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  4. 【コラム】第40回 「パーソナル・レピュテーション・マネジメント」 ‐自己ブランド化の落とし穴‐
コラム

「パーソナル・レピュテーション・マネジメント」 ‐自己ブランド化の落とし穴‐

最近書いたコラムの中で、(番外編を除いては)第36回の「評価」と「評判」について書いたものが最も反響があったので、今回はその続編を書きたいと思います。

昨今は「パーソナル・ブランディング」流行りである。マーケティング的視点で自己のブランド化を図ろうという、やはり米国発の動きだ。しかし、この方向は特に日本においては、誤った方向となる可能性が高いと、筆者は考えている。なぜなら、それはどうしても組織との距離を広げる方向へ向かうからだ。

どの年代においてこの動きが活発かにもよるが、20代、30代が多いと仮定すると、なおさらその思いを強くする。自己ブランド化の主たる手段の一つとされるツイッターの利用率は、20代で最も高く、次いで30代となっている。

筆者の考えのベースにあるものは、この15年くらいに渡って仕事上行ってきている「コンピテンシーインタビュー」から得た知見である。これは各業種、各職種のハイパフォーマーに対して多少念入りなインタビューをするもので、これを基に「好業績人材モデル」を構築する。彼ら、彼女らがどのようにして、そのような立場を確立したのかについては、業種・職種を問わず共通点の多いことに気づく。

一つの重要な共通点として、20代~30代前半という時期において、脇目も振らずに目の前の仕事に没頭してきた人たちであるという点が挙げられる。決して、社外の人脈づくりに一生懸命であったり、資格取得に励んだりしてきた人たちではない。ましてや、(時代も違うのでそうした手段もなかったわけだが)、社外の人に対して自己をアピールするようなことに時間を割いたりしてきてはいない。とにかく、与えられたミッションに精一杯に打ち込み、人一倍仕事をしてきた人たちだ。

そうすることで真の実力を身に付け、社内的な評判を高め、その後のキャリアを切り拓いてきた。社内的なキャリアに留まらず、中には、ヘッドハントされたり、知り合いからの紹介などで他社に移って活躍している人もいる。まともなヘッドハンターであれば、その人の社内での評判は必ず考慮に入れる。

日本における、米国とは違った側面もある。労働市場の流動性は大きく異なり、また、個人の楽観性という面での違いも大きい。もし、米国並みに労働市場が流動的であるなら、他社に転職するなり、起業をするなりといった選択肢はより身近なものとなるであろう。「パーソナル・ブランディング」は、起業をしたり、生涯に何度も転職するような状況を前提としている。宗教的楽観性のない日本においては、独立・起業する人は今後もそれほど増えはしないだろう。

普段接していない人たちに対して自己をアピールしようとした場合、意識はどこに向かうであろうか。見えやすい差別化を図る方向へ向かうのは必然であろう。ある商品に関するマーケティングを考える場合、商品の特徴を捉えて訴求ポイントを探り、効果的にアピールしていくことになる。単体としての、その時点での価値について、散発的なアピールをしていくことになる。人が物である商品と異なる点は、周囲とつながりを持った存在であり、常に変化し成長する存在であるという点だ。

社内的な評判の高い人たちを見ると、他の人たちと区別されるような大きな差がある場合ばかりではない。むしろそうしたケースは少ないに違いない。より細かな点において、少しだけ優れているということが多い。彼に任せると何か安心だとか、他の人よりも少しだけ痒いところに手が届くとか、少しだけ粘り強いとか、欲しいタイミングで報告をくれるとか、微細な差異であることが多い。差別化というよりは、むしろ「差異化」ともいうべきものである。そうした点は、常日頃一緒に仕事をしていなければ分かり得ない。

「パーソナル・ブランディング」は見えやすい特徴をアピールすることに重点が置かれるため、結果、組織と乖離してしまう、現在の仕事と乖離してしまうということが起こる。今後のキャリアを切り拓くための実力を身に付けようとするならば、社内での自分自身の価値を高めていく、いわば「評判」を高めていくという方向に、むしろ意識を向けるべきではないだろうか。社内における「パーソナル・レピュテーション・マネジメント」こそが、将来のキャリアにとってより重要性が高いと思われる。

社内的な評判を高めようとする場合、以前のコラムでも述べたとおり、一朝一夕にはゆかないため、弛まぬ努力が必要だ。それゆえ、「自分の評判を高めていこう」という意識は、長期性を伴うものであり、また同時に、周囲との関係性にも重点が置かれるため、仕事を通して実力を磨いていくうえで、望ましい意識といえるであろう。

重要なのは、社会にとって価値の高い仕事をすること。そのために自分を活かすこと。はたして、どのような意識の在り方が自分をより活かすことにつながるのであろうか。

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プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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