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  4. 【コラム】第55回 ユーモアについて
コラム

ユーモアについて

企業における評価項目にはまず入ることはないが、職場においてたいへん重要な意味を持つ「ユーモア」について今回は述べたい。ユーモアは、場を明るくしたり、緊迫した空気を緩和したり、ストレスを軽減する効果がある。ユーモアの研究で知られる社会心理学者の上野行良氏は、ユーモアを3つに分類している。風刺やブラックユーモアなどの「攻撃的ユーモア」、ダジャレなどの言葉遊びなど内容的にはメッセージ性のない「遊戯的ユーモア」、重い問題を軽く見せる「支援的ユーモア」の3つである。ストレスへの認知的評価への影響を与えるのは、支援的ユーモアである。重要な場面でこうしたユーモアが発揮できる人は、他者への配慮ができるサービス精神旺盛な人である。

特に、切迫した緊張状態が続く状況の中や、敗色濃厚で意気消沈しているような状況でのユーモアは、大きな力を発揮することがある。明治初期に起こった西南戦争の末期に、西郷隆盛が言ったとされるユーモアに満ちた言葉が残っている。西南戦争も終盤、宮崎県の北端にある可愛岳で戦闘して追い詰められ、夜間密かに脱出しようと這いつくばって進軍している時に、西郷は、「夜這(よべ)ごとある(まるで夜這いに行くみたいだ)」と漏らした。夜這いとは、夜中に女性のもとに忍び込む風習のことだが、これを聞いた隊士たちは声を上げられず、笑いをかみ殺していたという。とても冗談を言えるような状況ではないが、隊士たちの極度の緊張を解こうして言ったのであろう。疲労と空腹の只中、さぞほっとする空気が流れたことであろう。 

医療の分野にユーモアを取り入れたパッチ・アダムスの例もある。ロビン・ウイリアムス主演で映画化されて世界的に有名になったが、笑いが身体の免疫力を高める点に着目し、愛とユーモアを根底においた医療を展開している。彼が始めたこうした活動は、遊びやコミュニケーションを通じて患者の心のケアをする、「クリニクラウン(臨床道化師)」としてオランダを中心に広がりを見せている。

ユーモア度の高い経営幹部は業績も高いという報告もあるが(「ユーモアのセンスはエグゼクティブの条件」Diamond Harvard Business Review 2004年)、米サウスウエスト航空(以下、SWA)では、ユーモアを重視した経営を行っていることで有名だ。まず同社では、ユーモアが感じられない人は採用されない。乗客に空の旅を楽しんでもらうことを従業員に推奨しており、パイロットがアナウンスでジョークを飛ばすのは序の口で、客室乗務員が客室上部の荷物入れから突然顔を出して乗客をびっくりさせるなどのパフォーマンスをしたり、到着したときのアナウンスの際にアカペラで一曲歌うなどというようなこともあるそうだ。日本の航空会社ではちょっと考えられないであろう。ユーモア好きのアメリカならではともいえるかもしれない。

チームワークが良くお互いに助け合い、顧客に対してもいろいろ楽しませる行動をとり、お互いに楽しんで仕事をするという特徴がSWAにはある。企業理念として、「従業員の満足度第一主義」を掲げえており、98年には、Fortune誌の「働きがいのあるアメリカ企業ザ・ベスト100」では、SWAは1位にランクされた。平均的な離職率が20~30%という航空産業の中にあって、同社の離職率は一貫して5%未満である。

このような結果として、業績は好調を維持している。2001年に起きたアメリカ同時多発テロ後に他の米大手6社の航空会社はいずれも1万人から2万人という大幅な人員削減を行ったが、SWAは唯一、一人のレイオフも行っていない。また、乗客の死亡事故は創立以来一度も発生していない。苦情件数も他の米大手6社の航空会社よりも格段に少なく、ほとんどゼロに近い数値となっている。格安運賃で運行しているため、他の航空会社よりも過密なフライトスケジュールになっており、従業員の勤務形態もハードなものになっているにも関わらず、高い顧客満足度を維持しているのだ。

採用にあたっては、採用基準のトップに「ユーモア」という項目がある。例えば、「最近、あなたが仕事中にユーモアのセンスを発揮した体験を話してください」、「ユーモアで急場をしのいだ経験は?」と面接の時には必ずこのような質問が出る。いかに子供の頃から人を喜ばせるのが好きだったかも面接で聞いてくる。また、面接で「私は」とたくさん口にすると、自己中心型とみなされ、不採用となる。

相手の立場を考える社交的な人や、組織の中で周りの人と協調できる人を積極的に採用する。他人への思いやりを調べるために、面接官は発表者以外にも注目する。たとえば、応募者に5分間で自分を紹介するという課題を与え、十分な準備時間を与える。応募者が話をしているとき、面接官は話し手だけを観察しているのではなく、他の応募者のうち、その時間を使って自分の話を準備しているのは誰か、将来同僚になるかもしれない話し手を熱心に応援しているのは誰かを見ている。チームメイトを応援しようとしている思いやりのある人間がSWAの目に留まるのである。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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