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最新人材マネジメント情報

「全社員にリーダーシップが求められる」背景

リーダーシップとモチベーションは同じ事柄の両面

今、(データを活用する)モチベーション・マネジメント研修の内容改訂作業をしているのですが、リーダーシップとモチベーションは実は同じ事柄の両面である、ということに気付きつつあります。リーダーシップとは、要するに人のモチベーションを高める力と言うことができます。そして人のモチベーションとは、他人だけでなく自分自身のモチベーションも含むと考えるならば、モチベーションを高めるとは、すなわち、自分自身に対してリーダーシップを発揮することである、と言うことができる筈です。

この10年来、(GEやP&Gを筆頭とする)グローバル企業グループにおいて、「リーダーシップ・コンピテンシー」が策定され、しかもそれは「職位を問わず全社員に求められるもの」として提示されることがトレンドであったと感じているのですが、それはそのような文脈から理解できます。つまり、現在リーダーシップが求められているとは、決して、「グローバルリーダーの候補者を早い段階から見出して速いスピードで育成して40代で社長にしよう」という文脈だけの話ではなく、一人ひとりに、自分自身のモチベーションを管理すること、すなわち自分自身の生き方へのリーダーシップが求められるようになっていることである、と考えてよいでしょう。 


リーダーシップとモチベーションの実体とはある「姿勢」

リーダーシップも、モチベーションも、人材開発の2大テーマと言ってよいくらい大きなテーマですが、この2つが取り上げられる文脈はかなり異なります。リーダーシップというと、グローバルリーダーを育てなければ、といった高邁な文脈で取り上げられることが多く、一方、モチベーションというと、モチベーション=やる気が低いからこそ問題になるわけで、中高年社員のモチベーションをどう維持するか、といった身近な文脈で取り上げられることが多いです。

しかし、リーダーシップもモチベーションも、どのような「能力」や「行動」に対応するのかよくわからない、つまりその目に見える「実体」はよくわからない、という点では共通しています。リーダーシップについては、「リーダーの資質や行動からリーダーシップを探っても無駄で、ついていく人(フォロワー)がいればそこにリーダーシップはあるのだ」という、定義を放棄したような定義が知られていますし、モチベーションについても、「モチベーションを意識することなく、仕事が淡々粛々となされるのがモチベーションの理想である」という指摘がなされ、弊社の相原も「仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか (幻冬舎新書)」という書籍でそのことを論じています。

そして、リーダーシップとモチベーションそれぞれの「核」を探れば探るほど、そこにあるものは実は同じものである、という認識に至ります。すなわち、どちらにおいても、その核は「能力」「行動」といった目に見えるものではなく、それ以前の「姿勢」、すなわち、「自分の人生は自分で決める」という姿勢に行き着くのです。言い換えれば、「自分自身の人生を自分の意思で導く」姿勢が確立すれば、リーダーシップもモチベーションもついてくる、ということです。

「仕事だから」「会社に命じられたから」という認識の中では、「自分自身の人生を自分の意思で導く」という姿勢は萎えてしまうことがほとんどだと思われますが、その中であえて、「自分自身の人生を自分の意思で導く」ことを、自分自身に対して、そして周囲に対して約束することから、リーダーシップもモチベーションも始まる、ということです。「自分の自身の人生を自分の意思で導く」ことができている人には、他人もついていくでしょうし、「自分の自身の人生を自分の意思で導く」ことを決意している人にとっては、モチベーションの問題とは、単に、心身の状態を整える技術論にすぎないことになるでしょう。


自分の価値観を見出すことが最初に来ること

私達のモチベーション・マネジメントの研修では、一人ひとりのモチベーション源泉となる、「キャリアを形成するにあたってこれだけは譲ることができない拘りの価値観」を把握する、ということを重視するのですが、そこを掘れば掘るほど、「多様な人々を束ねる」リーダーシップの問題と重なってくることを感じます。

・・・という中でふと、日本GEでリーダー育成プログラムを開発された八木洋介氏(現LIXILグループ執行役副社長)の語り(「戦略人事のビジョン、八木洋介・金井壽宏著、光文社新書」)を紐解いてみると、八木氏は、「リーダー育成プログラムの核になっている考えは、日本人社員のリーダー候補達に『自分の軸』を明確化してもらうことであり、ここで言う軸とは、その人の言動の中の中核をなす価値観、その人がこれだけは譲れないと思うこだわりや、これだけは貫き通したいと思う哲学のことである」と語っておられます。これはモチベーション・マネジメントの考えと同じです。

また、去る5月30日、リクルートワークス研究所主催のシンポジウムに参加し、「中高年のやる気をいかに引き出すか」ということがテーマのセッションを聴講していたのですが、その中で博報堂の自律型キャリア開発プログラムの事例が紹介されていました。そこで報告されていたのは、キャリア開発プログラムで重視するのは、やはり、自分の職業人生の「満足度の基準」を与えるような根底的な価値観、すなわち自分の職業生活の「核」「幹」を見出すことであり、そのことを通じてキャリア自律性が高まった人からは、「事業提案」が多く出てくる傾向がある、ということなのです。つまりそこでも、自分の価値観を確立すると、モチベーションが高まり、さらにリーダーシップが生まれる、ということなのです。


究極においては価値観だけが重要

ふと気づくと、そのあたりのことについて、先日、当ウェブサイトの対談コーナーで対談させていただいた酒井穣さんが、「リーダーシップでいちばん大切なこと(日本能率協会マネジメントセンター)」という書籍の中で、ラディカルに主張されていました。酒井さんは、リーダーシップの概念から、影響を与える対象が「他人」か「自分」かという側面すら捨て去ってしまい、リーダーシップの本質を、「貫き通すことができる自分の価値観」に純化することを提案されています。すなわち・・・

「リーダーというのは、他人がなんと言おうと「孤独」を受け入れて、常に自分の価値観どおりに行動しようとする人々」
「自分本来の価値観を自分自身で見いだすことができれば、それがすなわちリーダーシップ」
「自分のリーダーシップを必要としているのは、どこかの誰かという「他者」ではなくて、たった一度の人生を、自分の価値観に従って生き抜こうとする「自分自身」なのです。」

・・・と。酒井さんは同書においてさらに、今、我々一人ひとりがそのような姿勢を身につける切迫した必要性があることについて、述べられています。

「好きか嫌いかにかかわらず、私たちは今、リーダーシップを狸得する以外に、自立して生き残る方法がない時代に突入しつつあるのです。この視点からすると、リーダーシップの獲得は、完全競争の時代において、自らの生存確率を高めるための唯一の手段と言えるのかもしれません。」

その切迫感については、人によって感じ方が分かれるところでありましょう。私自身は、「津波が来たら一人ひとりが独立して逃げるべし」という「津波てんでんこ」という言葉を重ねながら、切迫感を感じようとしています。少なくても、今度来る困難な時代には、「付和雷同」があってはならないでしょう。



プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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