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  4. 【コラム】第79回 上司の困った言動の裏にあるもの
コラム

上司の困った言動の裏にあるもの

新年を迎え、気持ち新たに何かしら仕事上の決意をした人も多いことだろう。若手社員の場合など、どんなことを目指すにしても、やはりそれを大きく左右するのは上司の存在だ。上司との良好な関係は言うまでもなく日々の活動の生産性に大きく影響する。しかし、一般に部下から見て困った態度をとる上司は多いものである。今回はその背景について考えてみたいと思う。

上司が困った態度をとるような場合、なぜそのような態度をとるのか?と考えてみたことはあるだろうか。“ダメ上司”や“無能な上司”というレッテルを貼って愚痴をこぼすことはあっても、なぜそのような態度をとるのだろうかと改めて考えてみることは意外と少ないのではないだろうか。しかし、必ず理由はある。子を持つ親の気持ちは親になってみないと分からないのと同じで、管理職になってみないと管理職の気持ちは分からないという面は大きいかもしれない。

困った態度をとる上司として典型的ないくつかのパターンを考えてみたい。部下に対して「えこ贔屓」をする上司も多くいる。人により態度を変えるという公平性を欠いた態度をとるようなケースだ。ある部下に対してはたいへん冷たく接したりするわけだが、このような場合、何が原因なのだろうか。これまでミドルマネジャーに対して様々ヒアリングしてきた経験からすると、上司が部下に冷たく接する場合の多くは、自分がその部下から尊重されていないと思っている場合である。部下は上司に認められたいという意識は当然強いが、上司も部下から認められたいという気持ちは同様に強いものだ。上司としての面子があるので、なおさらその思いは強いといっていいかもしれない。部下から認められ、尊重され、できれば尊敬されたいと切実に思っているのだ。自信のない上司であればあるほど、そういう傾向はある。

背景が近い例として、「自慢話」をしたがる上司というのもいる。仕事のレビューをしていたはずが、いつの間にか自慢話になっているという上司がいる。とかく自慢話が多い上司は部下を辟易とさせるが、これも自尊心が満たされていないということが背景としてある。周囲に認められていると思えない場合、自尊心を満たすことができないため、「自分はこんなに凄いんだぞ」と自分で言いたくなるわけだ。部下から尊敬され、上からも一目置かれているような人は自慢話などしないものだ。

また、コミュニケーションの密度は尊重の証である。なぜ、多くの上司が部下に「“ホウ・レン・ソウ”(報告・連絡・相談)」を求めたがるのだろうか。十分な情報を得て、トラブルの芽を早めに摘んでおきたいなどの理由もあるだろう。しかしそれ以上に、部下から頻繁に報告や相談を受けたいという思いがまずある場合が多い。いつも部下から頼りにされていたいのだ。部下としてコミュニケーションを図っているつもりでも、メールだけのコミュニケーションの場合、上司としては尊重されているとは思えないものである。それゆえ、直接の“ホウ・レン・ソウ”を求めたがるのだ。

「やる気が足りない、やる気を出せ!」などの「精神論的なアドバイス」を多くしがちな上司の場合はどうだろうか。「やる気」や「モチベーション」など、この類の言葉は「思考停止のキーワード」であると私は思っている。何も考えずとも発することのできる言葉だからだ。上司としてもこれまで経験したことのない環境に直面し、具体的にどうしたらよいか分からないような場合、このようなアドバイスへ流れる傾向がある。要するに、反論の余地のない無難なアドバイスなのだ。アドバイスといっても、部下としては何をどうしたらよいかなど、まったく分からない叱咤でしかない。

一方では、「目に付いた細かな点の指摘」ばかりする上司なども同じような心性が背景にあると考えられる。目に付いた細かな点を指摘するのが一番容易いからだ。どうすればよいかのアドバイスは難易度が高いが、目に付いた点に“ダメ出し”するのは容易いことである。上司の立場としては何かしらアドバイスをした気にもなるのであろう。それゆえ、細かな点ばかり指摘する上司は多く出てくるわけだ。もともと、細かな点には目をつむり、長期的な視点で部下の強みを伸ばしていける上司など、どこの会社でも1割もいないのではないだろうか。それゆえ、部下の側でも過剰な期待はせずに、上司のそれぞれの行動の裏には、上司としての思いや怖れ、何かしらのコンプレックスがあるということを理解しておいたほうがよいだろう。言動そのものよりも、その裏にある上司の思いを受け止めるようにすることで、より生産的な対処が可能となると思われる。


プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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