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  4. 【コラム】第15回 突破できなかった「二つの壁」(1/2)
コラム

突破できなかった「二つの壁」(1/2)

今回は、人事・組織上の何らかの取り組みをしようとした場合に、ことごとく立ちはだかる「二つの壁」について述べたいと思います。これらを突破しないことには、どんな取り組みも奏功しません。何かを実施しようとする場合、この二つをどう突破するかをまず最初に考える必要があります。しかし、この点をなおざりにしたままに進んでしまっているケースも多く、それゆえ、企業内における人事・組織上の取り組みの多くは、当初の狙いを全うすることなく形骸化してしまうケースがたいへんに多いわけです。逆に言えば、難題ではありますが、この「二つの壁」を突破する手立てを講じることができさえすれば、その取り組みは必ずや効果を挙げるのです。「二つの壁」とは、「2:6:2の壁」と「継続性の壁」です。

まずは、組織の宿命としての「2:6:2の壁」について述べたいと思います。これは至るところに壁を作ります。たとえば、組織にバリューを浸透させようとした場合、または何らかの方針を徹底させようとした場合など、ことごとくこの壁に阻まれてしまいます。これらのケースで多く取られる方法としては、課長クラスなどミドルマネジャー層に対してまずは周知をし、ミドルマネジャーを介して組織全体へ浸透・徹底させていくという方法です。大きな組織になればなるほど、こうしたピラミッド型をイメージした伝達方法を取らざるを得ない面も確かにあります。しかし、結果はほとんどの場合、当初の狙い通り組織の隅々まで浸透するという状況には行き着きません。

なぜならば、同じことを伝えても、ミドルマネジャー一人ひとりの理解は異なり、その背景や目的まで含めて発信者と同等の理解ができる人はそんなに多くはないからです。2割、3割という割合でいればいい方でしょう。また、部下の人たちへの伝達能力という面においても同様のバラツキがあります。会社からの伝達内容を正確に理解できたとして、それを下へきちんと伝えられる人もそれほど多くはありません。こうして、正しく受け止め理解して、正しく伝達、説明できる人となると、全体の数パーセントということになってしまうのです。そして、こうした割合での浸透の場合、効果はすぐに薄れてしまうことになります。

こうしたことは人材マネジメントのあらゆる面において言えることで、若手人材が育たない、モチベーションが高まらない、離職が増加傾向にある、メンタルヘルス上の問題が頻発している等々、こうした問題が発生した場合の打ち手も、やはりミドルマネジャー層を介してのものとなりがちです。ミドルマネジャーに若手を育成してもらおうとする場合、育成能力のあるマネジャーはいったい何割くらいいるだろうかと考えてみてもらいたいのです。過半数いるというようなことは有り得ないに違いありません。

筆者はセミナーなどで聴講者の方々に、「育成能力のあるマネジャーが3割以上いるという企業様、挙手願います」と聞いてみることがよくあります。すると、100名いるうちの2,3名の手が挙がるかどうかです。セミナー後に個別に聞いてみると、おおよそ同じような感想を言われます。「仕事ができるというマネジャーは過半数はいると思うが、育成能力といった場合、1割いるかどうか」というような答えが多いのです。これには、昇進昇格時にマネジャー適性を見ていないという過ちもあるわけですが、いずれにしても2:6:2の必然は存在します。

それゆえ、ミドルマネジャー層への教育や働きかけは、それはそれで重要性はあるものの、それだけに頼っていては組織全体が強くなるということにはなりません。組織全体への直接的な働きかけなり、巻き込みがなければ、この壁を突破することは困難であり、様々な取り組みがなされては消え、なされては消えを繰り返すこととなります。人事・組織マネジメント上のあらゆる取り組みが一時的な効果に終わってしまいがちなのには、こうした事情があります。そうしたことの繰り返しとなってしまう場合、ミドルマネジャーの負担感と、効果が見られないことによる疲弊感、無力感は無視できないものがあります。せっかく前向きな取り組みをおこなっているにもかかわらず、かえって組織に悪循環をもたらすことにもなりかねないのです。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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