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  4. 【コラム】第18回 四十の手習い
コラム

四十の手習い

今回は、ある写真に刺激を受けて、またも番外編としてこういうテーマとなっています。ある写真というのは、かつての職場の同僚であった、某女史のバレエの発表会での記念写真です。私と同世代の彼女は、ご主人の仕事の関係で昨年までしばらく日本を離れており、海外の地で3年ほど前にバレエを習い始めたそうです。帰国後もバレエを続け、今回の写真を見るに、いかに本気で取り組んできたかが窺われます。この写真は(もちろん良い意味で)たいへん衝撃的なものでした。「歳を重ねただけで人は老いない 夢を失ったときはじめて老いる」(サミュエル・ウルマン)という言葉が画像となって突きつけられたような感覚を持ちました。圧倒されるような強い力を放っているのです。

40代という年代に対して「老い」だのというのは多少大袈裟な感じはしますが、30代までとは違い、40代になると印象面での多様性は途端に増すように思います。一気に老け込む人と、あまり変わらない人、逆に若返る人など様々です。ものの感じ方や考え方など、内面の変化による違いなのでしょう。企業の中でも中間管理職になるこの年代の人たちから受ける印象は、やはり人によってたいへん多様です。カチカチに硬直化してしまっている人と、非常に柔軟であってまだまだ成長余力のありそうな人とがいます。同じ年齢であっても、まったく異なります。企業という組織の中において、いったい何がこのような差をつくるのでしょうか。

いろいろな会社の様々な方々を見ていて一つ言えることは、個人差もさることながら、会社によっても、柔軟な人が多い会社と硬直的な人が多い会社とは確かにあるようです。一つには、人材は上を見て育つわけなので、上の人のビヘイビアが下へと受け継がれ、組織全体に波及しているということは大いにあると思われます。仮に、上の人に不遜な態度をとる人が多ければ、下の人にも知らず知らずのうちにもそうしたビヘイビアが身についてしまうことにもなるでしょう。そう考えると、組織の風土というのは、その組織の主たるメンバーの態度や振る舞いによって形成されているといっても過言ではないように思います。

特に、部門トップや影響力の強い立場の人のビヘイビアは、組織に大きく反映されます。最近では珍しくなってきましたが、絶えず怒声を発しているような人がトップにいるような場合、あちこちで怒声が聞こえてくるような職場になりがちで、あたかもそうした振る舞いが格好いいかのような雰囲気さえできるものです。かつてある金融系の会社で実際にそういう状況がありました。一方、トップが面倒見の良い、部下の話をよく聞くタイプの場合には、そのようなタイプの人材が増えることになるでしょう。

さて、次に個人差の方ですが、管理職になるなど組織の上の方になるにつれ、偉くなったと勘違いするような人はまず硬直化タイプまっしぐらといえます。偉くなったというのは、組織上の役割としてマネジメント比率が増えたということであって、学ぶことがなくなったということとはまったく異なります。逆に、責任が増すのに伴い、信頼され、尊敬されるようにさらに精進していかなければならないはずです。成長が止まったまま、ポジションだけが上がっていくというのは非常に恐ろしいことで、こういう人たちが増えれば組織の崩壊を生みかねません。

日本人に一番欠けているのは「ノブレス・オブリージュ」であると、ある経済評論家の方が言われていましたが、確かに日本の社会道徳にはこうした考え方がまったく根付いていません。この日本語化しづらい「ノブレス・オブリージュ」とは、「高い地位や身分に伴う義務」のことで、身分の高い者はそれに応じて果たさなければならない社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観です。アメリカなどで、裕福な人たちがボランティア活動や寄付をすることは当然とされているのもこうした考え方によるものです。

日本では国の政治や行政を司る人たちの振る舞いを見ても、この点は悲しくなるくらいに欠如している人が多いようです。社会道徳として根付いていない以上、企業の中においては企業文化として根付いていなければ、こうした立場に応じた正しい自覚を皆が持つという状態を実現することは難しいでしょう。立場に伴う責任や義務の自覚は薄いまま、権限ばかりが意識されるということにもなりかねません。「ノブレス・オブリージュ」的な企業文化をつくるうえでは、バリューや求める人材像を示すことや、選抜・登用を適正に行うことも不可欠ですが、最も重要なことはやはり、上に立つ人が身を持って自覚を示すことです。

話を冒頭に戻しますが、人は何歳まで成長、進化できるのか。詰まるところ年齢に拠らずということになるのでしょう。自分自身で成長はここまで、と思った時点で成長は止まるに違いありません。そこからは老いる一方です。体の方が柔軟性を失う以前に、精神の方が先に柔軟性を失うことも多いのかもしれません。冒頭のバレリーナに触発されてか、弊社のある同世代の女性社員も、もう少し暇になったらフラダンスを始めたいと言っています。会社としてもこうした課外活動を推奨し、組織としての若々しさも維持していきたいものです。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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