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  4. 【コラム】第24回 〈番外編〉「オズの魔法使い」に学ぶ
コラム

〈番外編〉「オズの魔法使い」に学ぶ

ここしばらく、堅い内容のものが続いたので、このあたりでまた番外編を挟みたいと思う。筆者にはもうすぐ5歳になる子供がおり、先日、「飛行船」という劇団が演じる「オズの魔法使い」のマスクプレイミュージカル(ぬいぐるみ人形劇)なるものを観に連れて行った。子供向けの劇なので大人が見てそれほど面白いものではないが、久しぶりに「オズの魔法使い」のストーリーを思い出してみて、いくつか興味深く思うところがあった。

小学生の頃に読んだ「オズの魔法使い」の物語を、忘れていたというよりは、思い起こす機会がなかったまま30年以上の年月が経ち、再び思い出してみると、当然ではあるが、小学生の頃にはまったく考えもしなかったいくつかの教訓めいた点に気づき、興味深く思った。余計なことを考えずに素直に楽しめる心がなくなった、といえばその通りかもしれないのだが。多くの方はご存知であろうと思うが、「オズの魔法使い」とはごく簡単に説明すると、以下のようなストーリーである。なんとなく「桃太郎」に似ているが、実際、アメリカでは日本での「桃太郎」くらいに、子供たちに深く親しまれている物語であるという。

カンザス州に暮らす少女ドロシーは竜巻に家ごと巻き込まれ、愛犬のトトと共に不思議な「オズの国」へと飛ばされてしまう。故郷カンザスヘ帰るためには、エメラルドの都に住むオズの魔法使いに会いに行かなければならない。向かう途中で、脳の無い案山子・心の無いブリキの木こり・勇気の無いライオンと出会い、それぞれの欠けているものを手に入れるという願いを叶えてもらうため、一緒にエメラルドの都を目指す。旅の途中で様々な苦難に遭遇しながらも、なんとか克服し、邪悪な西の魔女も退治し、オズに会うことができた。ところが、大魔法使いであるはずのオズは、奇術師の操縦する人形であった。いったんはがっかりする一行であったが、奇術師は彼らに言う、「案山子は旅の困難を切りぬけようと頭を使い、ライオンは危険に立ち向かい、ブリキの人形はドロシーの運命に涙を流した、だからすでに願いは果たされた」。

人事・組織マネジメントの観点からいうならば、この物語には3つの重要なメッセージが含まれていると思われる。

一つは、「強みも気づかなければ強みとはならない」ということである。案山子も実際には知恵があり、ブリキの木こりにも思いやりがあり、ライオンにも勇気があった。しかし、当人たちはそれが無い、欠けていると思い込んでいた。実際に強みではあっても、それを発揮するチャンスがなく、強みであるという認識がないままでは、強みとして発揮されることはない。そして発揮する機会がないままの状態を長く続けていると、そういう資質が自分には欠けている、と思い込んでしまうかもしれない。そして、いったんそう思ったものは、自己暗示も手伝い、ますますその思いを強くしてしまうのかもしれない。

何らかのきっかけを得てやってみたら自分で思った以上にできた、という経験によって自信がつき、強みになったという経験をお持ちの方もおられるであろう。たとえば、仕事上で、「関係部署への根回しや巻き込みなど、やったこともないし、なんか苦手だなぁ」と思っていたとしても、そうした役割を与えられ、やってみたら意外にもうまくできて、上司にも初めてにも関わらず首尾よく進んだことを褒められたりすれば、途端に、自分はこういうことに向いているのかもしれないと思い、それ以降一つの強みとなるというようなこともあるではないだろうか。

そして二つ目は、「プロセスが大切」ということだ。三者ともに、オズの住むエメラルドの都を目指す旅の途上、苦難に立ち向かう中で、知恵を絞り、思いやりを発揮し、勇気を振り絞った。その結果、エメラルドの都に着いた時にはすでに欲しいものを手に入れていた。目標に到達するかどうかは結果であり、結果ばかり気にしても仕方がない。目標到達へ向けてのプロセスに専念することこそが重要である。自らの成長ということを考えるのなら、なおさらそうだ。何かうまい方法を見つけて、たまたま楽をして目標を達成することができたとしても、そこから成長することはない。メジャーリーグのイチロー選手もプロセス重視の典型だが、「打率は割り算の結果なので自分ではコントロールできないが、毎試合一本一本ヒットを重ねるということには集中できる」ということを常々語っている。

読書においてもプロセスが大切ということが、先日読んだ日経ビジネスオンラインの記事の中にあった。興味深いので引用させていただく。「人は本を読むことで成長するなどと言うが、それは必ずしも、なにが書いてあったかという内容のおかげで成長するのではない。本を読むという体験のさいちゅう、あなたは日常とは違った時間を生きている。そのことであなたは成長したのだ。」「本になにが書いてあるか、その内容だけが大事なのだったら、だれかに読んでもらって要旨を話してもらえばいい。しかしそのとき、その「要旨」はあなたを変えはしない。読書で大事なのは結果ではない。読書は過程にしか存在しないのだ。」(毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド‐千野帽子)こういう考え方からすれば、速読術などはナンセンスであることがわかる。

最後に三点目として、おそらく最も大きなメッセージであると思うが、「協働」の重要さである。力を発揮するためには「仲間が必要」ということとも解釈できる。ドロシーがいかに気丈な女の子であったとしても、一人では西の魔女を倒すことはできなかったであろうし、桃太郎がいかに屈強な男児であったとしても、一人では鬼退治はできなかったであろう。一人の力では無理ということではなく、一人の力でダメなものは四人の力になったとしてもダメかもしれない。そうではなく、四人になったことで、それぞれが一人以上の力を発揮し、相互作用によってチームとして何倍もの力を発揮することで初めて可能となるということではないだろうか。仕事にあたっても、自分のため、自分のキャリアのため、ということではなく、社会のため、お客様のため、苦労を共にする仲間のため、という思いで職務に取り組めた時にはじめて、本来の力、あるいは本来以上の力を発揮することができるのではないだろうか。

「人は誰かのために何かをしようとした時に、本来以上の力が発揮できる」ということはよく言われることである。ちょっと話が飛躍するが、「誰かのために命をかける」ということで思い起こされる歴史上の話がある。明治維新期の西南戦争でのこと。政府軍の総指揮を執った山縣有朋は西郷軍の強さを目の当たりにし、強い軍隊をつくるためには、近代的な装備ばかりでなく、「命を捧げるための権威(シンボル)」が必要であることを学んだ。これが「朕は汝ら軍人の大元帥なるぞ」という軍人勅諭となり、日本軍は「天皇の軍隊」となったのである。それまで公家の代表者としてのイメージの強かった天皇の姿が、西南戦争を境に軍服姿で描かれることが多くなった。

と、こんなことをつらつら考えながら観ていたら、案の定寝てしまい、カーテンコールでようやく目が覚めた。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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