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  4. 【コラム】第30回 評価者教育について
コラム

評価者教育について

前回と打って変わって、急に具体的なテーマとなりますが、実はこれは産労総合研究所の人事関連情報誌「企業と人材」の取材を受けて話した内容です。ここのところ弊社では、有り難いことにプロジェクトがたいへんに立て込んでおり、このコラムも滞りがちであり、最新人材マネジメント情報の方はさらに激しく滞っており、おまけにスタッフブログの方まで更新が進んでいない状況が続いています。定期的に閲覧いただいている方々には、たいへんご迷惑をお掛けしております。

さて、以下の内容が編集されたものは、「企業と人材」(産労総合研究所)の12月20日号に掲載される予定です。併せてご参照いただけましたら幸いです。

評価者研修については、近年、より積極的に取り組む企業は増えてきているように見受けられる。それは、評価の納得性が高まらないことの裏返しでもある。「評価の納得性が高まらず、従業員のモチベーションが高まらない」という場合、「問題は評価にある→評価者研修が必要である」となることが一般的に多い。しかし、まず考えなければならないことは、この論理展開、結論付けが正しいのかどうかである。

評価者研修が必要ないとは言わない。評価制度を正しく理解していなければ正しい評価はできないので、評価者研修はおこなわれるべきである。しかし、それだけで評価の納得性が高まるということはない。目指すべきは「正しい評価」か「納得性の高い評価」か。評価というものは、厳密に正しい評価というのはあり得ず、従業員のモチベーションから考えても、目指すべきは、「被評価者にとって納得性の高い評価」であると考えられる。

そう考えた場合、評価者研修だけおこなっていても目的は達成できない。評価の宿命として、上司の評価は自己評価よりも低くなって当然ということがある。誰しも自己評価は過大評価になる。たとえば、良く言われる喩えとしては、本来の結果が100であるとし、自己評価は+25くらいであり、他者評価は-25くらいとなる。この場合そのギャップは50にもなる。結局、誰にとっても多かれ少なかれ心外な評価結果となることは間違いない。それを評価やそのフィードバックという一時点を持って納得性を得られるはずはないのだ。

評価結果に納得する場合というのは、何をもって納得するのであろうか。「この人が言うならしょうがない、この人は自分のことをよく分かってくれている」という思いなしには到底無理であろう。そのためには、「一期を通して観察し、対話し、支援し続けること」が不可欠である。結局、日々のマネジメントをきちんとやることなしには、評価の納得性は高められない。日々のマネジメントがきちんとできていれば、評価の時点までに、すでに納得性は確保できていることになる。逆に、それなくしては、どんなに厳密な評価をおこなっても、納得性を得ることはできない。そもそも、日々のマネジメントなくしては必要な情報も収集できず、評価をおこなうこと自体不可能である。

「適正な評価をおこなうことに集中するのではなく、適正な評価が可能な状況をつくることに集中すべき」ということが言える。

これはモチベーション理論からも説明できる。結果に対する公平性である「配分公平性」 と、プロセスに対する公平性である「手続き公平性」という考え方がある。仮に、ある一定期間の「結果」に対する公平性が損なわれても、「プロセス」における公平性が保たれていれば、モチベーションは維持されるとされている。なぜなら、プロセスを公平に進めることで、当人が、自分が認められ、尊重されているという思いが得られるからである。特に評価において重要なことは、「結果」に対する公平性を完全に担保することはできないが、「プロセス」に関しては必要なプロセスを描き、やろうと思ってやりさえすれば確実に達成することができるという点である。

私共は、人事施策全般において多く見られる過ちを「イベントアプローチ」と呼んでいる。「従業員が育たない、モチベーションが高まらない」といった場合に、Off-JTや評価、表彰、インセンティブ、全体ミーティング、イベントなどの単発的な機会・行事を通じて改善・改革をしようとする方法である。それぞれに意味合いはあるが、人や組織という対象は長期性の高い対象なので、より中長期的な施策との組合せでないと効果は一過性に終わってしまう。これに対し、お勧めしているのが「プロセスアプローチ」というものである。プロセスを重視し、日常の活動の中で改善・改革をしていこうとする方法である。単発で終わるものではないので、根気強い取り組みが求められるが、プロセスを改善しない限り何事も変わらないということも事実である。

以上のような観点からすれば、評価者研修をおこなうことによる弊害にも気をつけておく必要がある。評価者研修をおこなうことにより、その一事に集中してしまい、それだけきちんとやればいいのだという思いから、それまでのプロセスをおざなりにしてしまう危険性がまずある。加えて、「評価者」という言葉をすり込むことで、自分は「評価を下す人」という勘違いが生まれてしまうということもある。これもプロセスではなく、結果に意識を向けてしまう一因となる。本来は「評価を下す人」ではなく「育てる人」であるべきだ。そういう観点からすれば、本来は、「評価者研修」ではなく「育成者研修」という呼び方をした方がいいのかもしれない。育成の一つの手段として、評価という行為があるという位置づけをよりクローズアップすべきである。

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プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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