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  4. 【コラム】第21回 「世代」の違い
コラム

「世代」の違い

少し広めの視点から人事・組織を論じたいと思い、メルマガ上での当コラムのサブタイトルは「社会学的人事組織論」としていましたが、久しくそうした内容からは遠のいていたことを反省し、今回はそうした観点のものを書くこととします。

どうしても私ども人事・組織コンサルタントなどは、企業内で起こっている問題を企業内だけを見て解決しようとしがちである。しかし、企業社会と言われるとおり、企業は社会を構成する重要な一員であり、また、企業も当然ながら社会状況や社会思想の影響を大きく受ける。メンタル上の問題やコミュニケーション、モチベーション、離職等、企業内で生じるたいていの問題は社会の影響を受けている。それがゆえに、企業内だけを見ていても本質的なソリューションを導き出すことは難しい。

そこで今回取り上げたいのは、「世代」というものについてである。企業内でコミュニケーションギャップが生じると、一般的には年齢的なギャップによるもの、あるいは組織階層間のギャップによるものと解釈される。一つ例を挙げるなら、40代前半の社員と30代前半の社員との意見の食い違いは、比較的多発しているように思われる。40代前半といえば課長などミドルマネジャー層にあたるケースが多い。一方、30代前半は各ラインの主担当者やリーダーといったあたりであろう。この両者間でのコミュニケーションギャップは、言うまでもなく組織全体にとっても極めて大きな影響をもたらす。

こうした意見の食い違いが生じた場合、一般的に、30代前半の社員は上に対して「課長は頭が固い」とか「方向性が見えない」などと言い、40代前半の社員は下に対して「彼らは考えが甘い」とか「何を考えているのか分からない」などと言ったりする。これらは年齢的な観点を念頭に置いて言っていることである。しかし実際のところは、年齢というよりもむしろ「世代」という要素の方がコミュニケーションにおいてより影響が大きいと考えられる。「世代」という言葉は、日本では「団塊の世代」という言葉として、アメリカでは「Y世代(ジェネレーションY)」という言葉として多く使われてきたが、同じ時期に生まれた集団のことである。同じ社会環境を共有して育ってきた集団は、同様の価値観、思考様式、行動様式を持っているとする考え方である。

この「世代」という考え方からすれば、ミドルマネジャーの多くを占める40代前半という「世代」は(筆者自身この世代だが)、「バブル世代」と呼ばれ、高度成長期に子供時代を過ごし、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代に高校・大学時代を過ごし、バブル真っ盛りに就職している、比較的おめでたい世代である。就職は完全な売り手市場の中、たいていは大した考えもなく有名企業や給料の良い会社へと就職していった。しかし、入社後ほどなくバブルがはじけ、後輩は入って来ないし、企業内教育も滞り、成長の機会を逸してきたケースも多い。

一方、30代前半の人たちは「ポスト団塊ジュニア世代」と呼ばれ、就職にあたってはバブル世代とは真逆であり「就職氷河期世代」とも言われる。就職にあたっての危機感の強さから大学でも目的意識をもって学び、しっかりとした心構えを持って厳しい競争を勝ち抜いて就職をした世代である。また、就職期に企業は中高年のリストラを加速させており、父親世代やさらにその上の世代である、会社一辺倒の人生を歩んできた人たちが会社の都合で会社を追われる状況を目にして、働くことの意味を見出せずにフリーターになった人も多く出たという見方もある。いわゆる「ナナロク世代(1976年前後生まれに人たち)」もこの世代に入るが、この世代からネット起業家を多く輩出したのも、会社に頼らず自らの手で切り拓いていこうとする志向性の表われと考えられる。企業の中においても、会社への愛着心は薄いながらも、自律的であり変化を恐れない世代である。

このように、育ってきた環境が異なることで、まったく違った職業観や考え方を持つに至っており、意見が表面的に食い違うのはいわば当然ともいえる。考えの背景が異なるので、相互に「話が通じない」との感想を持ちがちであるが、一歩踏み込んで拠って立つ理念や価値観を理解し合うことができれば状況はだいぶ違ってくる。本来はそうした異質な考え方の融合こそが新しいものを生み出す基となる。お互いの世代を理解することは、コミュニケーションのベースをつくるうえで重要なことだが、これはフォーマルな場ではなかなか難しい。ノミニケーションの機会の減少とともに、こうした点の理解も薄れ、それがさらに世代間のコミュニケーションギャップに拍車を掛けている可能性が高い。

ちなみに、現在という時代が、先が見えずこれまでの延長線上にない変革が必要であり、勇気を持った意思決定や、強力なリーダーシップが必要な時代であるとするならば、「ポスト団塊ジュニア世代」の活躍の好機とも考えられる。しかし、「バブル世代」が年齢的にも組織内で権力を志向したり、思考が硬直的になりがちであるなど、下の世代を押さえつけている可能性もある。実際に、変革を主導しうる優秀な若手・中堅人材が、十分に実力が発揮できていない状況がまま見受けられる。ベンチャー企業などで平均年齢が若く、管理職もほとんど30代という中で順調に伸びているのは、時代と年齢と世代とがうまくマッチしているからなのかもしれない。伝統的な企業においても、時代状況によっては、適している世代を活躍させるために抜擢したり、権限委譲したり、場合によっては上の世代の介入を抑えたりという組織マネジメントが、全体的な観点から必要となってくるものと考えられる。

同世代とはいえ、バブル世代について少々言い過ぎたかもしれません。同世代の皆様方からのご批判を受け付けます。

 

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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