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  4. 【コラム】第45回 「頑張った者が報われる組織」への変革(2/2)
コラム

「頑張った者が報われる組織」への変革(2/2)

「頑張った者が報われる組織」へ変革していくうえで、「職場における仲間との協働」、「人事部への信頼感」、「プロセス重視の評価」、「成果に結び付くプロセスの支援としての育成」の各点が鍵となると前回述べた。以下、それぞれ述べていくこととしたい。

一人ひとりが頑張っているプロセスを認めて評価すべきは職場の上司だが、上司がすべて見えているわけではない。むしろ見えてないことの方が多いといってもよい。ゆえに、職場の仲間が互いに認め合う存在である必要がある。そうした意味で、仲間との協働はとりわけ重要だ。IT化による個人完結型の仕事のあり方やメールによる情報の共有、成果主義による個人業績へのプレッシャー等々、協働を阻害する要因は急増傾向にある。それゆえ、なおさら情報共有やブレスト等の直接的対話の機会を意図的に設けていくことの重要性が増している。

一方、職場の仲間との関係は重要ではあるものの、その関係は一般的に長くは続かない。上司との関係も同様だ。企業内では異動や昇進昇格があり、組織変更もあるからだ。それゆえ、人事制度への信頼感もそうだが、人事部への信頼感も重要性が高い。「頑張れば必ず誰かがそれを見ていてくれる」という安心感は大切だ。そしてその誰かとは、小さな会社では経営者ということもあろうが、大きな会社ではおのずと人事部ということになるであろう。人事部メンバーが定期的に従業員と面談をする「人事面談」というものを制度化している企業もあるが、その取り組みの意義が昨今見直されてきているという声も聞く。

次に、人事制度に関しては、成果主義型への改革によって、短期志向の方向が強まったことで、閉塞感が増した可能性はある。成果主義=結果主義ではないが、90年代後半頃より、多くの企業においてそのような方向性が強められたことは確かだ。一橋大学大学院の守島基博教授がよく言われるように、成果主義への一連の制度改革では、評価・処遇という後工程のみの改革であり、育成や配置など成果を出すまでのプロセスである前工程の改革が伴っていなかったという指摘は重要である。

評価においてもプロセスをより重視する方向が不可欠だが、プロセスの評価はすでに述べたとおり、上司だけの評価では妥当性が低くなりがちである点が難点となる。それゆえ、プロセスを納得性高く妥当に評価するうえでは、360度評価を補完的に用いることが有効である。つまり、上司の眼を複眼化することで公平性を増すということだ。同時にプロセス評価においては、継続的な観察が不可欠となる。結果の評価は一時点での結果だけを見ればいいわけだが、プロセスの評価は一期を通して見る必要がある。もっとも、上司も含め職場における適切な協働がなされていれば、改めて傾注するまでもない点ではある。

人材育成は、頑張れば成果を挙げられるように育成することが基本である。ゆえに、精神論一辺倒ではなく、どうすればより高い成果を挙げられるようになるのかについての具体的なアドバイスが求められる。それと共に、失敗が許容される環境づくりも重要だ。それがないと存分に頑張ることができず、結果、そのプロセスから学ぶことも半減してしまうことになる。成果への過度なプレッシャーによりメンバーがプロセスに集中できないとすれば、その影響は計り知れない。失敗を恐れて、短期的な小さな成果に執着してしまうことにもなりかねない。そうなれば、個人の強みを引き出す組織ではなく、逆に個人の強みを抑え込む組織となってしまう。

メンバー一人ひとりは本来、業績へのプレッシャーを感じ過ぎることなく、周囲との協働も積極的に行いつつ、プロセスに集中できるようにすべきである。経営陣や事業を預かる部門長クラスであれば、成果への責任を持ち、相応のプレッシャーも感じることは当然のことだが、それがミドルマネジャーにもそのまま下ろされ、それがまたメンバー各人に転嫁されるようでは、マネジメントが機能しているとは言えない。こうした構図がメンタルヘルス上の問題発生の温床にもなっている。成果へのプレッシャーは、上位層がしっかりと受け止めるとともに、成果が挙がるような戦略・シナリオを描き、メンバーには存分にプロセスに集中させるのが本来の在り方であろう。

頑張った者がバカを見るということでは、どんな組織も成り立たない。閉塞感打破へ向けても、頑張った者が報われる組織にしていかなければ、本質的には解決しない。今回述べたような点をはじめ、「頑張った者が報われる組織」をキーワードに、すべてを変革していく必要がある。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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