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  4. 【コラム】第10回 360度フィードバックへの期待の高まり(2/3)
コラム

360度フィードバックへの期待の高まり(2/3)

360度フィードバックへの期待が高まっている要因として、前回述べた育成や評価の観点以外にも、アセスメントやコンプライアンス、バリューの浸透などの各観点がある。今回は、アセスメントの観点について述べていきたい。

昇進昇格時のアセスメントについては、これまではアセスメント研修方式によるヒューマンアセスメントが主流であった。グループでケース演習やディスカッションをおこなう中で、アセッサーがある基準に基づき採点をおこなうものである。しかし、ここ数年、現場での360度アセスメントへの置き換え、あるいは併用が増えてきている。理由は大きく二つある。一つは、実際的な側面を重視する傾向、もう一つは、対象者および対象者周囲の人たちの納得性の確保である。

アセスメントにおける実際的な側面とは、実際に行動として発揮されているかどうかを重視する観点である。ヒューマンアセスメントによる場合、潜在的な側面を見るので、日頃の活動の中で発揮されていないケースでも、高い点数となることがある。その場合、実際の場面で果たして発揮されうるかどうか、その確証は得られない。また、適性を持っていながらそれを発揮していない人を合格とし、適性が相対的に低いながらも一生懸命発揮している人を不合格とすることは、果たしてフェアな選抜といえるのかどうか。こうしたことから、実際の場面で発揮されているという点をより重視すべきということで、360度アセスメントの活用が進んでいる。

そしてもう一点、対象者や対象者の周囲の人たちの納得性も重要だ。不合格となった人たちも、候補者となっているわけであるから優秀な人材であり、当然ながら自社の貴重な戦力である。この人たちが落ちたことによりモチベーションダウンしてしまえば、会社全体としても大きなマイナスである。したがって、昇進昇格アセスメントにおいて、不合格となった人たちのモチベーションダウンを避けるということは、企業にとって殊のほか重要なことである。

ヒューマンアセスメントの場合、当然ながらアセッサーの見方という要素が介在する。しかもたった一度の観察機会のみによる結果となる。何らかの適性検査を併用する場合にも、結論が導き出されるプロセスはブラックボックスである。このような場合、受かった人はよいが、落ちた人の納得性が得られづらいことは言うまでもない。

同時に、現場の周囲の人たちにとってみると、「なぜあの人が落ちて、あの人が受かるの?」と違和感や不信感を持ってしまうことも度々起こる。実際に聞いた話の中で、一つの典型例としては、百貨店の売り場リーダーの管理職への登用場面などがある。高卒だがたいへんリーダーシップがあり、パートの人たちの面倒見もよく、現場でよくやっている人が落ち、現場に融和しておらず、現場での評判はさんざんだが、大卒で試験慣れしているため、合格してしまうようなケースだ。明らかに実際の働きとは異なった結果を得ることとなる。こうしたことを避けるために、現場での日頃の働きを重視しようという動きが見られ始めている。

加えて、副次的な点となるが、対象者の育成という観点もある。昇進昇格時など、キャリア上の大きな節目は成長するうえでも大きな節目、飛躍するタイミングとなりうる。役割が大きくシフトし、これまでとは違った適性が求められることも多い。こうした時に、成長を後押しするサポートをおこなうことは有効性が高い。360度によるフィードバックは、これまでの行動を振り返り、今後の成長へ向けての課題を鮮明にする。それゆえ、選抜の目的のもとに360度アセスメントを導入した場合にも、育成の観点から本人たちへのフィードバックにも力を入れる企業は増えている。(つづく)

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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