1. トップページ
  2. インフォメーション
  3. コラム
  4. 【コラム】第48回 評判のいい人(2/2)
コラム

評判のいい人(2/2)

業種柄でしょうか、年度末へ向けてのこの時期は業務多忙期にて、当コラムをはじめ各コンテンツの更新が滞りがちでよくありません。(つづく)としておきながら1ヶ月も間が空いたのでは、ご閲覧頂いている方々に失礼至極です。反省をしつつ、ようやくではありますが、そのつづきについて述べてまいりたいと思います。

前回は、評判のいい人とそうでない人との違いについて述べたうえで、「はたして、どういう点がこれほどまでに大きな違いを生んでいるのであろうか?」というところで結んだ。評判のいい人は、一般的にバランスがいいとか、安定感があるとかというように映る。逆に、評判の芳しくない人は、バランスが悪い、安定感がないと感じられる。いわば、偏った感じがあるということだ。

この偏った感じというのは、どういう点によってそうした印象になるのであろうか。こだわりの強さということは、一つにはあるだろう。しかし、それ自体は悪いことではない。評判のいい人の中にもこだわりが強い人はもちろんいる。むしろそうした人の方が多い。ただし、それらの人たちの場合、他も見えているという点が違うのであろう。他者の関心事にも目を向ける余裕があるのだ。

そうでない人は、どこか余裕のなさがある。潜在的にだとしても、突かれると困る点がある。そこを繕っている。前回、質問に対する答えが常に逸れていくという例を挙げたが、これも自分で明確に見えている点についてのみ繰り返し語ろうとするからであると考えられる。主張に疑問を挟まれることを嫌う。ましてや反論されることなどは極度に怖れる。言い方を替えると、自分のこだわりについての理解や共感を他者にも求めているともいえるであろう。

一方で、すべてさらけ出せる人がいる。そうした人は何を聞かれても怖れはない。「いろいろな考え方があると思いますが、自分はこういう経験を通して、現状こうした考えに至っています」というように、たいへんニュートラルに意見を表明する。自分の考えが唯一絶対とは毛頭思っていないし、自分の考えすら今後変わり得るとも思っている。単に柔軟なのではない。野中郁次郎先生の言われるところの、「しなやかさ」を備えている人だ。

この違いについては、視野の広さや大局観、寛容さ、気遣いなどいろいろあろうが、一番根源的な点をいうならば、「自己認識」ではないかと思う。「自己認識」が薄い、あるいは歪んでいる場合、他者に対してどうしても偏った印象を与えてしまう。「自己認識」が歪んでいる場合、背骨が歪んでいるのと同様、様々な箇所に悪い症状が出てくる。その端的に現れる一つが、他者に与える印象ということになる。背骨が歪んでいれば姿勢が悪くなるが、「自己認識」が歪んでいる場合も考えや心持ちの姿勢が悪くなる。

正しく自己を見つめているならば、強みの認識はもとより、弱みの点についても受け止めることができる。自分は大したことない、ダメなところはたくさんある、まだまだ未熟だという思いに至り、謙虚になれる。と同時に、他者に対しても寛容になれる。こうした人たちは、360度評価などをしても、自己評価と他者評価のギャップは少ない。自分で理解している自己と他者が理解している自己とのギャップが少なければ、コミュニケーション上の齟齬も少なく、人間関係上のストレスも少なく、より自然に振る舞うことができる。こうした点が周囲にさらに良い印象を与えるという好循環ができる。

自分自身については、分かっているようで意外と分かっていないことが多い。自分自身を正面から見つめるということは、怖くてなかなかできるものではない。特に、自分の弱い面、悪い面などは、客観的に見ることはかなり難しい。相当な自信や余裕がなければ、弱い面は直視できない。そのような人は、強みの認識が薄いともいえる。強み認識がしっかりしていれば、それとのコントラストにより弱い点も認識しやすくなる。強みに対する確固たる自信があってこそ、弱い点にも目を向ける余裕も出てくる。また、自分の弱い面から目を逸らしている人は、他者からの評価を怖れる傾向にある。ということは、自分ではなく他人を中心とした人生観となってしまっているともいえるのではないだろうか。

以上述べてきたように、「自己認識」を高めるためには、まずは自己の強みについての認識を高めること。しかし、強みについてすら自分ではよく分かっていないことは多いので、いろいろな意見に耳を貸すことが肝要だ。様々お付き合いをする中で、部下育成力のあるマネジャーは概して、「自己認識」が正しい場合が多いことが分かる。おそらく、部下を本気で育成しようとする中で、自己を振り返る機会が多いからではないだろうか。子育てにも同様のことが言えるに違いない。「子供は自分を映す鏡」と言われるように、自分に直接はね返ってくるからだ。いずれにしても「自己認識」は、人との関わりの中で形成されていくものである。それゆえ、まずは周囲の身近な人たちと積極的に関わっていくことが、最も重要ということになるであろう。それが正しい「自己認識」を形成することになると共に、良好な評判をつくっていくことにもつながる。

さて、評判ということについて2回に渡って述べてきたが、評判とは、ある人が別の人に対して下した判断あるいは評価そのものではない。それらが、それ以外の第三者に伝えられてはじめて評判となる。それゆえ、その人物について他者に伝えたいという誘因が湧かなければ評判は形成されないという特徴がある。この点について次回補論として付け加え、当テーマを終ることとしたい。(つづく)


プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

サービスに関するお問い合わせ・ご相談はこちらまで

お問い合わせ

人事に関する情報が満載メールマガジン配信中

メールマガジン登録