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  4. 【コラム】第63回 バブル世代の意識改革?
コラム

バブル世代の意識改革?

昨今では、企業の人事部へお伺いし、人事・組織分野における今後の重点課題は?とお聞きすると、「グローバル人事」や「次世代リーダーの選抜・育成」と併せて、最頻出課題の一つとして挙げられるのが「中高年のモチベーション」である。「40代、50代の活性化」や「バブル世代の意識改革」などの言い方をされることもある。

先日、あるニュース番組を見ていたところ、「バブル世代の意識改革」が特集されていた。40代のバブル世代が組織にぶら下がっているのが問題だとのこと。若手人事の人がインタビューに答えて、「40代の人たちにはもっと頑張ってもらいたい。下の人たちが追いついちゃうぞ、それでいいんですかと言いたい」と、まさに言いたい放題だ。

「バブル世代の意識改革」と銘打たれた取り組みは、裏を返せば、バブル世代悪者論であり、お荷物論である。「もっともっと成果を上げられるはず」との前提に立っている。ということは、現状において「手を抜いている」との認識があるわけだ。「バブル世代の意識改革」なんて打ち出されて、当のバブル世代社員たちは、どのような気持ちでいるのか、経営者や人事の人たちはそれを考えたことはあるのだろうか。

さておき、それで打ち手はというと、やはりこうなってしまうのだ、“意識改革研修”。課題は何であれ、着地は研修となってしまうのが日本企業の常である。研修または人事制度、それ以外の打ち手を聞くことは本当に少ない。それらが奏功しないことは、これまでの経験からほぼ自明であるにも関わらずである。そういう企業に限って、研修をやってもやりっ放しであり、投資効果の測定などはしない。要するに経営者も緩いのだ。

“意識改革研修”をやって、バブル世代の意識が高まり、パフォーマンスが上がるなどと、本当に思っているのであろうか。研修が効果を挙げるための最低条件の一つは、受講者の十分な当事者意識であるが、当のバブル世代社員たちが、「俺たちバブル世代はダメなんだ、意識が低いのが問題なんだな、では会社が提供してくれる“意識改革研修”を受けて意識を高め、パフォーマンスを上げよう」と思うと想定しているのだろうか。

研修という打ち手もずれているが、この場合、そもそも問題の捉え方自体が間違っているので、打ち手以前の問題である。「バブル世代」と一緒くたにしている点がまず問題であり、さらには、「意識の問題」としている点が根本的に捉え違いをしている。小学校の先生が、「このクラスの生徒はみんなダメだ、成績を上げようという意識が低い」と言っているようなものだ。このケースに置き換えれば分かるとおり、こういう場合、ダメなのは生徒ではない、先生なのだ。それを生徒のせいにし、さらには意識という内面へ矛先を向けてしまうのは、前回のコラムでも述べたとおり、“思考停止”の成せる業である。

だいぶ辛口の批評になってしまったが、筆者自身がバブル世代真っ只中であり、大企業に勤める友人たちの悲哀を度々聞いているためか、どうしても同情的になってしまうということはある。しかし、企業におけるバブル世代社員の実態について、おそらくその企業の経営者よりはよく理解していると思う。バブル世代社員は、意識が低いわけではない。貢献意欲はあるが、立場が曖昧なケースも多く、“貢献感”が持てないでいる。危機感が薄いわけではない。定年まで居場所があるかどうか、日々不安に思っているくらいだから、むしろ危機感は強い。

従って、少なくとも、個人の意識の問題ではないのだ。そう捉え違いをしてしまえば、もうその先は、矛先がひたすら当人たちの内面へ向かうだけであり、打ち手はすべてずれてしまうことになる。そればかりか、逆効果にさえなってしまうことも多いに違いない。

相互信頼を根底とするアドラー心理学では、健全なパーソナリティーの条件として、「自己受容」や「信頼」、「所属感」、「貢献感」などが重要なものとして挙げられている。このような条件を満たし、不安を取り除き、「所属感」や「貢献感」を感じられるようにするなど、健全な状態をつくることでしか目的は達成できない。不健全な状態を放置したまま、小手先の対策をいくら打ったところで、問題の根本は解決されない。ましてや、バブル世代社員をターゲットとして“意識改革研修”を行うなどは、会社としての社員への「信頼」のなさを強調し、当人たちの「自己受容」を破壊することで、事態をますます悪化させるくらいの効果しか想定し得ないのだ。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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