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  4. 【コラム】第22回 ダイバーシティーマネジメントの迷走
コラム

ダイバーシティーマネジメントの迷走

ここ数年、日本企業では矢継ぎ早に様々な人事的施策を打ってきた。矢継ぎ早にといっても計画的にという感じではなく、どちらかといえば拙速に、場当たり的にといった印象が強い。そうした場合、当然のこととして、中途半端に置き去りにされるようなことが多くなる。「ダイバーシティー」に関する取り組みもその一つではないだろうか。

「ダイバーシティー」に関しては、おかしなことに、多様化を目指す取り組みであるにもかかわらず、進むにつれてなぜか画一化の方向へ向かっていることが多いように思われる。ダイバーシティー推進室なる部署がつくられ、「さて何をしようか?」と手段をあれこれ考えていくうちに、目的からどんどん離れ、気が付いてみると「こんな所へ来るはずじゃなかった」というようなことも多いようである。

そもそも、当初から目的が明確でないことも多い。ダイバーシティー宣言やマニフェストの中には、「性別に関わらず同等の機会を・・」と今更ながらに謳っているものもあれば、「ダイバーシティー推進の活動を通して自社ブランドのイメージ向上を図り・・」と本音が覗いているものまである。そもそもは、働き手不足解消のために女性の戦力化を図ろうという経営目的から出たものである。数年前から一斉に始まったダイバーシティーの大合唱が、昨年後半以降すっかり影を潜めていることからもこれは自明といえる。そうしたことが分かっているので女性社員の方はしらけているという構図だ。

日本においては、「ダイバーシティー」は「女性活用」と同義に使われることが多いわけだが、それにしてもこの「女性活用」という言葉はひどい。女性社員に対してひどいばかりではなく、ビジネス上の言葉としても相当に品性を欠いている。メディアがある種の揶揄を込めてそう言うのならまだ分かるが、企業の中において、「女性活用プロジェクト」や「女性活用推進チーム」等の命名をしてしまう感覚はどういうものだろうか。思考停止状態の中高年男性がこうした命名をし、メンバーなどに選ばれてしまった女性社員たちが「やれやれ」と思っている状況が目に浮かぶようである。

そもそも「女性社員も男性社員と差別なく同じように」というゴール設定自体ずれてはいないだろうか、少なくとも一面的過ぎないだろうか。そうしたいと思っている女性もいるであろうが、「子育てしながらほどほどに仕事を続けていきたい」と思っている人もいるであろうし、男性社員と差別なくとはいっても、深夜残業や休日出勤、得意先の接待などは御免被りたいと思っているキャリアウーマンは多いであろう。従って上記のゴール設定は男性の勝手な思い込みである可能性が高い。中高年男性などは、女性活用と聞いた瞬間に雇用機会均等法を連想するために、こうした思い込みに走るのであろう。

その結果、「女性管理職比率○%以上」とか、ロールモデルをつくり上げ、「皆でロールモデルを目指しましょう」というような誠に画一的な取り組みとなってしまう。ロールモデルを掲げたところで、誰もああいう風にはなりたいとは思わない、というケースも多いと聞く。つまりは、押し付けであってはすでに多様化の方向に反しているのだ。また、ダイバーシティー推進室のメンバーが皆女性であったり、研修講師もセミナー等のパネラーも皆女性であったり、その段階ですでにダイバーシティーに反してはいないだろうか。“偽善”という言葉がどうしても頭をかすめてしまう。

そもそもは、多様性、異質性を認める、様々なあり方を認める、ということであるから、それは女性だけに焦点を当てておこなわれるべき取り組みでは本来ない。ましてや、「女性の男性化」であろうはずがない。男性でも多様な人材がおり、異質性も大いにある。男性でも子育てに十分な時間を割きたいという人もいるであろうし、週休3日で趣味を充実させたいという人や、年間一ヶ月くらいはボランティア活動に費やしたいという人などもいるであろう。かつてのように大半の人が一律的な企業内出世を目指すあり方ばかりではもはやないのだ。

山田久さんが、近著「雇用再生(日本経済新聞出版社)」の中で、「正社員の多様化」ということに触れ、「現在の正規・非正規の区分をいったん白紙にした上で、従業員を職務内容と技能レベルによって分類された、多元的な人材タイプに再編する必要がある」と述べておられる。たしかに、大卒男性正社員という集団の均質性があまりにも強いがゆえに、多様性がなかなか進まないという側面があると思われる。ダイバーシティーマネジメントにおいても、男性・女性という分け方から入るのではなく、社員をタイプ分けし、男性でも女性でも、外国人でも、身体障害者でも、自分に合った働き方ができるという方向が本来向かうべき方向に違いない。

こうした「分断と統合」ということに関する、より高尚な話を聞かれたい方は、ぜひ下記にご参加ください。ダイバーシティーそのものに関する話ではありません。もっと広範囲に渡る今後の人事の話です。(2009 JSHRMコンファレンス

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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