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  4. 【コラム】第37回 「報酬」と「インセンティブ」について(1/2)
コラム

「報酬」と「インセンティブ」について(1/2)

金銭的報酬が仕事の報酬であるという、残念な共通認識が定着しつつあるように思われる。労働の対価であることは間違いないが、金銭的報酬のために働いているということとは異なる。仕事の報酬とは何か?仕事そのものが報酬である、というのがまず基本であろう。マズローの欲求5段階説に沿っていうならば、生理的欲求はさておき、安全の欲求、所属の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求、すべてを仕事は満たしてくれる。仕事がなくなった場合どうかと考えてみると分かりやすい。生活の糧をどうするか、どこで所属欲を満たすか、誰に認めてもらうか、どういう手段で自己実現を果たすか。何らかの事情でやらされ感に埋没しているような場合は、仕事の中に報酬は見出しづらいものだが、仕事である以上、必ず根源的な欲求を満たす要素が埋め込まれているはずである。

筆者の大学時代の友人で、非常に優秀ではあったがキャリア志向がまったくなく、「結婚したら早々に仕事を辞めて自分の母親みたいに悠々自適にやりたいことに時間を使いたい」と就職前から公言していた女性がいた。結婚が決まり、ある時フィアンセの男性から、「もう仕事は辞めてもいいよ」と言われた瞬間になぜかスイッチが入ってしまい、仕事に執着するばかりか、没頭するようになった。それから約10年、管理職になるかどうかというところまで行き、ようやく退職の決意をし、その後は当初の希望であったような生活をしている。フィアンセからのその一言があったのが、入社4年目であったのだが、それがもう少し早いか遅いかであったなら、こうはならなかったのではないだろうかと私は勝手に思っている。

会社の中で最もモチベーションが高いのは、若手の女性社員ということはないだろうか。最もモチベーションが低く、やらされ感に苛まれているのが実は中高年男性ということはないだろうか。語弊がある言い方かもしれないが、「嫌ならいつでも辞められる」と思っているような場合、やらされ感は自ずと低くなる。良いことも悪いことも、客観視できるからだ。「どんなことがあっても決して辞められない」と思っている場合には、どうしても辛くなる。やらされ感でいっぱいのケースもある。客観性が失われることで良い面が隠され、悪い面ばかりがクローズアップされるからだ。そんな時は、自分の置かれた状況を自分のものとしてではなく、他者から相談された他人事として客観的に眺めてみれば、案外仕事の中の報酬が見えやすくなるかもしれない。

もともと日本人にとって、労働とは特別な意味を持っていた。日本と西洋では労働観に大きな違いがある。「日本書紀」の中では、当時の労働であった稲作は、人間が神からの恵として許された行為であったとある。米は神様達の食べ物であり、稲の栽培は天上の神様達だけが行なえるものだった。それと同じ行為をし、同じ物を食べることを許されたものであった。よって、日本人にとって労働とは「褒美」であり、一種の生き甲斐として始まっている。西洋での「労働」の起源はというと、旧約聖書の中で、アダムとイブの話で語られている。彼らは楽園で労働をせずに暮らすことができていたが、禁断の果実を食べて楽園から追放されてしまい、それからは自分達で額に汗して働き、食べ物を得なければならなくなった。つまり西洋では、労働は「罰」として始まっている。労働そのものが報酬とはならず、辛いことである場合、その対価が重要になることは言うまでもない。(つづく)

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プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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