1. トップページ
  2. インフォメーション
  3. コラム
  4. 【コラム】第57回 ムードメーカーについて
コラム

ムードメーカーについて

前回はポジティブフィーリングについて述べたが、ポジティブフィーリングを持っている人は、組織の中にあってはムードメーカーとしての重要な役割を果たす。ムードメーカーがいる組織といない組織とでは、雰囲気の面で大きな差が出る。特に、苦境に陥った時など、ムードメーカーがいるか、いないかの違いは、決定的に大きい。

たとえば、企業再生の際に送り込まれる「ターンアラウンドマネジャー」には、何はともあれ、ムードメーカーとしての資質が欠かせない。破綻した企業、あるいは破綻寸前の企業に“再生請負人”として送り込まれるわけなので、どん底にある社員の士気を一気に高めることがまず求められる。「空気を入れ換える能力」というような言われ方もされるが、それができるかどうかで成否が決まる。

チームにとって、ムードメーカーの存在は、好業績者の存在以上に大きいといっても過言ではない。好業績者が一人抜けても、一人分の業績がなくなるだけだが、ムードメーカーがいなくなれば、チームメンバー全員のモチベーションに関わり、チーム業績が大きく低下しかねない。また、職場風土が悪くなり、離職者が相次ぐ事態も起こりかねない。それくらい、ムードメーカー一人が抜けることの痛手は大きい。チームがスランプに陥った時なども、ムードメーカーの働きによりスランプからの脱出が早ければ、成果の落ち込みは少なくて済み、継続的に成果の上がる組織になりやすい。こうした点を重んじるのであれば、企業としては、ムードメーカーを発掘し、計画的に配置していくことをもっと真剣に考えてもよいのではないだろうか。

スポーツの世界では、ムードメーカーとしての資質はさらに大きな要素となる。「サッカー・ワールドカップ」や「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」などの世界大会へのチーム編成においては、ムードメーカー的資質を持った選手であるかどうかは、極めて大きな要素となる。実際に、注意深く見ていると、その観点が色濃く入っていることに気づく。なぜあの選手が不選出なのだろうか、と思う場合の多くはこの観点といってよいのではないだろうか。サッカーや野球はチームスポーツであり、チームのムードが重要なことは言うまでもない。また、常に短期決戦となるため、いったんムードを壊したら取り返しが付かない。

しかも、代表チームに選出される選手は皆、それぞれのチームに戻ればスター選手である。自分が常に主役となってプレーをし、脚光を浴びている選手たちだ。しかし、代表チームともなれば、そのような選手たちでもベンチを暖めることもある。そういう場合に、元気がなくなりチームのムードを低下させる心配のある選手は、たとえ実力が高くても選出されづらい。ましてや、先発メンバーから外れたことで、ベンチで不貞腐れてチームの雰囲気を壊すような選手は論外なのだ。

2009年に開催されたWBCの第二回大会において、選出確実と見られていた当時ロッテの西岡剛選手が不選出となり、同じ内野手でソフトバンクの川崎宗則選手が選出された。西岡選手は、WBC第一回大会で3割5分5厘という高い打率を残している。五輪など国際大会の経験も豊富で実力ということでは申し分ない。あるスポーツジャーナリストは、「西岡選手は試合に出る中で調子を上げていくタイプだが、川崎選手はベンチにいてもモチベーションを保つことができ、グラウンドに出ている選手と一体となって戦えるタイプである」と分析している。

川崎選手は、WBCでも五輪でも常に選出されている。北京五輪の際には、星野仙一監督をして「いてもらわなければ困る選手」とまで言わしめた。実際に北京五輪では、ケガが完治せずに控えに回ったが、限られた人員の中で、積極的に用具運びなどを買って出るなどチームに献身した。いつ何時でも元気を失わないムードメーカーなのだ。その川崎選手は今年、シアトルマリナーズとマイナー契約をした。海の向こうでもムードメーカーぶりが発揮されるかに注目したい。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

サービスに関するお問い合わせ・ご相談はこちらまで

お問い合わせ

人事に関する情報が満載メールマガジン配信中

メールマガジン登録