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  4. 【コラム】第78回 課長はたいへん
コラム

課長はたいへん

ここ数回にわたり若手社員シリーズを続けているが、今回は「上司」の存在について述べたいと思う。「上司は選べない」とよく言われる。一方、上司にとっても「部下は選べない」ことが多いものだ。組織の中では、配属や配置替えによって本人の意思とは関係なく、組織の論理で上司と部下が出会うことになる。どちらにとってもお互い様なのだ。しかし、会社の中では前者ばかりが、一種の諦め、あるいは他者からの慰めの言葉として多く語られる。これはもちろん、立場の違いによるもの、部下は上下関係の中で弱い立場にあるゆえに言われることである。

会社生活が楽しいかどうかに関しては、上司の存在が極めて大きいことは間違いない。上司は喜びももたらすが、ストレスももたらす。上司との関係が良好であれば、月曜の朝に出社するのもそう苦痛なことではないだろう。片や、上司とそりが合わず関係が険悪な場合には、相当のストレスを抱え込むことになるだろう。

では、上司とはどのような存在なのか。20代社員の直属の上司は、多くの場合、課長になる。この課長という立場を理解することが、20代、30代の会社生活を充実させるうえでとりわけ重要と考える。課長という立場は、会社の中でも最も負荷の掛かる立場であるといってもよい。課長は管理職の中では最下層に位置するが、直接的に管理する部下の人数ということでは最多であることが多い。部長は課長を、部門長は部長を直接的には管理するだけなので、人数はそう多くはならない。課長はその課に所属する一般社員全員を管理する。営業や生産などは特に、数十名にのぼることも普通にある。このように、ピープルマネジメントということに関しては、管理職になって最初の課長という立場が最も難しい状況に直面することになるのだ。

かつて高度成長期からバブル期の頃までは、環境も安定しており、また部下といえば正社員の男性社員が多くを占めていたので、管理もさほど複雑なものではなかった。自分が歩んできた道と同じ方向を指し示してさえいればよかった。しかし、バブル崩壊以降はそうした状況は一変する。経営環境の変化も激しく、特に課長クラスにあたるミドル社員にとっては経験のない状況に直面することも多く、自信を持って方向性を示すことが難しくなった。加えて、雇用形態が多様化し、非正規社員が増え、女性や年上の部下なども増加する中で、これまでとは比較にならないほど、マネジメントの複雑さは増している。

また、会社組織の中では、組織マネジメント上のあらゆる期待と不満が課長へと集中する傾向にある。その証拠に、コンプライアンスにしてもメンタルヘルスにしても、何か組織全体として取り組むべき事項が発生した場合、その実行の任を負うのは常に課長になる。バリューの浸透や組織風土改革など、あらゆる社内改革も課長が推進役になる。何らかの方針を組織全体に周知徹底しようとした場合、圧倒的に人数が多いのは一般社員層なので、それらに対してどう徹底するかとなると、直接管理している課長たちに任せるのがよいとなるのが自然な成り行きなのであろう。当然、それらの取り組みがうまくいかなかった場合の責任追及も課長に向かうことになる。つまり、組織上のすべての負荷と歪みとが集中する立場なのだ。

このような状況の中、課長は現場責任者として、担当している組織の業績を挙げなければならない。管理職になった直後にこれだけの困難に一度に直面するわけだから、最初からうまくできなくて当たり前だ。部下の一人ひとりに十分な配慮が行き渡らなくても仕方ない。何年か経験しても、首尾よくこなせているのは全体の1割や2割といったところではないだろうか。大多数の課長はなんとかかんとか凌いでいるという状況なのだ。従って20代の若手社員には、こうした状況を理解したうえで、待ちの姿勢ではなく自ら能動的に上司とコミュニケーションを図っていく姿勢が望まれる。上司の置かれた立場や状況を理解することが、フォロワーシップの第一歩ではないだろうか。


プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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