1. トップページ
  2. インフォメーション
  3. コラム
  4. 【コラム】第3回 モチベーションはプロセスに宿る(2)
コラム
 

モチベーションはプロセスに宿る(2)

どのようにしたら、プロセスに目を向け、モチベーションを高めることができるのか? というたいへん困難なネタ振りで前回を終わらせていたことを後悔しつつ、難題に挑むこととする。

外発的報酬が重要でないとは言わないが、外発的報酬のみに動機づけられて仕事をしているわけではない、という点をまずははっきりさせておきたいと思う。外発的報酬の最たるものはお金なので、まずはそこから始めたい。「もし宝くじで5億円当たったなら、あなたは仕事を辞めるだろうか?」 実はこの問いは、JSHRM主催の人材マネジメントアドバンス講座の中で、毎回受講者に問うている質問である。5億円あれば、金銭的には問題なく一生暮らしていけるであろう。お金の心配はいらないこととなり、仕事における金銭的な動機を排除して考えることができる。

これまで受講者100数十名のうち、2名のみが「辞める」と答え、他は全員、それでも「仕事は続ける」との答えであった。その2名というのは共に、相当に入れ込んでいる趣味があり、辞めたら即それをやりたいというものが明確にあった。たとえば一人の人は、写真とバイクが趣味であり、仕事を辞めたら、世界中をバイクで旅しながら各地の風景を写真に収めたいという分かりやすい夢を持っていた。現状では定年後の夢となっているが、宝くじが当たったなら、より早く実現できるというわけだ。

大多数の「仕事は続ける」という人たちに辞めない理由を聞いてみると、報酬以外に様々な要素があることが分かる。出産をして産休経験のある人が、次のように述べていたのが強く印象に残っている。「産休で休んでいる間中、不安で不安で仕方がなかった。社会から切り離されている不安感、孤立感、それから社会の役に立っていないことに対する罪悪感、、」云々。もちろん社会から切り離されているわけでも、ましてや役に立っていないわけでもないが、当人としてはそのような思いに苛まれる日々を送っていたという。仕事をしていれば、感じることはなかった思いである。

つまり、仕事をする意味として、報酬ではなく、社会参加や社会貢献を挙げているわけである。社会とのつながりを保つ、というのは社会的生き物である人間の根源的な欲求の一つに違いない。そのほかに出ていた意見としては、仕事を通しての自己成長や、自己の可能性への挑戦などであった。

もう一つ、根源的な欲求が垣間見られる例を挙げてみたい。高業績者に共通に見られる特徴である。筆者は仕事柄、高業績者の分析というものを数多く手掛けてきた。ここ10年間ほどでインタビューをした高業績者数は1,000名を超えるが、それらの人たちは総じてモチベーションの高い人たちであった。歩合給の営業職ばかりではないので、高業績者といえども報酬面では他の人たちとほとんど変わらないケースも多くある。業績が高いにもかかわらず、報酬差が小さければ、その点を不満に思ってモチベーションが下がってもおかしくはない。にもかかわらず、何ゆえ、彼らのモチベーションは高いのであろうか。

インタビューをして分かることは、他の人たちに較べ、仕事に対する考え方がはっきりしているということだ。仕事に対する誇り、自信、あるいは哲学を持っている。彼らから多く聞かれるのは、「仕事を通して・・・を実現したい」、「仕事を通して・・・という貢献をしたい」等、「仕事を通して」という言葉である。つまり、仕事の対価としての報酬ではなく、その向こう側に目が向いているのだ。

以上に挙げたようなケースは、「自己目的的」と呼ぶことができるであろう。人がその行為の中に楽しみを見出し、その楽しみ自体がその行為の最大の動機かつ報酬になっている場合である。ただし、楽しい仕事、自分の好きな仕事をやることがよいということではない。企業の中ではそういうことは稀だからである。

その仕事が好きではなくとも、価値を見出すことはできる。価値の見出し方として、大きく3つあると筆者は考えている。一つは、労働そのものが根源的に持っている価値に気づくこと。先の例の社会とのつながりや他者との関係などである。二つ目は、今現在おこなっている仕事に意味を見出すこと。自分にとっての意味と社会にとっての意味とがある。そして三つ目が、組織や他者に対するコミットメントを高めること。とりわけ、自分が属する職場へのコミットメントが重要と考える。

次回は、これらの3つの価値の見出し方のそれぞれについて少々詳しく述べるとともに、金銭面以外の外発的報酬についても触れたいと思う。 

プロフィール

元マーサージャパン株式会社 代表取締役副社長。マーサー社ではコンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、日系企業海外現地法人の現地化推進等のコンサルティングのほか、コンサルティングノウハウのITプロダクト化、提携戦略等による新規事業開発に従事。現在は、継続性と実効性を確保できるマネジメント手法の開発および普及に力を注ぐ。著書に、『会社人生は評判で決まる』(日本経済新聞社)、『コンピテンシー活用の実際』(日本経済新聞社)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』(共著、東洋経済新報社)ほか。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長
相原 孝夫(あいはら・たかお)

サービスに関するお問い合わせ・ご相談はこちらまで

お問い合わせ

人事に関する情報が満載メールマガジン配信中

メールマガジン登録