1. トップページ
  2. インフォメーション
  3. コラム
  4. 【コラム】第74回 リアルなコミュニケーションと若手社員
コラム

リアルなコミュニケーションと若手社員

ここのところ、20代向けの本を執筆中ということもあり、企業へ伺った際に若手社員について話を聞くことが多いが、最も多く話される点はやはりコミュニケーションについてだ。「リアルなコミュニケーション」という言葉が出てくることも多い。要するに、「リアルなコミュニケーション」が少ないことを問題視しているわけであり、一方で「バーチャルなコミュニケーション」が主流となってきていることに危機感を覚えているということだ。

確かに、メールやSNSによるコミュニケーションは便利だ。一歩も動かずに、声すら発せずに多くの人に発信できる。こんな効率的なコミュニケーション手段はない。しかし、ビジネス上すべての意思疎通をそれで済ませることはできない。そのあたりの仕切りの感覚が、若い世代と管理職世代とで違っている点に問題があるようだ。

部下が顧客とやりとりしているメールを見ていてヒヤッとすることが頻繁にあると、ある企業のセールスマネジャーの方が話してくれた。緊急性の高い場合や、お願い事をする場合、問題が発生した際のお詫びなどもメールで済ませようとするというのだ。それはさすがにヒヤッとするであろう。確かに、それらの場合にはより直接的には言いづらい内容かもしれない。しかし、決してメールでの連絡で済ませられない内容だ。それが分かっていてメールで伝えてしまっているケースもあれば、それがいけないという認識すらないケースとがあるようで、どちらも問題だが後者の方がより根が深い。

かつて勤めていた職場でもメールの多用という問題はやはりあった。100名くらいがデスクを並べる、さほど大きくはないフロアであるにも関わらず、直接の対話ではなくメールでの報告、連絡が年々多くなっていた。その中には、こちらからの説明が長くなることが明らかな相談事などが含まれていることもあった。そのような場合は、電話で呼ぶか、こちらからそのメンバーのデスクに出向いて対話をすることになる。また、CCで来ているメンバーどうしのメールのやりとりを見ると、直接対話すれば即座に結論が出るようなことを延々とメールでやりとりをしているようなこともあった。そうこうしているうちに、どうも雲行きが怪しくなり、関係がおかしくなるようなこともあった。同様の事態に業を煮やし、「同フロア内メール禁止」というルールを作ったという会社も何社か聞いたことがある。

若手社員の中では、メールやSNSでないと自分の意見を言えない若者が増えているとも聞く。その度が過ぎると“ネット人格”なんていうものが形成されてしまうこともあるようだ。学生の頃からバーチャルなコミュニケーションに慣れきってしまっているせいであろうか。しかも、社会人になって以降は、世代が離れている人や苦手なタイプの人ともコミュニケーションを図らなければならず、ますますメールに頼りがちになる。コミュニケーション上の“引きこもり”ともいえる状況だ。

和を重んじる日本人ではあるが、「フェイス・ツー・フェイス」でのコミュニケーションはどうも得意ではないようだ。英国情報通信庁が発表した調査(International Communications Market Report 2012)では、次のような結果が示されている。主要8ヵ国(英、仏、独、伊、米、日、スペイン、豪)の各国回答者(それぞれ約1000人)に対し、「友人や家族とのコミュニケーションで好んで利用している手段は?」との質問に対し、「フェイス・ツー・フェイス(対面)」と答えた割合と、「電子メール」と答えた割合を各国別に集計したものだ。「フェイス・ツー・フェイス(対面)」を好むという回答は、日本以外の各国が40%前後である一方で、日本のみが14%という結果だった。「電子メール」を好むと答えた割合は、日本以外の各国が10%前後であるのに対し、日本のみが突出しており41%という結果だった。他の各国がほぼ共通した傾向を示している中で、日本のみが特異な傾向を持っていることになる。

和を重んじるとはいっても、それは「あうんの呼吸」や、「互いに察し合う」、「空気を読む」など、主張せずに和ができることを求めるものであり、対話による合意というのとは異なる。むしろ対人面が苦手な人が多いというのが現実だ。たとえば、「対人恐怖症」というのは日本特有のもので、海外ではあまりみられない症状である。日本特有の文化依存症候群ということで、海外においてもそのまま“Taijin kyofusho symptoms”と呼称されているほどだ。日本では自分が集団の中で異質となることを怖れる傾向にあるが、欧米ではむしろ異質でありたい、特別な存在でありたいと望む傾向が強いのであろう。

このように、もともと対人面が得意ではないのに加えて、バーチャルな環境でのコミュニケーションに慣れてしまっている若者にとっては、リアルなコミュニケーションが不得手となることはいわば当然かもしれない。逆にいえば、直接対話が得意というだけで大きな差別化要因になるともいえる。少なくとも、業務遂行上、無用な軋轢を避けることはできるであろう。直接的には主張せずに察し合うことを好む民族であるがゆえ、メールでのコミュニケーションはリスクが高い。メールの場合、一方的かつ直接的という日本人が最も好まないコミュニケーションスタイルとなるため、感情を害し、軋轢が生じる可能性は極めて高いのだ。


プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

サービスに関するお問い合わせ・ご相談はこちらまで

お問い合わせ

人事に関する情報が満載メールマガジン配信中

メールマガジン登録