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  4. 【コラム】第54回 なぜ評価制度はかくも不人気なのか?
コラム

なぜ評価制度はかくも不人気なのか?

いずれの企業でも、評価に対する不満の声は多い。表立って、声高に、不満の声をあげる人は多くはいないかもしれない。しかし、アンケート調査などをすれば、軒並み不満の大合唱が聞こえるようだ。企業内で行う意識調査などでもそうだが、一般的な調査データを見ても顕著に表われている。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成20年に発表した、「3年前と比べた仕事に対する意欲の変化とその要因」についての調査結果によると、企業と従業員の間で大きな認識のギャップがあることが分かる。

働く意欲が「高くなった」と回答した企業に、「意欲を高めるために実行した施策」を聞いたところ、「社員の納得性を確保した評価制度」という回答が上位に入っており、全体の31.5%の企業がそう回答している。一方、従業員の側に、「意欲が高まった理由」を聞いたところ、「評価の納得性が確保されているから」との回答は20項目中12番目であり、10.9%に過ぎなかった。
反対に、「意欲が低くなった」と回答した人にその理由を聞いたところ、「評価の納得性が確保されていないから」が35.6%で20項目中3番目となった。「賃金の低さ」、「達成感の欠如」に次いで多くの人が理由として挙げている。

また、企業の側に、「働く意欲を高めるために有効だと思う施策」を聞いたところ、「社員の納得性を確保した評価制度」が、「コミュニケーションの円滑化」や「賃金の引き上げ」を抑えてダントツでの一位という結果となった。全体の60.4%の企業がそう回答しており、唯一過半数の回答を得る項目となっている。
ただし、評価制度運用上の課題については、「評価者によって社員の評価にばらつきが生じること」を挙げている企業が全体の71.3%にのぼった。

この調査では、「納得性のある評価制度」は従業員の意欲を高めるうえで最重要の項目であり、実際に意欲を高めるうえで役立っていると企業が考えている一方で、従業員の側では逆に、「評価の納得性の欠如」が、意欲低下の大きな要因になっているという皮肉な結果となった。評価が従業員のモチベーション上、重要な位置を占めることは間違いないが、納得性を確保することは容易ではなく、確保できなかった場合のネガティブなインパクトは甚大であることが伺える。そして、最も難しい点として、企業の側でも十分に認識しているとおり、「評価者による評価のばらつき」という問題があることが分かる。

そもそも、他人に評価されるということ自体、面白くないことに違いない。誰もが満足する結果などありえず、ほとんどの人が自己評価よりも低い評価が与えられるわけだから当然といえる。自己評価は実力よりも25%高く、他者による評価は25%低いと一般的に言われる。これだけでも50%もの開きが出る。そういう評価を突きつけられるわけだから、不満をもっても仕方がない。

評価に対する不満の多さは、評価の仕組みや運用上の問題にも起因している。一般的に企業の中では、評価については厳密性を重んじるばかりに、仕組みの精緻化へと突き進む傾向が強く見られる。しかし、完璧な評価などないわけなので、いくら精緻な方向を強めても、公平性や納得感が高まることはまず期待できない。かえって、それらを削ぐことにもなりかねない。

人事として、「厳密な評価」であるという点を社員に対して訴求してしまえば、結果としてかえって不満につながるケースが多い。ミスリードということになる。そうした方向ではなく、きちんとした手順を踏んで評価は行われているといった、「プロセスの公平性」の面を強調し、納得感を醸成するのが正しい方向といえる。つまり、「厳密性」という訴求は社員の注意を評価の仕組みに向かわせ、「公平性」という訴求はプロセスに向かわせる。こうした点に重きを置くのであれば、360度評価なども一つだが、評価の方法には本来もっといろんな工夫が考えられて然るべきと思われる。


プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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