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  4. 【コラム】第73回 人脈づくりはキャリア開発に欠かせない?
コラム

人脈づくりはキャリア開発に欠かせない?

今回も前回同様、若年層社員がよく誤解している点の一つについて述べてみたい。人脈づくりはキャリア開発に欠かせないというような意見を度々耳にする。そのように言う若者たちは異業種交流会のような場へ盛んに参加し、名刺交換に励むわけである。たしかに「人脈」という言葉は何かしら魅力的に響くかもしれない。何か困った時に助けてくれそうな印象を醸し出す言葉かもしれない。また、そもそも人間は所属欲がどんな欲求にも増して強いため、孤独を嫌う傾向が強く、たくさんの仲間がいると思いたいものだ。「人脈」という言葉が魅力的に感じられるのには、そうした根源的な欲求もその背景にあるのであろう。

もちろん、人との出会いを大切にすることは大事なことだ。実際に、ある人との出会いが大きな転機をもたらすこともある。一方で、20代社員が異業種交流会などにせっせと足を運び、人脈づくりに精を出す姿には違和感を覚える。違和感の一つは、人脈というものはそれほど簡単にできるものではないであろうという点にある。そうした場で名刺交換をして、多少お互いのことをしゃべって別れる。手元には名刺が残る。しかし、それが当人が期待している人脈というものになる可能性はどの程度あるのであろうか。

私は仕事柄、様々な企業で高い業績を挙げているハイパフォーマーの方々にインタビューを行っている。多くの場合は中高年社員ということになるが、その中で、「ご自身に大きな影響を与えた人は?」という質問をよくする。その答えとして、社外の人が出てくることはほとんどない。ごく稀にあったとしても、お客様や取引先の人だ。ほとんどの場合は、かつての上司や先輩など、社内の人になる。また、情報収集能力などを確認するために、社外の情報源を聞くこともあるが、「社外に多様な人脈を持っている」と自分自身で認識している人も多くはない。

人脈について、ハイパフォーマーの人たちから多く聞くこととしては、「結局のところ、一緒に仕事をしてみないと人脈にはならない」ということだ。仕事上、どれくらい信頼できる人かは、一緒に仕事をしてみなければ分からないということであろう。従って、仕事上のギブ・アンド・テイクを想定した人脈を形成するうえでは、パーティーなどで名刺をたくさん集めたところで意味はない。一方、ミドルクラスになれば、仕事上で社外とのコラボレーションをする機会も多くなり、自ずと人脈らしきものは形成されてくるといえる。結局、自分自身の実力と共に自然にできてくるものが本来の人脈ということなのであろう。

若い世代では人脈は形成しづらいものだが、人脈がない場合でも、他人の人脈を借りるということはあり得る。私も20代の頃に経験がある。仕事上、詳細まで公表されていない点について、(旧)労働省に直接確認してみたいことがあった。私は労働省に人脈などなかったが、50代の先輩社員に頼んで、労働省に勤める友人にお願いしてもらうことができた。その方は年齢的に相当上の立場の人だったため、部下である課長補佐を紹介してくれた。当の課長補佐は、上からの指示なのでそれは懇切丁寧に多くの時間を割いて質問に応じてくれた。このように、若い時分に無理して人脈づくりに精を出さなくとも、社内人脈から辿ることは可能なのだ。

仕事上のギブ・アンド・テイクまでいかないまでも、他社の人と交流して見聞を広めるということはあるかもしれない。その場合は、杓子定規な対話ではなく、腹を割った対話の中からこそ互いに学びはあるものなので、新たに知り合った人よりも、学生時代の友人から始めるのが早道と思われる。また、近年はネット上で知り合うのも容易になった。人脈とは言わないかもしれないが、趣味の仲間をネット上で見つけることも多くなっているようだ。弊社役員の某氏のスケジュール表には、週末の予定によく「ついぴ」という言葉が入っている。なんだろうか?と思って聞いてみたところ、「ツイッター・ピアノの会」だそうである。ピアノの演奏を趣味としている人たちがツイッターを介して知り合ってできた会なのだ。各地方ごとに組織されているようで、「弾きあい会」と称している仲間内での演奏会を開催するなど、活発な活動がなされているようだ。そういったものは、人生を豊かにする意味でよいに違いない。また、意図的な人脈づくりが特に必要と思われるのは、むしろ中高年だ。定年退職後を見越しての地域の人たちとの関係づくりは重要なことではないだろうか。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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