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  4. 【コラム】第36回 「評価」と「評判」について
コラム

「評価」と「評判」について

日本企業では、「評価ではなく評判で人事が決まる」とよく言われる。「評価」と「評判」、言葉は似ており、意味するところも近いが、その性質は大きく異なる。「評価」は評価基準を満たせば高まることが明白なものだが、「評判」とは主観の集合体であるので基準は存在しない。また、「評判」は長期間かけて築かれるものであるが、いったん落ちると再び高めるには相応の時間を要する。このように、「評判」とはやっかいなものではあるが、いったん高めることができ、落ちることがないようにしっかり管理をすれば、至るところで強力な後押しをしてくれるものでもある。

「評価」と「評判」はもちろん密接に関係し合っている。「評価が評判をつくる」という側面ももちろんあるが、逆に「評判が評価をつくる」という側面がより大きいに違いない。行き過ぎると、「ハロー効果」という評価傾向に陥りがちだ。「ハロー効果」には、「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」とがあるが、良い評判のある人には評価も高く付けがちであるし、悪い評判のある人には低く付けがちである。いったん落ちた評価が高まりづらいのは、いったん落ちた評判が高まりづらいからともいえる。

「評価」が評判寄りになるか、業績評価寄りになるかは、人材の流動性の度合いによる。流動性が低いほど、労働市場は社内に限定されるため、社内での評判、いわゆる“インターナル・レピュテーション”が重要性を増すこととなる。流動性が高く中途採用者が多いような組織では、長期的に築かれる評判よりは、短期的な実績、業績評価がより重要となる。ゆえに、官僚組織などは、完全に「評判による人事」となる傾向にある。

「評判」は一朝一夕にはつくれないため、弛まぬ努力が必要だ。それゆえ、「自分の評判を高めていこう」という意識は、長期性を伴うものであり、また同時に、周囲との関係性にも自ずと目が向くものであるため、望ましい意識といえるであろう。入社式の社長訓示に度々登場する、「どれだけの信頼を集められるかが勝負」、「築いた信用の一つひとつが財産」というような言葉とも重なる。

では、どうすれば「評判」を高めることができるのであろうか。米国では、「レピュテーション・マネジメント」という言葉が一般化している。日本では、どちらかといえばコンプライアンス関連で使われる「レピュテーション・リスク」という言葉の方がより普及しているかもしれない。これらは、個人ではなく企業の評判、「コーポレート・レピュテーション」について用いられる言葉だが、この考えが個人の評判、「パーソナル・レピュテーション」についても多くのヒントを提供するものと思われる。

『レピュテーション・マネジメント』(ロナルド・J・オルソップ著、日本実業出版社) によると、「企業にとって、自社の『評判』は重要な無形資産。評判への意識を高め、積極的に管理する『レピュテーション・マネジメント』は、今や必須の経営課題と言える」とある。また、『コーポレート・レピュテーション』(チャールズ・J・フォンブラン、セス・B・M・ファン・リール著、東洋経済新報社)では、レピュテーションの重要性を次のように説いている。「優れたレピュテーションは磁石となる。私たちはレピュテーションの高いところにひきつけられるのだ。(中略)高いレピュテーションは万能の名刺を持つようなものだ。どこにでも入っていけるし、熱心なファンを生み出し、顧客や投資家をひきつけるといったように、世間から敬意を受けていればこそ可能な世界が開けるのである」

「コーポレート・レピュテーション」を評価する指標について、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は以下の6つの属性を挙げている。
・ 情緒的アピール
・ 製品とサービス
・ ビジョンとリーダーシップ
・ 職場環境
・ 財務業績
・ 社会的責任

個人に置き換えると、以下のようになるであろうか。
・ 情緒的アピール
・ 業務品質とサービスレベル
・ ビジョンとリーダーシップ
・ 自己の状態(モチベーション状況等)
・ 成果・業績
・ 倫理観・責任感

また、前掲書『コーポレート・レピュテーション』では、「優れたレピュテーションを構築する上での重要な要因として、5つの原則を提示している。これらは、「パーソナル・レピュテーション」を高めようとする場合にも、ポイントになり得るに違いない。
・ 顕示性(Visible):注目度が高い企業であれ
・ 独自性(Distinctive):違いを際立たせよ
・ 真実性(Authentic):誠実に自らを提示せよ
・ 透明性(Transparent):適切に情報開示せよ
・ 一貫性(Consistent):「対話」を確立せよ

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プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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