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  4. 【コラム】第32回 管理職が機能するためには何が必要か、評価はどうあるべきか(2/4)
コラム

管理職が機能するためには何が必要か、評価はどうあるべきか(2/4)

前回は、管理職の「マネジメント力低下の要因」について述べました。今回は、マネジメント力が低下せずに管理職が十分に機能している会社の特徴を探ってみることで、そうした状態をつくるうえでの条件について考えてみたいと思います。

《管理職が機能している会社とは?》

一般的には、管理職のマネジメント力の低下に危機感を募らせる会社が多い状況ではあるが、そのような中にあっても、管理職がきちんと機能している会社ももちろんある。そうした会社の管理職は、次々に来る要請に対しても吸収する余地が十分にある。むしろ新たなことを吸収するというよりも、重点の置き方を少し変えるという程度のことなのかもしれない。というのは、要請されることの多くは、実際にはきちんとマネジメントをしてさえいれば、その中に含まれていることであると考えられるからだ。

例えば、きちんとした倫理観のもとにマネジメントをしていれば、敢えてコンプライアンスを持ち出す必要はなく、また、部下一人ひとりの状況をつぶさに見ていれば、メンタルヘルスを持ち出すまでもなく、必要な配慮はできていることになる。ダイバーシティーにしても、一人ひとりの立場に応じて実力が十分に発揮できるような環境づくりに日々腐心しているのであれば、今さらダイバーシティーや女性活用などと声高に叫ぶ必要はない。従って、そのような会社のそのような管理職たちにとっては、次々に来る要請も、決して過剰な期待にはなっていない可能性が高い。同じ要請をしても、受け止める側がどういうレベルにあるかによって受け止め方は180度異なることになる。

ただ、この違いは決して管理職個人の問題には留まらないことであると思われる。管理職一人ひとりに新たな要請に対する吸収力があるかなしかということよりも、むしろチームとして吸収力があるかどうかの方がより重要であるということが、多くの組織を見ていて感じることである。諸々の要請はすべてメンバー全員に対する要請であり、チーム全体に吸収する下地がなければ、いくら管理職個人が孤軍奮闘しても望ましい状態をつくることは困難であろう。つまり、管理職がその役割を十分に果たせている場合、当人が有能であるということも去ることながら、管理職としての役割を発揮しやすい環境があるということが、忘れてはならないより重要な点であると考えられるのだ。

《管理職が機能しやすい環境とは?》

「忙しすぎてマネジメントをしている暇がない」という言葉は多く耳にするが、マネジメントがきちんと機能している会社でも管理職はもちろん多忙である。ただ、望ましい環境がある場合、管理職に過度なストレスが掛かったり、精神的に追い詰められたりということはまずない。いったいその環境とは、どのようなものであろうか。一言でいうならば、「管理職が孤立していない」ということになるであろう。管理職が孤軍奮闘しているような組織ではない。そうではなく、チーム内で先輩格の社員は後輩の面倒を当たり前のごとく見て、新人が入ってくれば皆で育成をするというようなことが自然に行われている職場である。ナンバー2に優秀な人材のいるチームは概してチーム力が高いものだが、それもこうした点の一つの表れであろうと思われる。

このような状態のできていない職場では、すべてのチームマネジメントを管理職が一人で行うことになる。評価者である管理職とチームメンバー全員とが一対一の関係ができているということは確かに重要ではあるが、それはすべてのメンバーの面倒を管理職一人で見るということではない。それは物理的に無理であることも多いであろうし、仮にできたとしてもそれでは結果として良い職場は形成されない。それを継続的に行うことができ、良い職場づくりもできるような優れた管理職も稀にはいるであろうが、多くの管理職にとって恒常的にできることではない。どうも経営者には、強いればそうなるとの思い込みがある場合が多いようだ。教育研修さえ提供すれば皆が皆、理想的な管理職になるとの過剰期待があるのかもしれない。しかし、それは現実と異なることは、これまでの取り組みを振り返ってみれば自明であるに違いない。

従って、組織力を高めるといった場合に、管理職の役割がカギになることは間違いないが、管理職個人に働きかければそういう状態ができるというわけではない。管理職を中心とした職場全体を念頭に手を打っていかなければならないという点が重要だ。この点が人事・組織マネジメントにおいて多く陥りがちな過ちとも言える。「組織力を高めなければならない→そのためには管理職のマネジメント力向上がカギである→管理職を再教育する必要がある」というロジックだ。「組織力の向上」という課題はそのままでは漠とし過ぎていて打ち手が見えてこないので、「管理職のマネジメント力向上」等のポイントの絞込みは必要であろう。しかし、その絞り込んだ目的に対する手段として、「管理職の再教育」ということで、個人の取り組みとして切り取ってしまう点に問題がある。いわば、ここで思考停止状態となり、従来から慣れている手段へと飛躍してしまうのだ。この繰り返しをしていても状況は一向に好転はしない。

なぜ、「管理職の再教育」では奏功しないのかはすでに述べた。管理職が孤軍奮闘してメンバーの一人ひとりに働きかけ続けることは多くの管理職にとって容易なことではないし、かといって継続性を絶てば組織力は向上しないからだ。一つの課を想定し、その課の組織力を向上させようとする場合に、課長に管理職研修を受けさせたところで、それだけで課の組織力は高まらないであろうことは経験的に理解されるところであろう。従って、管理職個人としての取り組みではなく、職場全体としての取り組みにシフトさせていかなければならない。ではどうすればよいのか、ここのところでまた思考停止になりやすいのだが、ここをブレークスルーしないかぎり、同じことの繰り返しとなり、組織力の向上に結び付かないばかりか、管理職自身のレベルアップにさえ結び付かないこととなってしまう。(つづく)

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プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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