1. トップページ
  2. インフォメーション
  3. コラム
  4. 【コラム】第31回 管理職が機能するためには何が必要か、評価はどうあるべきか(1/4)
コラム

管理職が機能するためには何が必要か、評価はどうあるべきか(1/4)

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、年初らしいテーマをと思いつつ、正月休みも産労総合研究所様よりの宿題に明け暮れておりましたため、ひとまずは、そのお題についての論文を何回かに分けて掲載させていただきたいと思います。当論文は「人事実務」(2月1日号)に掲載される予定ですので、併せてご参照いただけましたら幸いです。今回のお題はというと、「管理職の役割と評価のあり方」についてです。人材マネジメントの分野においては、相当普遍的なテーマといえるでしょう。そういう意味では年初らしいと言えるかもしれません。内容的には基礎的なものですので、当コラムをご覧いただいている方々にとっては、おさらいのような位置付けになるかと思います。

《マネジメント力低下の要因》

低成長期における組織的命題は、一言でいえば、「限られた人員数で最大の組織力を発揮する」ということになるであろう。それにあたって、管理職の役割がカギであるということはよく言われることである。これはおそらく間違いではないであろう。しかし完全な正解とも言えないと思われる。いずれにしても、昨今は管理職のマネジメント力の発揮が強く求められてきているという状況は確かにある。しかしその一方で、その点こそが逆に弱体化してきているという懸念の声がより多く聞かれる。その要因としてはまず、マネジメント力が養われてこなかった世代が、続々と管理職になってきているという事実がある。これは、人員構成上の問題ともいえる側面である。次に、より多く問題視されている点としては、管理職に要請されることが急激に増え、手が回らなくなったということがある。

(1)バブル世代が管理職に

現在の40代社員の多くはバブル世代である。入社時はバブル経済只中であり、大量採用の中で比較的容易に入社したものの、その後まもなくバブルがはじけ、後輩たちがほとんど入ってこないという状態が何年も続いた。自分が配属された部署に新人が数年間配属されなかったというケースも多くあった。そのような状況では、後輩の面倒を見るという経験をしないばかりか、自分自身の仕事自体、数年間末端の業務からあまり代わり映えしないということも多くあった。通常であれば、チーム内での役割は徐々にレベルアップし、それに伴って成長もし、役割にあった自覚も徐々に芽生えていくという途を辿る。しかし、後輩が入ってこない状況が長く続くと、仕事内容もさほど変わらず、成長の機会も逸し、さらに悪いことには意識レベルも高まらず、主体性が身に付かずに指示待ちのメンタリティーのまま数年間を過ごすことになってしまう。

このように、マネジメントの擬似経験はもとより、後輩の面倒すら見たことのない人たちがここ数年で大量に管理職という立場となった。このこと自体、昇格審査に問題があるわけだが、運用上、年功をベースに管理職へ昇格させている会社は未だ多い。そのように昇格した人たちにとって、配属されてくる新入社員などは20歳も歳の離れた若者であり、コミュニケーションすらままならないことも多い。十分なコミュニケーションをとる自信が持てないまま、部下たちとの距離は広がり、逃げるようにしてプレーヤーに専念してしまうようなことも多くあると聞く。このように、マネジメントが機能するはるか以前のレベルに留まっている状況も一般的に多くある。

そもそも、経営者が管理職に期待するマネジメントとは、どのようなものであろうか。「部下一人ひとりのモチベーションを高め、持てる能力を存分に発揮させ、組織の成果を最大化させてほしい。そしてまた、その過程を通して部下を育成し、人材レベルを高めてほしい」ということになるであろうか。これらは、管理職である以上、当然求められるべき役割とも考えられるが、多くの人にとっては容易なことではないに違いない。実際に、期待と現実との乖離が大きい例は多い。管理職の人たちも、「自分自身もプレーヤーとして成果を期待されている中で、こうした役割を果たしていくことは容易なことではない」との思いは強いであろう。特に、上述したバブル世代など、そうした行動習慣が身に付いていない人たちにとっては、管理職研修を受けたくらいで短期的にできるようになるようなレベルのことではない。ただでさえ、昨今、管理職に要請されることはたいへんに多い。

(2)増え続ける管理職への要請

ガバナンスやコンプライアンス、メンタルヘルス、ダイバーシティー、エンゲージメント等々、カタカナ用語に慣れるだけでもしんどそうな事柄の一つひとつに対して、「中心となって進めていくべきはあなた方管理職ですよ」ということになる。次から次に異なった研修が提供され、人事部門や経営企画部門、内部監査部門などから、様々な書式の提出が求められる。人によっては精神的にも相当に追い詰められ、部下のメンタルヘルスどころではないといった状態も多くあるであろう。

ただでさえ、人材が多様化し、マネジメントが複雑化しているという困難な状況がある。かつては、自分の部下たちは自分と同じ「新卒入社の正社員」という状況が一般的であった。それが今は、キャリア採用社員や契約社員、派遣社員など、部下も多様化してきている。入社形態や雇用形態が異なるということは、キャリア観や仕事上のモチベーションの源泉なども異なるということであり、マネジメントの複雑さは飛躍的に増すこととなる。個人個人を対象とした個別管理の状況にごく近くなる。

加えて、成果主義的人事ということも、マネジメントの困難さを増している一つの要因としてある。成果主義の下では一般的に、成果を適正に評価し、それを本人へフィードバックするというプロセスが必要となるが、これは熟達した管理職であってもそう簡単なことではない。そもそも成果主義以前の評価は、能力や態度など曖昧なものであり、フィードバックといっても「まあまあよく頑張っている」という程度のことを伝えれば用は足りた。実質的に評価は存在していなかったといってもよいかもしれない。それが、成果が処遇に結び付くという仕組みとなり、急に真剣勝負の場へと変わった。納得性高くフィードバックを行うということは、多くの管理職にとって自然にできるようなレベルのことでは到底ない。これを未熟な管理職に求めようというのは、相当にハードルの高いことであり、そういう覚悟のもとに十分な手を打っていく必要がある。(つづく)

この記事につぶやく

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

サービスに関するお問い合わせ・ご相談はこちらまで

お問い合わせ

人事に関する情報が満載メールマガジン配信中

メールマガジン登録