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  4. 【コラム】第6回 モチベーションはプロセスに宿る(5)
コラム
 

モチベーションはプロセスに宿る(5)

仕事の価値の見出し方三種類のうち、三つ目は、組織や他者に対するコミットメントを高めることである。とりわけ、自分が属する職場へのコミットメントが重要だ。コミットメントとは、組織や他者の目標の達成に、自らの意思で積極的に関わるということである。個人の人生目標を会社の目標と統合すべきという論調もあるが、私はそれは違うと思っている。それは会社側の願望に過ぎず、実際のところ、従業員各人の目標が会社の目標と重なるということはそれほど多くはないと思われる。そうではなく、自分が関わることで、組織が何かを成し遂げることができるというところにコミットすることが正しいと思われる。

ただし、会社へコミットするということは、多くの人たちにとって簡単なことではないであろう。経営陣であるならそれは当然だが、従業員にとって会社とは、それほど近い存在ではないからだ。ピーター・キャペリは著書の中で次のように述べている。「社員が現在の職務を完璧に果たすためには、企業全体に対するコミットメントも、部門や工場に対するコミットメントも不要である。必要とされるのは、より身近な、同僚、作業チーム、プロジェクトなどに対するコミットメントだと考えられる。コミットメントは、企業のような抽象的な存在よりも、実在する人に対しての方がはるかに抱きやすいからだ。」さらに、「職場における人間関係を強化する試みは、結果的には社員の組織に対するコミットメントを促す。」とし、ある調査研究の結果を紹介し、同僚と友好的な関係を築いている人たちは、そうでない人たちよりも組織に対するコミットメントの度合いが強い点を述べている。「雇用の未来」(日本経済新聞社2001年) 

結局、仕事に価値を見出し、現在おこなっている労働を「自己目的的」なものとするためには、職場や仲間に対するコミットメントを高めることが重要であり、こうしたコミットメントを高めるうえでは、職場における人間関係を良好に保つことが重要であるということになる。モチベーションの第一回目に、チクセントミハイの言を引いて、いまの社会では内発的報酬がほとんど無視されていることが問題であり、外発的報酬による妨害がなくなったとき、はじめて内発的報酬によりモチベーション高く働くことができるということを述べた。そして第二回目において、仕事から遠ざかっていた人たちが強く求めるものに、社会参加や社会貢献といった根源的な欲求があり、また高業績者に共通に見られる持続的なモチベーションの裏にも、社会貢献への意思があることを述べた。

これら自己目的的な労働は、仕事に価値を見出すことができてはじめて実現され得る。そして、どのようにしたら仕事に価値を見出すことができるのかについて、三つの観点から述べてきた。結局、モチベーションとは欲求との関係であるから、人間が様々持っている欲求の重要な部分が満たされれば、それだけモチベーションは高まり、満たされなければ低下するということである。外発的報酬も短期的ながらモチベーションに影響は与えるが、ここで述べてきたような各観点は、外から与えられるものではなく、自分自身から積極的に見出していくものであるがゆえ、持続性の高いものとなる。欲求との関係で言えば、より根源的な欲求に根ざしたものということになろう。また、外発的報酬の場合、結果に対して何らか提供されるものであるのに対し、三つの観点はすべて結果ではなくプロセスに関わる点であるという点が重要だ。こうしたプロセスに根ざした点にモチベーションを埋め込むことができれば、他から刺激を与えられなくとも、自家発電によりモチベーション高く突き進むことができる。企業が常に求める「セルフモチベーター」の共通性がここにある。

したがって、人材を採用する際にも、スキル等の専門性以前に、こうした根源的な点を見極めることが何よりも重要である。社会参加や社会貢献を意気に感じ、自己成長に意欲的な人、協働の精神が旺盛であり、目の前の仕事に一生懸命になれる人である。仮に専門性が高くとも、根源的な点が欠如しているがゆえに、できるだけ楽をしたいというような人や、ちょっとしたことを不満に思い、他者のモチベーションまで下げてしまうような人を採ってしまえば、組織マネジメント上致命的である。また、採用のみならず、企業内におけるモチベーション施策も、付け焼刃的、あるいはばら撒き行政的な外発的な報酬に終始するのではなく、こうした根源的な点を補完すべく、ロールモデルを示したり、仕事の全体像やその意味合いを十分に説明したり、職場の人間関係を良好に保つための支援をするなど、プロセスを支援することの方がはるかに重要性が高いと思われる。 (完)

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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