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  4. 【コラム】第34回 管理職が機能するためには何が必要か、評価はどうあるべきか(4/4)
コラム

「管理職が機能するためには何が必要か、評価はどうあるべきか」(4/4)

前三回では、管理職がきちんと役割を果たすためには、管理職が機能しやすい環境をつくることが肝要であり、そのためには組織力(職場力)全体を向上させていく必要がある、ということを述べました。しかし、それへ向けての手段となったときに、「管理職の再教育」というように、個人の取り組みとして切り取ってしまうところに問題があるという点を指摘しました。

それでは、どうすれば管理職が機能しやすい環境がつくれるのか。前回は、WHAT(何をする必要があるか)について述べました。今回は本テーマの最終回として、HOW(どのようにする必要があるか)について述べたいと思います。

《望ましい環境をつくるためのHOW》

「人材像」が明確になり、何をすればよいかが分かったとし、どのようにすればそれらが身に付き、習慣化するであろうか。やるべきことが分かったとしても、習慣化されなければ必要な場面で確実に発揮されるような状態はつくれない。職場全体の取り組みとしなければ継続性は保てず、望ましい状態はつくれないことは既に述べた。つまり、「職場全体での継続的な取り組み」が必要となる。それにあたり、各職場における取り組みの方向性を示し、継続性を確保するうえでの支援が人事部には求められることとなる。具体的には、人と組織の「見える化」が一つだ。それにより改善の方向性が明確になり、継続的な「見える化」により、職場での取り組みの継続性も維持される。次に、それらをより恒常的な取り組みとし、日常化するためには評価制度を中心とした制度的工夫も必要である。

(1)人と組織の「見える化」

現在の状況を正確に把握し、改善の方向性を定めるために「見える化」は不可欠である。また、改善の継続性を確保するうえでは、一度ならず、一定期間継続的な「見える化」が重要となる。人の「見える化」とは、メンバー一人ひとりの適性やスキルレベル、モチベーションの状況などが見える形になるということだ。管理職が部下と十分なコミュニケーションを図っていたとしても、適性を的確に見極めることは容易なことではない。そもそも、それらがある程度把握できていてはじめて十分なコミュニケーションがとれるようになるという側面もある。次に、組織の「見える化」とは、職場の状況がどのようになっているか、メンバーが現在の状態をどのように感じているかを見える形にすることである。これらの「見える化」は、管理職がマネジメントを行ううえで、極めて有効な助けとなる。

これらは十分なマネジメント力を発揮できている優れた管理職であれば、こうした手助けなくしても見えているであろうし、また、そのように手助けなしにできるようになることが最終ゴールではある。しかし、すでに述べたように、重要なことは多くの管理職が無理なくできるレベルのことから始めなければならないということであり、また、管理職個人の取り組みに留めないためにも、周囲と共有できる形で示すということである。よって、人事部としては、「人材像」を定義して明示し、あとは結果を評価する仕組みを提供すればよいというものではない。「結果に至るまでのプロセスの支援」がより重要だ。多くの人事・組織的取り組みにおいて、抜け落ちがちなのがプロセスの支援である。ルールづくりや制度づくりは行うものの、プロセスの支援はおろそかになる傾向がある。そのため、様々な取り組みが地に着かずに流れてしまうということが多く起こる。プロセスの支援とは、現場における管理職の活動を手助けすることであり、そのようなプロセスの中でこそ管理職のレベルアップが図れるのである。

(2)制度的工夫

HOWについての二点目、制度的工夫として、評価制度の見直しの観点について最後に述べたいと思う。

「人材像」を定義し、管理職は何をすべきかを明確にすることがまず先決であると述べた。そしてそれらは当然ながら評価制度に反映されるべきである。評価制度の中に示されれば、そのような行動を起そうという誘引となることは言うまでもない。逆に、評価基準が「人材像」と整合性が取れていない場合は、「人材像」を体現するべく行動改善に努めたことは、結果として評価の対象とはならないという不整合が生じることとなる。これでは、上述のような取り組みの効果は半減してしまう。従って、評価制度を見直す場合のポイントとしては、期待する行動としての「人材像」が、被評価者に対してメッセージとしてきちんと伝わるかどうかがまず第一である。実際、私共が評価制度のレビューなどを行う際にまず見る点はこの点であり、十分なメッセージ性のある基準となっており、対象者の行動を引き起こすに十分なものかどうかという点である。

しかし、評価基準を見直し、整合性のとれたメッセージを発するようになったとしても、それ自体は、組織力向上へ向けての改善を継続的に促すものではないという点に注意しなければならない。例えば、部下育成の行動を管理職に取らせたいがために、「部下育成」を評価項目に入れるということは多くある。これは部下育成が重要な役割であるというメッセージとはなるが、それだけで部下を育成するようになるというほど簡単な話ではない。身に付いていないこと、習慣化されていないことが急にできるようになるわけではない。どのようにすればよいか分からないような場合はなおさらだ。また、部下育成などは、ごく日常的な活動であり、上の立場の人から必ずしも見え易くはない。評価者である上司から見え易い行動であれば、アピールという点からも熱心に取り組み続ける可能性はあるが、そうでない場合、継続性を保つのはさらに容易ではない。

結局、評価制度の中で「人材像」を示すことは必須ではあるが、かといってそれだけで行動が改善されるまでは行き着かないこともまた事実だ。年一回や二回の評価のみで行動改善への継続性を維持することは難しい。あくまでも、行動改善への努力は報われるという結果として、「人材像」と評価基準とが整合性がとれていることが重要なわけであり、これ自体が改善支援となるわけではない。もし評価制度の中に、改善支援としての継続性まで担保する工夫を組み込むのであれば、評価またはレビューは年一回や二回ではなく、より頻度高く行う必要がまずある。継続的なリマインド、意識付けが必要だからだ。同時に、部下育成など必ずしも見えやすくはない行動の発揮を継続的に促し、かつ適正に評価するためには、観察者を増やすことが必要となる。周囲の皆で観察し、評価するということであり、手法としては、360度評価のような仕組みとなる。

評価の頻度と観察者数の増加をそのままを一つの形とするならば、「360度評価を頻度高く実施する」ということになるであろう。実際、私共の支援事例の中でも、そのような取り組みによって対象者である管理職および周囲への継続的な意識付けがなされ、行動の習慣化へ向かう例は多い。ただこの場合、人事考課そのものに使うには、評価に慣れていない人たちの評価が加わる点や、率直な評価がしづらくなる点などの課題が残る。従って、効果性を高めるためには、行動の改善という育成面に焦点を当てるべきであり、人事考課には直接的に反映させず、用いる場合にも参考とするに留める必要がある。

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プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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