうえでの基準、つまり観察軸を持つことが有効であると筆者は考えている。観察軸がなく漫然と見ているだけでは何も見えてこないからだ。私共は、多面行動観察や適性自己診断等で個人のデータを取得した場合には、それらを統計分析し、人材のタイプ分けを行うことが多い。一人ひとりを見るうえでは、個別の情報を見ればよいわけだが、全体を一覧するうえでは、タテ軸とヨコ軸を設定し、プロットして分布を見ることなどが有効だ。これは人材をタイプ分けしていることになる。そして、分類された人材タイプは、他者を観察するうえでの観察軸ともなる。

人材タイプ分けには様々な分類方法がある。私共が多く用いるのは、タテ軸とヨコ軸を用いてマトリクスを作り、4つに分類するものである。この分類法で有名なものとしては、Will(やる気)とSkillを2軸としたWill-Skillマトリクスがある。やる気もあってスキルもある人には任せ(Delegate)、やる気はあるがスキルがない人には指導し(Guide)、スキルはあるがやる気がない人にはやる気を出させ(Excite)、両方ない人には命令する(Direct)など、指導方法を導き出すために用いられる。

先月、読売新聞の夕刊に3回にわたって、新入社員を受け入れる側の準備について書いた。その記事の中でも、同様のタイプ分類を用いた。今年の新入社員は「自動ブレーキ型」などと、上の世代の人たちには新入社員は皆同じに見えてしまい、誰に対しても同様な接し方をしてしまいがちだからだ。今回用いたのは、「自信・やる気」と「やりたいことへの執着」という2軸である。これにより、「やりたいことがやりたい」型、「なんでも来い」型、「懇切丁寧に教えてほしい」型、「プライベート重視」型の4つに分類し、それぞれに対して接するうえでのポイントを解説した。

また、弊社が提供している『中高年社員キャリア再生診断』では、診断結果として、「①生涯スーパーリーダー型」、「②技能伝承マイスター型」、「③一意専念クラフト型」、「④職場活性化プロモート型」、「⑤路線変更リスタート型」の5つに分類される。新入社員同様、中高年社員も一緒くたに捉えられがちであり、その場合思考が先に進まず、その年代に過剰感のある企業では、全員を対象に同じ施策が打たれることも多い。その結果としては、辞められたくない人から順に辞めていくようなことにもなりかねない。タイプ分けすることによって、当人自身も今後のキャリアの方向性を明確にするきっかけが得られ、準備ができるとともに、会社としても、それぞれに対してどのような施策を打っていけばよいのかについて、頭が回るようになる。

さて、ここでは最も単純な分類の例として、パフォーマンスによる分類について考えてみたい。企業の中では業績によって管理され、処遇されているので、最も分かりやすい分類法といえる。2:6:2の観点からすれば、①ハイパフォーマー、②アベレージパフォーマー、③ローパフォーマーにまずは大きく3分類できる。このうち、ローパフォーマーについては「ぶら下がり」などと言われるくらいで、普段あまり考察の対象とはならないので、ここでは敢えて、ローパフォーマーについて考えを進めてみたい。ローパフォーマーといっても決して1種類ではない。たとえば以下のように、3つに分けることができる。

1つめのタイプは、「自分ではローパフォーマーとは思っていない人」だ。企業の側からすれば、「パフォーマンスが低いのに、ローパフォーマーと思っていないなんてありえない」と思うかもしれない。しかし、このタイプは意外と多い。どう思っているかといえば、「自分は業績には表われない貴重な貢献をしている」と思っているのだ。だから、彼らからしてみれば、「評価がおかしい」となるのだ。本来評価されるべき観点で正しく評価されていれば、自分の評価は高くなるはずだと思っている。チームの業績が上がっているのも自分のおかげ、ハイパフォーマーが高業績を挙げていられるのも自分のサポートがあってのことという論理だ。命名するならば、「認知不全型ローパフォーマー」といえるであろう。

2つめのタイプは、「居心地が悪い人」だ。このタイプは正常である。会社としても、そうであってくれなければいけない。会社側の社員に対する希望はシンプルであり、生産性高く働いて業績を挙げてもらいたい、業績が高い人には辞めてもらいたくない、業績が低い人には危機感をもって頑張ってもらいたい、ダメなら辞めてもらいたい、ということだ。従って、ローパフォーマンスである以上、何とかしてもらわなければならず、居心地良くしてもらっては困るのだ。言うなれば、なんとか居心地を悪くさせようとあの手この手を考えているともいえる。このタイプは、正常な危機感を持った「真っ当なローパフォーマー」である。

3つめのタイプは、「もはや居心地が良くなってしまっている人」だ。企業側にとって、これほど困った存在はいない。日本企業など優しいので、こういう人たちを多く見かける。喩えは良くないが、ホームレスも一度やったらやめられなくなるとよく言われるが、それに似ていなくもない。会社からも周囲からも何ら期待されておらず、もはやあきらめられていて、ろくに管理もされないので気楽であり自由であり、ほどほどに楽しく過ごしている。こういう人たちですら、自分は職場を和やかにしている、会社組織にはこういう存在も必要なのだ、などと思っていることもある。「開き直り型ローパフォーマー」だ。

このような視点を持って観察すると、ローパフォーマーを見る目もだいぶ違ってくるであろう。より深い洞察が可能となり、それらの人たちへの関心も高まるのではないだろうか。同様に、ハイパフォーマーについてもアベレージパフォーマーについてもさらなる分類をすることができ、パフォーマンスということで3×3くらいに分類することができる。それぞれに背景などを考えてみると、さらに理解が深まるに違いない。以上のように、人材のタイプ分けという視点は、他者を観察するうえでの軸となり、他者理解を助ける。他者理解が容易になれば、他者への関心も高まりやすくなる。従って、他者への関心を維持し、職場の崩壊を防ぐためには、人材の可視化などもその一つだが、人材のタイプ分けを用いて理解を助けるということも有効性が高いと考えられる。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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