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  4. 【コラム】第59回 入社式での社長訓示はなぜ記憶に残らないのか?
コラム

入社式での社長訓示はなぜ記憶に残らないのか?

まだまだ寒さが残っているが、来月からはもう新年度である。企業では、新入社員を迎える準備に忙しいに違いない。入社式では、社長が新入社員を迎えるにあたっての訓示を述べるのが慣わしとなっている会社が多いが、そこではどのような訓示が述べられているのであろうか。入社して数年も経てばもう記憶には残っていないという人が大半であろう。それどころか、入社式の数日後にはすでに記憶にないなんてこともあるかもしれない。端から見ていても、入社式での社長訓示は、記憶に残るようなものは少ないように思われる。

昨年の新入社員への社長訓示も、公開されているものはほとんど目にした。昨年の場合、当然ながらまずは冒頭で大震災に触れ、その後、自社の事業や歴史、理念などについて述べ、新入社員への期待やアドバイスで締めくくる、という構成が多く見られた。自社の事業や歴史、理念などについては、新入社員研修で詳しく学ぶことになるので、社長訓示では、自ずと新入社員に対する期待やアドバイスに重点が置かれることになる。期待やアドバイスということでは、「コミュニケーション、高い志やチャレンジ、顧客視点やグローバルな視野」などが最頻出テーマであったように思われる。

これらはすべて重要なことであることは間違いない。しかし、残念ながら響かない。失礼な言い方だが、多くの場合は、隣の会社へ行って同じことを述べられても、特に支障がない内容であろうとも思える。普遍的ともいえるのかもしれないが、これではおそらく新入社員には刺さらない。記憶には残らない。自分に向けられた言葉でなければ、たいていは耳を素通りしてしまう。とかく、全体へ向けられたメッセージというものは、メッセージ性は低くなる。広告のコピーなどでも同様だ。「パソコンをお使いの皆様へ」なんていうコピーでは誰も振り向かない。「一日に50通以上のメールを送受信する40代の管理職の方々へ」であれば、該当する人は振り向くであろうし、おそらく該当しない人の一定割合も振り向くはずだ。

全体へ向けられた一般的な内容の訓示を新入社員の気持ちで読んでいると、どうしても“駒”としか見られていないような印象を受けてしまうのである。新入社員を迎えるにあたって、「あなた方一人ひとりに強い関心がある」というメッセージを発することは必須ではないだろうか。しかし、それを感じ取れる訓示はほとんど見当たらない。たとえば、一人ひとりの採用選考内容を事前に見ているのならば、今年の新入社員の強みなどの特徴や、抱いている希望などは理解しているはずだ。であるならば、それを踏まえたコメントがあってもよいはずである。そうではなく、自分が述べたいことだけを述べても、上滑りしてしまいがちではないだろうか。

ところで、訓示を述べられる経営者の方々は、自分の息子や娘が社会に出るにあたっては、どのような言葉を贈るのであろうか。おそらくは、「おまえは○○だから、こういうことに気をつけなさい」とか、「新入社員の時にはこういうことが多くあるから、そういう時は・・・」とか、あるいは、自分の若い頃の失敗談などを話すかもしれない。当たり前だが、本当に親身になって、息子や娘のことを考えてアドバイスを贈るに違いない。まさか、訓示で述べるような一般的な話はしないであろう。自社に迎える新入社員に対しても、本来そのようなメッセージを発するべきではないだろうか。

ちなみに、大手企業よりは、中堅中小企業の社長訓示の方が気持ちを動かされるものが多い。推測するに、これには少なくとも二つの理由があると思われる。一つには、担当部署が原稿を用意しているのではなく、社長自身がゼロから頭をひねって内容を考えているということ。そしてもう一つは、新入社員の人数が少ないので、一人ひとりに目が向いているということである。数百名もいると、どうしても集団という“塊”としか見なくなってしまうのであろうか。より多くの人たちに対して責任を負っているということと、大きく矛盾しているように思われるのだが。



プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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