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  4. 【コラム】第9回 360度フィードバックへの期待の高まり(1/3)
コラム

360度フィードバックへの期待の高まり(1/3)

実はいま、「360度フィードバック」に関する書籍(HRアドバンテージ刊)を執筆中であり、2月下旬頃に日本経済新聞出版社より発刊予定である。現在はこの執筆に追われており、これとは別にコラムを書く余裕がないこともあり、この中で述べていることの一部を、一足先にここに掲載させていただくことにする。

「360度フィードバック」は、日本では360度評価や多面評価と呼ばれることが多い。その効果はおおよそ認知されているものの、日本企業では相変わらず何らかの抵抗感があり、欧米先進企業の約9割という導入率と比較すると、あまり普及は進んでいないといえる。しかし、大手企業を中心に徐々にではあるが確実に導入企業は増加しており、特に今後を考えた場合、普及がますます進むであろう背景がいくつか見られる 。

人材育成の抜本改革のほか、成果主義後の公平な評価、コンピテンシー後の行動観察、昇格アセスメントの納得性の確保、コンプライアンス上のモニタリング、グローバル人事におけるバリューの浸透等々である。

まず、人材育成の抜本改革についてだが、これまでの日本企業における人材育成といえば、手段としてはほとんど教育研修一辺倒であったといってもよいと思う。教育研修の重要性というのも当然あるが、一方、それだけでは人材は育たないということも、人材開発部門の方々はじめ経営陣なども承知のことである。にもかかわらず、教育研修のみを繰り返し実施してきたという企業は少なくない。

それが近年、内部統制などの関係もあり、費用対効果の観点がクローズアップされてくるにつれ、「教育投資効果の把握」という点が遅ればせながら経営陣に意識されるようになってきた。そうなると、人材開発部門としても育成効果について考えなければならなくなり、「教育研修だけでよいのだろうか」との再考を迫られるに至った。同時に、どのようにして育成効果を把握し、経営に報告することができるのか、という「育成効果の測定」ということも併せて課題となってきた。

これらが360度フィードバックが昨今、人材育成において活用されるようになってきた一つの背景だが、「教育研修だけでよいのだろうか」との疑問は、だいたい次のような思考経路を経て360度フィードバックに辿り着くようだ。「育成とは行動が変わることである。行動が変わるためには気づきが必要である。気づきを得るためには、他者からのフィードバックが重要である」という流れだ。

あるいはまた、次のような「OJTサポート」という観点もある。「教育研修などのOff-JTよりも、やはりOJTが重要である。OJTとは職場でおこなわれるものである。職場における人材育成をサポートする手段としてはどんなものが有効だろうか」との流れから、職場で多くの人たちを巻き込んだ形で実施し、OJTを促進する情報を提供するものとしての360度フィードバックに辿り着く。

次に、評価に関わる点にも、360度フィードバックへのニーズの高まりは顕著に見られる。成果主義後の公平な評価としての期待である。成果主義は一般的に、評価結果により報酬が変わる制度であるため、公平性、納得性がより強く問われることとなる。成果主義以前のように、全員の給与が一律的に上がっていた時代は、こうした問題は表面化しなかった。しかし、個人差が付く、極端な場合には給与が下がることもあるとなった場合、評価への執着は尋常ではなくなり、公平性、納得性が強く求められることとなる。

そして、公平性と納得性を確保するうえでの一つの有力な手段として、360度フィードバックが登場することになる。上司一人の評価である場合、上司による見方の一面性や部下へのエコ贔屓などが介在する余地が大きくある。そこで、360度フィードバックにより、周囲皆の多面的な観察の結果であるという公平性と、皆がそう言うなら仕方がないという納得性が確保されることになる。

特に、多くの企業が2000年前後に一斉におこなった人事制度改革の中で、多くの企業においてコンピテンシー評価が導入された。コンピテンシー評価とは、コンピテンシーに基づく行動の評価となる。行動評価を適正におこなおうとした場合、複数の観察者による評価が必要となる。上司が見えている行動は一面的であるということは誰しも感じるところである。こうして、周囲の人たちによる360度フィードバックが用いられることとなる。実際に、360度フィードバックの結果、上司の評価結果と同僚や部下の評価結果との間には乖離が生じることが一般的であることからも、その有用性は証明されうる。

昇格アセスメントの納得性確保やコンプライアンス上のモニタリング、理念・バリューの浸透への活用については、次回とさせていただく。

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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