1. トップページ
  2. インフォメーション
  3. コラム
  4. 【コラム】第70回 幸福度マネジメント
コラム

幸福度マネジメント

以前にも一度取り上げたが、「幸福」に関する研究がますます盛んだ。内閣府の経済社会総合研究所でも、「幸福度研究」を一つの研究テーマとして掲げている。その理由としては、国民生活に関わる様々なことが、主観的幸福感を用いた実証分析結果により分かってきたことが大きいと思われる。たとえば以下のようなことである。(経済社会総合研究所ホームページより)

・所得の上昇が人々の幸福度を改善するには限界がある。
・失業が個人にもたらす負の影響は、所得の減少以上に、非常に大きい。
・正規雇用、非正規雇用の違いがもたらす影響は、国ごとに異なる。賃金を考慮しない場合には、非正規雇用がわが国でも男性、女性別では幸福度を有意に引き下げるわけではない。
・年齢別にみると欧米では40代が一番低い。日本では年齢とともに幸福度が低下するとする研究もある。結婚や配偶者の存在は幸福度を引き上げる。
・労働者にとって、雇用主による経営への信頼は、生活全般の幸福度に大きく影響する。

そして、幸福感のかなりの部分は自分の意思でコントロールできるということが、ポジティブ心理学の研究から分かっている。それによると、「持続的な幸福感に影響を及ぼす要因」のうち、半分は遺伝的要因だが、1割は環境要因であり、4割が本人の意図的行動であるという。

心理学者のダニエル・ギルバートは、人間は幸福感をつくり出す才能があると述べている。この主張はTEDのプレゼンテーションでも見ることができる。人間はどれほど状況が悪くても光明を見出すのが得意であり、その結果、どのようなトラウマや悲劇の後でも、本人が予想するよりも幸福になるというのだ。

調査の結果、選挙に勝つか負けるか、恋愛の相手が見つかるかどうか、昇進するかどうか、試験に受かるか落ちるかといったことは、どれも当人が思うほど幸福感に影響しないことが判明した。3ヶ月以上にわたって影響を与える体験は非常に少ないことがわかったのだ。良いことがあると、しばらくは浮かれるが、その後、酔い醒める。悪いことがあると、しばらくは泣き言を言い、愚痴をこぼすが、その後は気を取り直して何とかやっていくのだという。

冤罪によりルイジアナ州の刑務所で37年間を過ごしたモーリス・ビッカムが、釈放後に「一瞬たりとも後悔はしていません。輝かしい経験でしたから」と語ったことや、ビートルズの初代ドラマーだったピート・ベストが、ビートルズが有名になる直前の1962年にリンゴ・スターにその座を譲り、20世紀で最も有名なバンドの一員となるチャンスを逸したことについて、「ビートルズに残るよりも、このほうが私は幸せだ」と語っていることなどを例として挙げている。

また、「ポジティブな経験の頻度は、ポジティブな経験の強さよりも、幸福度の予測材料としてはるかに優れている」という、心理学者エド・ディーナーの研究成果を紹介している(HBR 2012年1-2月号)。毎日、些細なよいことが十数回起こる人は、本当に驚くほど素晴らしいことが一回だけ起こる人よりも幸せである可能性が高いというのだ。我々は1つか2つの大きな出来事が深い影響を与えると想像しがちだが、幸福は無数の小さな出来事の総和であるという。

そして、幸福度を高めるためにできる些細なこととして、「瞑想する、運動する、十分な睡眠をとる」などのほか、「良い人間関係を持つ」ことや、「利他的行動を行う」ことを勧めている。幸福の要因に関する科学的な文献のすべてを一言で要約するなら、それは「社会性」であるとし、誰かの幸福度を予測するうえでは、その人の性別、宗教、健康、所得を知る必要はなく、その人の人間関係、つまり身近な人との絆の強さを知ればよいのだという。利他的行動については、「他人を助けることは、自分にできる最も利己的なことの一つである」とし、相手の助けになるかどうかはさておき、ほぼ確実に自分自身の助けになると述べている。


プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

サービスに関するお問い合わせ・ご相談はこちらまで

お問い合わせ

人事に関する情報が満載メールマガジン配信中

メールマガジン登録