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  4. 【コラム】第71回 今年の新入社員は受身?
コラム

今年の新入社員は受身?

新入社員の意識調査結果が出揃ってくる時期となった。従来の傾向とは違っているなど、興味深い結果がいくつか見受けられた。例えば、「出世意欲」や「ジェネラリスト志向」に関するものなどもその一つだ。

マイナビが発表した新入社員の意識調査(*1)によると、「出世したい」「どちらかといえば出世したい」と回答した割合は合わせて88.4%と9割近くに達した。また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表した同様の調査結果(*2)によると、「出世したい」、「出世しなくても好きな仕事を楽しくしたい」のどちらの考えに近いかを選択してもらった結果、49.8%が「出世したい」と回答しており(男性だけでは60.4%)、2004年以降の10年間で最高となった。

一方、日本生産性本部がまとめた同様の調査結果(*3)によると、自身のキャリアの考え方に近いものを選択する設問において、「いろいろな仕事や持ち場を経験させて、ジェネラリストとしてきたえる職場」の割合が58.4%と、過去20年で最高水準となった。もう一つの選択肢である「ひとつの仕事や持ち場を長い期間経験させて、スペシャリストとしてきたえる職場」は41.6%で、過去20年での最低水準(91年)に近い低水準となった。

これらの結果からすると、「会社の中で出世を目指して、ジェネラリストとして成長していく」という姿が浮かび上がるが、なぜ今回、このような傾向を示したのであろうか。景気も上向き基調なので、あまりキャリアに右往左往せずに、会社の中で腰を据えてやっていこう意思の表れであろうか。あるいは、2000年代前半のIT起業ブームや、IT企業や外資系企業への転職ブームから一定期間が経ち、成功例だけでなく失敗例もメディア等で多く取り上げられる中で、安定志向が高まったことなども背景としてあるのであろうか。いずれにしても悪いことではない。20代のうちにキャリアに関してあまり右往左往するよりもずっと望ましい。自己成長に関する長期的思考に結び付いていくのなら、さらに望ましいことである。

もう一つ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査の中で、「給料」に関する調査結果が興味深い。「やったらやっただけ給料を上げてほしい」、「同期の中ではあまり差をつけないでほしい」のどちらの考えに近いかという選択では、「やったらやっただけ給料を上げてほしい」が例年通り高かったが、今年度は例年よりもさらに上昇し8割を超えた。会社に望むことは何かという設問について「給料が増える」と回答した割合も、12.7%と前年比+2.5%と大きく上昇した。一方、「残業が多くても給料が増えるのだからよい」、「給料が増えなくても残業はない方がよい」のどちらの考えに近いかでは、前者と答えた割合は半数以下にとどまっており過去最低となった。これらの結果ほかを受けて同社は、以下のように総括している。「出世意欲は高く、役員にはなりたい。給料は重要だが、残業には消極的。出来れば18時には帰りたい。」

さて、この他の結果を2つほど、以下に紹介したい。
マイナビの調査の中で、「あなたが今、発揮できる力は何か」という問いには、「物事に進んで取り組む力」が55.9%と最多。「これから必要だと思うスキルは何か」については、「自分の意見を分かりやすく伝える力」が50.0%と最多で、「他人に働き掛け巻き込む力」の34.6%が続いた。これらの結果を受け、同社は「今年の新入社員は積極性や仕事への意欲を持つが、受身で実際には行動に結びついていない傾向がある」、「新入社員のやる気を引き出せば仕事の成果にもつながる」と先輩や上司の役割が大切と指摘している(日経産業新聞2013年5月10日より)。 

日本能率協会がまとめた同様の調査(*4)によると、自分の強みという設問には「目標に向かってやり遂げる」が44.6%で最多だった一方、「何よりもまず動いてみる」(13.8%)が8位、「周囲を巻き込むリーダーシップ」(9.7%)が10位、「積極的に現状を変えていく」(8.6%)が11位と、積極性を示す回答が少なかった。こうした結果を受けて、同協会では「今年の新入社員は受身の傾向がある。現場の上司や先輩たちは目標達成に向けた道筋を立ててあげる必要がある」と指摘している(日経産業新聞2013年4月23日より)。

いずれの調査でもほとんど同じような総括となっている点が興味深い。これらは本当に今年の新入社員の特徴といえるのだろうか。予定調和という感じがしないでもない。というのは、「物事に進んで取り組む」ことや「目標に向かって突き進む」ことは自発的な行動であるが、「働き掛け」や「巻き込み」は相手のいることなので、新入社員としては立場上ハードルの高さを感じて当然であろうと思われるからだ。

*1 マイナビ「2013年マイナビ新入社員意識調査」:
3月28日~4月5日に実施した新入社員研修に参加した各企業の新入社員1,803名に対するアンケート調査。

*2 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2013年度新入社員意識調査アンケート」:
3月下旬~4月上旬に新入社員を対象とするセミナー(東京、名古屋、大阪にて合計21講座)の受講者1,258名に対するアンケート調査。アンケート回答率は99.5%。

*3 日本生産性本部「2013年度新入社員 春の意識調査」:
3月下旬~4 月に実施した新入社員教育プログラムへの参加者に対するアンケート調査。有効回答数は1,931通。

*4 日本能率協会「2013年度新入社員 会社や社会に対する意識調査」:
新入社員向け公開教育セミナー参加者および日本能率協会の研修を活用している企業の新入社員へのWeb調査または紙の調査票での回答。調査期間は3月28日~4月11日。回答数は1,002名。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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