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コラム
 

モチベーションはプロセスに宿る(3)

前回の最後に、仕事の価値の見出し方として三種類あると述べた。それぞれについて、少々詳しく触れていくこととする。

一つ目が、労働そのものが根源的に持っている価値に気づくことである。前回のコラムの中で産休をとっている間、不安感や孤立感、あるいは一種の罪悪感に悩まされたという方の例を紹介した。これらの感覚は、裏を返せば、仕事が根源的に持っている価値が失われたことによる思いといえる。それは、他者との関わり、社会参加、それらを通しての充実感、役立ち感、または安心感などであろう。

しかし、日々仕事に追われていると、こうした価値が見えなくなりがちであり、その結果、モチベーションは低下へ向かうことになる。得ている価値があったとしても、それを感知しえなければ価値にはならない。できることならば、そうした重要な価値を常に認識し、いきいきと働く源としたいものである。

日常業務に埋没していると見えなくなりがちではあるが、仕事からしばらく遠ざかることで見えてくる。出産に限らず、病気やケガ、介護など、やんごとなき事情により、“働きたくとも働けない”状況を経験した人は皆理解できるに違いない。

このような労働が根源的に持つ価値に気付きづらいのは、日常業務に埋没しているからばかりではない。世間一般で普通に思われている点に、落とし穴が潜んでいると考えられる。こうした誤った考え方を削がない限り、これらの価値を常に意識することは難しい。誤った通念としては、大きく二通りあると思われる。

一つには、社会全体として、労働は「手段」であるという暗黙の共通認識があるように思われる。たとえば、「何のために働くのか?」という問いが世間では多く聞かれるが、この質問自体、労働は「手段」であるという決めつけを含んだ質問であろう。こう聞かれてしまっては、「お金のため」や「自己実現のため」と答えがちであり、労働そのものを「目的」とした答えは出てきそうにない。

「何のため?」ではなく、「なぜ働くのか?」と問うたとしても、「・・・のため」と手段を答えるケースが多いに違いない。では、「どんな価値を求めて働いているのか?」という問いはどうだろうか。こう問われれば、働くことによる価値を考えなければならなくなる。多くの場合、先に挙げたような根源的価値に行き着くのではないだろうか。人間の根源的欲求に根ざした、疑いなく尊い価値である。

したがって、一つの方法としては質問を変えるということである。「何のために働くのか?」というような自分自身への問いはやめて、「自分はどのような価値を求めて働いているのか?」というような自らへの問いを発するようにしたいものである。

誤った通念のもう一つは、一般的に、「労働」は「余暇」の対立概念として考えられがちであるという点である。これは、余暇が労働時間外の活動であることから、なにか当然のごとくそう捉えられがちであるが、それは時間の切り分けの話であって、性質的にはどうであろうか。

たとえば、「労働」の対義語は「余暇」なのか、と考えてみる。そうであるとすれば、「余暇」は完全に自発的なものであるから、一方の「労働」は非自発的なものであり、内発的報酬が得られない活動ということになる。完全に非自発的な活動は、強制された労働であり、いわゆる「疎外された労働」にほかならない。

であるなら、労働時間をできるだけ少なくし、余暇時間をできるだけ多くすべきということになる。そうした種類の労働が現代にはないとは言い切れないが、労働がすべてそうであるはずはない。ならば、対立する概念は「余暇」ではない。

ちょうどよい言葉が見つからないので、取りあえず「非労働」とする。働かない状態である。非労働の状態が常となったならば、何が失われるだろうかと考えてみる。非労働が常となったなら、果たして「バランスのとれた生活」が可能なのであろうか。社会の中に「居場所」を見つけることはできるのだろうか。そもそも、人間は「役割」なくして生きられるものなのか。「存在する意味」を確認できるのか。このように考えていくと、非労働で失われるものとしては、やはり先に挙げたような根源的価値に辿り着くのではないだろうか。

少々禅問答のような自問自答を続けてしまい長くなったので、今回はここまでとし、続きは次回以降とさせていただくこととする。(つづく)

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

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