1. トップページ
  2. インフォメーション
  3. コラム
  4. 【コラム】第25回 フィードバックについて
コラム

フィードバックについて

弊社は、企業内における「フィードバック」というものを一つの専門分野としている。最も多いものは、ある人に対して周囲の人たちからアンケート形式で提供する360度フィードバックというものであるが、それ以外にもフィードバックのあり様は多様にある。エグゼクティブコーチング時におこなうヒアリング形式でのフィードバックもあれば、もちろんより日常的には上司から部下への直接対話としてのフィードバックもある。

フィードバックの中身も様々ある。日常的な行動に関するフィードバックもあれば、一定期間の目標達成行動についてのフィードバック、所属する職場の状況に対するフィードバックもある。また、四半期ごとの業績データ等、業績結果もすべてフィードバックである。この他、組織に対して何か情報発信をしたことに対する関係者の反応や、商品やサービスに対する顧客満足度データなどもそうである。

フィードバックはもちろん企業内だけのものではない。世の中はフィードバックに満ち溢れているといっても過言ではない。子供の躾もフィードバックの連続である。良いことは良い、ダメなことはダメと、逐一のフィードバックをすることになる。幼い子供の場合、興味の赴くままに行動をするわけなので、そうしたフィードバックがなければ、社会生活に適応するための常識や礼儀を習得する術はない。

筆者自身も日々妻からたいへん微に入り細にわたるフィードバックをもらっている。お小言ともいうが、おそらく私の行動の至らぬ点を改善するようアドバイスをくれているに違いないのだ。有用なフィードバックというものは、決して耳に優しいものばかりではない。残念ながら、これまでのところあまり前向きには活かせてはいないのだが。

スポーツの監督やコーチが選手を指導するのは、非常に分かりやすいフィードバックの場面である。動作のどこが改善の余地があるのか、どのようにすればさらに良くなるのか、フィードバックを与えることが仕事そのものである。プロ野球楽天の野村監督は、試合中でもベンチで選手を立たせて長々と説教することが多いが、即その場でフィードバックした方が有益であると分かっているからであろう。

本来、企業内におけるマネジャーの役割も同様に、部下にフィードバックを与えることのはずだが、年々この役割が希薄化してきているという。もちろん簡単なことではない。きちんと見ていなければフィードバックはできない、どうすればよいか自分で分からなければフィードバックはできない、また、前向きに受け止めてもらえるようなフィードバックをおこなう自信がなければやはりできないであろう。

フィードバックをくれるのはなにも人間だけではない。銀行のATMなども、カードを取るのが少し遅れると、たいへんけたたましいフィードバックをくれる。また、最近は素人でも写真がうまく撮れるようになったといわれるが、これはデジカメがその場でくれるフィードバックのおかげである。撮影状況を液晶画面で確認し、うまく撮れていなければ撮り直しができるからだ。即時のフィードバックが得られることで修正が掛けられる例である。

デジカメが一般に普及し始めたのは2000年以降のことで、それ以前にフィルムをセットして撮っていた頃は、上出来の写真は24枚撮りフィルムで数枚あればいい方であったかもしれない。現像後に見てみたら、ブレていた、暗すぎた、指が写っていた、目をつぶっていた等々がごく普通にあったように記憶している。それが今では即時のフィードバックにより、気に入らなければ削除して何度でも撮り直しができる。

以上のように、世の中には様々な場面において多様なフィードバックが溢れている。ポジティブなフィードバックばかりではないが、フィードバックなしでは決して改善はあり得ないことは確かであろう。たとえば、営業活動をしているとして、客のバイヤーはロボットであり、表情無くただ聞いているだけで商談は終わり、その結果は会社には知らされても本人には知らされないとしたら。いったい何を頼りに自分の営業方法や営業トークを改善できるであろうか。

社内でも、周囲の人たちが皆無表情で、自分が何を言っても淡々と聞いているだけであったとしたら。自分の言動が良いのか悪いのか、意味があるのかないのか、判断のしようがないであろう。実際には、無表情で淡々と聞いている、ということ自体がフィードバックであり何らかのメッセージを発しているのであるが、このように、組織内のフィードバックの多くは、必ずしも見えやすいものばかりではない。

では、どんなフィードバックが有効なのであろうか。改善のためには、まずは現時点を教えてくれるもの、そして今後の方向性を示してくれるものとなるであろう。そして、できるだけ客観的であり、具体的であり、改善可能な点に関するものが望ましいであろう。筆者が日々妻からもらっているフィードバックが有効に活かせていないのは、客観性が薄く、具体性に乏しく、そもそも改善可能ではない点に向けられたフィードバックであるからということになるであろうか。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

サービスに関するお問い合わせ・ご相談はこちらまで

お問い合わせ

人事に関する情報が満載メールマガジン配信中

メールマガジン登録