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  4. 【コラム】第35回 「向き・不向き」と「最適配置」について
コラム

「向き・不向き」と「最適配置」について

人事・組織マネジメント上の多くあるニーズの一つとして、「最適配置」というものがある。「最適配置」という言葉は、経営者にとってはなんとも魅惑的な響きを持った言葉に違いない。個々人の強みを一番発揮できるポジションに再配置できれば、組織力は何倍にも高まるのではないか、との期待を呼び起こす言葉かもしれない。しかし、実情は多少異なる。いや、だいぶ異なる。ただ、そこまでの過剰期待を抱いていないとしても、組織の持っている力をまだまだ十分に発揮できてはいないのではないだろうか、との危機感は経営者や事業部門長であれば誰しも少なからず持っているであろう。もちろん、組織力が高度に発揮できている組織などは、そうそうあるものではない。

ただし、向いている仕事に就いたからといって、多くの場合、超人的な業績が挙がるわけではない。たとえば、スポーツをいろいろとやってみて、これは自分に合いそうだとか、合わなさそうという感覚はあるものの、合いそうと思われるスポーツをやっても、誰もがそのプロ選手になれるわけではない。ただ、合うスポーツをやった方がより楽しめるのは間違いないであろう。それと同じように、相対的に向いている仕事をやった方が、ストレスが溜まりづらく、無理なく自然体で行うことができる。ゆえに、会社としても過度な期待をするべきではないし、個人の側も、過剰な期待を持って「どこかに自分に向いている仕事があるに違いない」なんていう考えを持っていては、青い鳥症候群になってしまうであろう。どんな仕事でも、高い成果を挙げるためには、相応の努力が必要なことはいうまでもない。

自己申告等、個人の希望で異動する場合に問題点となるのが、実際にある仕事を行う前の印象は必ずしも当てにはならないということである。興味があるということと、自分に適性があるということは同一ではない。逆に、興味が向かない仕事でも、やってみたら意外にも向いていたということもいくらでもある。経験済みの方も多いに違いない。営業職のハイパフォーマーのインタビューをしてみると、「以前は、自分は営業には向いていないと思っていた」という人が思いのほか多いことに気づく。ただ、自分で希望して異動になった場合、少なくとも初期のモチベーションは高いであろうし、自ら手を挙げた手前、ちょっとやそっとのことであきらめるわけにもいかず、なんとか成果を挙げるべく一定期間努力し続けるはずであろう。その間に、適性を開発しつつ成果が挙がるようになれば、その仕事への興味は持続し、好循環が続くというケースも少なくないであろう。

さて、組織力を今以上に発揮させようとする場合、二種類の方向性がある。一つは、現状の仕事において、各人のモチベーションをさらに高め、成果を高めていく方向。そしてもう一つが「最適配置」の方向であり、各人が最も成果をあげやすいポジションに再配置するというものである。前者が内科的な処方であるのに対し、後者は外科的処方ということになろう。後者の方が、短期的に劇的な変化が起こりそうなイメージはあるかもしれない。モチベーションアップへの取り組みについては、様々なされてきているとともに、その難しさも十分に理解している企業は多い。一方、「最適配置」については、言葉としては出てくるものの、取り組みとして進んでいる例はさほど多くはない。

なぜ、「最適配置」への取り組みは困難なのか、どのようにすれば、「最適配置」に近づけることができるのかについて最後に述べたい。ここでは、自己申告等、個人の希望で異動するという側面ではなく、会社主導で再配置をしていくということについて述べる。個人主導の場合、ごく限られた再配置であり、「最適配置」というほどのボリュームでの再配置とはならないからである。もちろん、会社主導の場合でも、一気に多くのポジションを入れ替えるということは現実的ではないので、中期的計画の中で実行していくことになる。さて、「最適配置」が進みづらい要因とは、ひとえにインフラの問題、仕事と人をマッチングさせるためのインフラの不整備にある。「仕事の見える化」と「人の見える化」の両方が必要となるが、このうち、どちらかといえば「仕事の見える化」の方が進みづらいようである。

進みづらい理由としては、ある一つの勘違いがあることが多い。「仕事の見える化」といった場合、必要な知識やスキルを洗い出そうとする場合が意外にも多い。しかし、これは「最適配置」のためのマッチングには関係のない「仕事の見える化」である。なぜなら、「最適配置」の目的は、そのポジションに就いて無難に仕事をこなしてもらうことではなく、そのポジションで高い成果を挙げてもらうことだ。それゆえ、「高い成果を挙げるために」という観点が入った仕事の洗い出し方でなければならない。質問としては、「この仕事で高い成果を挙げるために必要な資質は、行動は?」ということになるはずだ。「この仕事を行ううえで必要な知識は、スキルは?」ではない。前者はコンピテンシーの観点であるが、そうした観点で洗い出したものと、そうした観点で人材をアセスメントしたデータとがあってはじめてマッチングが可能となる。

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プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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