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  4. 【コラム】第14回 360度フィードバックの本質
コラム

360度フィードバックの本質

引き続き、執筆中の360度フィードバックに関する書籍の原稿から。
360度フィードバックは、日本企業においても徐々に普及しており、大手企業の導入率は半数近くになってきておりますが、一方では、依然として拒否反応を示される企業も数多くあります。過去に誤った導入の仕方をして痛い目に合っているケースもあるようです。そのような企業では、360フィードバック本来の意味についてきちんと考えることなしに除外していることが多いようです。ここでは、360度フィードバックとは本来どういう意味を持った手法なのか、について整理してみたいと思います。360度フィードバックの本質を捉えた表現として、以下の4点が挙げられると思います。

①「360度フィードバックは、コミュニケーションツールである」

360度フィードバックは、周囲の人たちから当人へのコミュニケーションの一つであり、また、それらのフィードバックをきっかけとして、コミュニケーションが生まれもします。日常的には、特に下位者から上位者へのフィードバックというのは、組織の中のパワーバランス上あまりなされません。フィードバックしたいことがないのとは違います。上司が部下について見ている何倍も、部下は上司をつぶさに見ていますので、良い面・悪い面ともに気付いていることはたくさんあります。しかし、それらについて何らかの合図は送るかもしれませんが、明確に進言する人は稀です。そうした事情から、上司も自己の強みや弱みを認識し、行動を改善するチャンスを失うことになります。360度フィードバックは、周囲の人たちからの個別のフィードバックではありませんが、ほぼ同様の機能を果たしてくれます。本人がきちんと受け止めることができれば、まさしく「魔法の杖」ともいえる貴重な情報を手に入れることが可能となるのです。そして、こうしたプロセスに職場の皆が慣れてくれば、360度フィードバックの仕組みを使わずとも、相互に気付いた点を率直にフィードバックし合う風土が形成され、人が育つ職場づくりへの第一歩が築かれることにもなるでしょう。

②「360度フィードバックは、職場改善ツールである」

360度フィードバックは育成目的で使われることが多く、対象者本人のための人材育成ツールという位置づけが主ではありますが、360度という通り、周囲の多くの人たちを巻き込む方法をとる点に特長があります。対象者一人あたり6名の人が評価をおこなうとした場合、延べ人数は6倍、対象者を含むと7倍です。この場合、対象者100名に対して、関係者数は単純計算で700名となります。これだけの人を巻き込む場合、効果は対象者本人の気づきということに限定されません。評価者に設定されている人たちへの意識付けも加わり、組織全体に効果は波及します。対象者の役割を明確に認識することで、評価者各人が自己の役割を認識することにもつながります。また、対象者の行動が改善される場合、その人一人だけの行動が改善されるということはまずあり得ません。必ず同時に、一緒に仕事をしている周囲の人たちの行動も改善されているはずです。そうした意味において、改善効果は職場全体に広がります。

③「360度フィードバックは、権限委譲のプロセスである」

360度フィードバックの結果を評価には反映しなくとも、行為自体は評価行為です。これまで評価とは、本人の上司または人事部門のみが持っていた権限です。同僚を評価したり、ましてや部下の立場で上司を評価するというようなことは通常ありません。360度フィードバックという仕組みは、その評価行為をおこなうという権限を一般の従業員まで含めて多くの人たちに委譲することを意味します。誰しも、評価という権限を与えられた場合、ある種の緊張感を伴うものです。「人に教えるという行為がもっとも学ぶことになる」とよく言われますが、教わる側から教える側に回った途端に、当事者意識や責任感がまったく異なってくるからです。評価についても同様のことが言えます。360度フィードバックのプロセスに評価者として参画する多くの人たちには当事者意識や責任感が芽生え、組織からの期待を感じ取ることにもなり、組織へのコミットメントは増す方向に向かいます。

④「360度フィードバックは、情報収集ツールである」

360度フィードバックは、対象者本人にとっては、当然ながら自分自身についての情報収集ツールとなります。自分自身の「見える化」を実現するたいへん強力なツールです。それを上司と共有するならば、上司にとっても相当に有用な情報となるでしょう。上司が見えている行動は常に一面的なものであることが多いからです。またそれだけでなく、この側面はあまり省みられることがありませんが、会社にとっても相当強力な情報収集ツールとなります。まず、各人の実際的な強み・弱みを把握することができます。すでに述べてきたように、この実際的という点は重要です。適性検査等で測定される潜在的な、いわゆる実際の場で発揮されうるかどうか確証のない能力ではなく、実際に発揮されているものを捉える、しかも一面的な見方ではなく、多面的な観察の結果という信頼性の高いものとなります。会社も、現場のリーダーさえも、社員一人ひとりについてどの程度理解しているといえるでしょうか。自己申告や人事面談等による情報収集はどうしても限定的なものに留まりがちです。360度フィードバックを活用することによって、従業員各人に関する行動面の強み・弱みなどの適性がデータとして把握できるとともに、周囲からの評判なども知ることができます。これらの情報は、異動や選抜登用の際の有力な情報源となります。また、それらの集合データを分析することにより、どの程度適正配置が実現されているかなど、組織力の最大化へ向けての示唆を導くことも可能となります。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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