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  4. 【コラム】第29回 「幸福度」について
コラム

「幸福度」について

最近、「幸福度」ということについての関心が高まっている。いくつかの世界的調査において、国別の幸福度ランキングなるものが発表されていることが一つの要因であろう。また、それと共に、いくつかの調査で幸福度1位に選ばれたデンマークに学ぼうとする風潮が高まっており、日本においても関連の書籍が数冊出版されているほどである。

もう一点、「幸福のパラドックス」という現象が日本人にとって現実感を伴っていることが、関心の高まりを後押ししているものと思われる。「幸福のパラドックス」とは、「物質的な豊かさは、人々の幸福をもたらさない」という説だ。日本は経済大国ではあるが、幸福度ランキングでは常に低迷している。ただし、この傾向は日本に限らず、他の先進諸国でも同様に見られるという。よって、1人当たりGDPと幸福度には相関は見られず、経済的には貧しいが、日本や他先進諸国よりも幸福度が高いという国はいくらでもある。

国際非営利調査機関「ワールド・バリューズ・サーベイ」は、世界97カ国・35万人から集めたデータを分析し、幸福度ランキングを発表している。その調査結果によれば、首位のデンマーク以下はプエルトリコ、コロンビア、アイスランド、北アイルランドと続き、アメリカは16位、イギリスは21位。その他は、ブラジル30位、フランス37位、日本43位、中国54位、韓国62位、インド69位、エジプト74位、ロシア89位、イラク92位、最下位は独裁政権が続いているジンバブエだった。また、英レスター大学が、これとは全く異なる手法で行なった調査でも、上位10カ国はほぼ同じ顔ぶれであり、1位は同じくデンマークであった。

デンマークが「幸福度」において、なぜこれほど図抜けているのであろうか。BusinessWeek誌はその理由を、経済力と社会福祉の絶妙なバランスにあると指摘している。「高税率と積極的な富の再分配によって、医療や年金、質の高い教育といった充実した社会的セーフティーネットを維持している。これらが、経済成長や成功への意欲を阻害することなく機能させている点が画期的なところである。」(BusinessWeek -2008年8月-)。これらのことから、同国は正しい対策を行っているに違いないとでは結論づけている。

さて、日本の状況であるが、平成20年度版の国民生活白書の中でも、「幸福のパラドックス」に関わるデータが報告されている。1987年以降、2005年まで、「1人当たりGDP」は概ね右肩上がりの傾向を示ししている一方で、「生活満足度」は右肩下がりの傾向を示しており、矛盾した状況は年々拡がりを見せている。

この他にも、「幸福度」という新しい指標を用いることで、一見矛盾するような、ある意味示唆深い結果が得られることがある。雇用形態別の幸福度なども、その一例だ。正社員は、派遣社員よりは幸福度が高いが、契約社員やパート・アルバイトよりは低くなっている(みずほ総研 -2009 年9月17日-)。従って、「雇用の安定性」や「収入」は、必ずしも幸福度につながっていないとも取れる。これは、「労働時間」の長さが災いしていることが一つには考えられる。「労働時間」は、幸福度と負の相関のある要素となっている(国民生活白書 -平成20年度版-)。

一方、比較的理解し易い結果となることもある。性別・年齢別の幸福度を見てみると、男女の差が最も大きいのは50代、ついで40代、もちろん女性の幸福度の方が高くなっている。しかも、男性の中でも、50代と40代は最も幸福度が低い層となっている。これらのことから、まずは仕事上のストレスの大きさが窺えるであろう。

日本という国について、一番の問題であると思われる点は、先に挙げた国民生活白書の中で報告されている、年齢と幸福度の相関についてである。日本では、年齢の上昇と共に幸福度が右肩下がりに低下していく傾向にある。他の多くの国が熟年層を底に右肩上がりのU字型の傾向を示すのに対し、日本は67歳を底にしたL字型に近い形状となっている。年齢が増すと共に幸福度が低下していくというのは、いかにも将来に希望を持てない傾向である。この点をどうするかが、政治の焦点となって然るべきであろう。

BusinessWeek誌のウェブページに、「幸福度」上位国のスライドーショーが掲載されている。そこにあるコメントとそれぞれの写真から醸し出される雰囲気によって、「幸福度」上位の理由が分かるような気がする。
(http://images.businessweek.com/ss/08/08/0819_happiest_countries/1.htm)

「重要度が増す『幸福度』研究」みずほ総合研究所2009/9/17
 「世界の幸福度は向上~国別ランキング調査」BusinessWeek 2008/8/20(日経ビジネスオンラインより)
「国民生活白書 -消費者市民社会への展望-」平成20年度版

 

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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