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最新人材マネジメント情報

ビッグデータ時代と女性活躍推進

安倍政権の女性の登用目標は無謀?

安倍政権が、2012年度自民党政権公約で掲げた「2020年までに指導的地位の女性割合30%以上」という目標は、2013年の参院選の公約でも繰り返され、まだしっかり生きています。その目標には、確かにそのような状態が実現できれば望ましい、と思わせるものがあるから生きているのだと思います。しかし、「指導的地位」とは管理職以上のことであるとすると、この目標はほとんどの日本企業にとって無謀と言ってよいレベルの目標だと思われます。

というのは、管理職を選挙で選ぶというならともかく、人事では、管理職に任用するためにはそれに向けての階段を、一歩一歩昇進させていかなければならないからです。現状では平均して1割そこそこと言われている管理職の女性比率を、数年後までに3割にまで高めようとしたら、「男女が同じ実力であれば女性を優先して昇格させる」ということをさらに超えて、「女性は別枠でスピード昇進させる」、つまり、実力的に劣っていると見なされていても女性の方を先に昇進させる、ということが避けられない企業が多いと思われます。(人事データでシミュレーションしてみれば明らかになります。)

そのような「無謀な」目標設定、および目標達成に向けてのアクションをとる価値を、あらためて考えてみましょう。その価値を示せずに女性の登用を推進すれば、組織運営の根本理念が揺らぎ、また、男性社員の反発は避けられず、組織を維持することができなくなってしまうでしょう。


「女性が活躍する企業は業績が良い」理由を押さえる

安倍政権が女性活躍推進を掲げる理由は、文脈に照らすと、より多くの女性を労働力として活用することで経済成長を図ろう、ということであるようにも読めます。つまり、人口減少社会、超高齢社会に突入する中で働き手を増やすためには、女性にもっと働いていただく必要があり、そのためには女性が仕事をし易い環境をさらに整える必要があり、そのためには、出産という女性固有のライフイベントについての理解を持つ女性が指導的地位に就くことが必要、ということです。

しかしそれは、政権にとっての理由であっても、企業が女性活躍を推進する理由にはなりません。株主に責任を負う企業が女性活躍推進を掲げる理由は、女性が活躍することで業績が上がる、ということでなければなりません。そして実際、女性が役員や上級管理職として活躍している会社ほど、株主から見た業績も、組織パフォーマンスも高い、ということは、様々な調査で裏付けられています。(例えば、「第4回WINジャパン・コンファレンス - 更なる可能性の追求」(2014年4月18-19日)における、マッキンゼーの報告)

では、女性が活躍している企業の方がなぜ業績が良いのでしょうか?その「理由」に着目し、その「理由」に焦点を当てて施策を打たなければなりません。その「理由」としては、次の1)~5)が考えられ、後ろのものほど積極的な理由となりますが、業種を問わず指導的な女性を3割にまで増やす積極的な理由となるものは、「5)女性の方が効果的にリーダーシップを発揮できる」というものしかありません。

1)そもそも業績が良いので、女性を活躍させる余力がある。(=女性が活躍しなければなお業績はよい。)
2)仕事の仕方がきちんと明文化されているため、女性を含めた多様な人材が活躍しやすい。(=女性は活躍しなくてもよい。)
3)女性の視点を入れることで、多様な発想が得られる。(=女性でなくてもよい。)
4)女性の視点が事業上有効である。(=事業特性に応じて、必要なところに必要な人数だけ女性がいればよい。)
5)女性の方が効果的にリーダーシップを発揮できる。

女性の方がリーダーとして優れている

つまり、現在の経営環境においては、概して女性の方がリーダーとして優れている、という理由を積極的に見出すとともに、その理解を共有していく必要があります。そして実際そうである可能性は大いにあるように思います。

当コーナーの先の稿「ビッグデータ時代の働き方のヒント」において、これからの時代の働き方は、「とことんつないでいく」ことが基本になるのではないか、その中で、「ボス猿」「囲い込み」の姿勢は解除されなければならない、ということを述べました。実際、男性特有の「ボス猿」「囲い込み」「権力闘争」意識が障害となって物事が進まない、と感じることが最近とみに多いのです。

男性特有の「競争意識」「権力意識」は、競争の推進力であり、従って、業績向上への一つの鍵でもありました。しかし、このまま男性的な意識で企業が運営されていったとしたら、日本企業の発展は決定的に行き止まりになる、ということを考えてみることは悪くありません。

歴史を振り返っても、「ボス猿」的な部族感情で動いてきた社会は、発展が頭打ちになりました。文明史を振り返ると、文明の原動力となったキリスト教やイスラム教が目指したのは、ある意味では、部族を超える普遍的な価値観によって部族感情を超えることでした。しかし、部族感情をついに克服できず、部族の法が支配的な法となっている地域は、部族間抗争を通じて常に疲弊し、発展は頭打ちになってきました。(南イタリアの一部やパキスタンのイメージ)

それと同じことが、企業においても言える可能性があります。男性固有の競争意識をこれ以上支配的にすると、企業社会の発展は頭打ちになる、と。一方、女性は女性同士お茶を飲みながら連携し、昔からの仲間とは「女子会」も続け、協力関係を保っている、と。そうなると、これからの時代には、女性の方が、リーダーとして相応しいのではないか、と。

女性の方がリーダーシップを発揮しやすいという論は、次のようにいくつか出ています。

男性より女性の方が、「革新的リーダー」になりやすいという論
リーダーシップには「飴と鞭型」と「啓蒙型」とがあり、後者の方が高い組織成果につながりやすい。前者のイメージは男性的リーダーシップの典型的イメージとなっているため、女性はそれを避けて後者の方法をとろうとし、結果として、良いリーダーになりやすい。(入山章栄氏)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140320/261498/

女性固有のライフイベントは逆に良いリーダーとしての武器になるという論
女性は、子育て期間を勉強の期間にも充てることで、最新の学問知識、子育てを通して得られる人を育てる力、そして(ハウスマネージメントを通じて)いくつものことを同時にこなすスキルを身につけ、武器として活用できる。また、女性特有の母性的な力の価値は、社会でも高まっている。(中野裕弓氏)
http://www.kaigaiseikatsu-supli.jp/message/messe20/page2.html

求められる女性の力が評価されるように人事評価尺度を変える

女性の方が男性よりもこれからのリーダーとして相応しい資質を持っているとすれば、女性ということを特に意識せずとも、これからのリーダーに求められる資質が評価されるようにすれば、自ずから女性の方が男性よりも多くリーダー候補としてノミネートされるようになる筈です。それこそがあるべき姿であると言えるのではないでしょうか。

そのような人事評価尺度の調整は可能でしょうか。例えば次のように人事評価尺度を変えていくことはいかがでしょうか?

従来の強調点 → 今後の強調点
A) 業績への拘り → 品質への拘り
B) 数量的な拡大を求める → お客様視点で質を高める
C) メンバーに高いハードルを示す → メンバーのチャレンジを褒める
D) ネットワーキング → 多様な人を受け入れる
E) 自信を示す → 感謝の気持ちを示す
F) 論理的分析・根拠 → 直感的な印象・美観

もっとも、男性固有の「競争」「権力」への志向性を、女性固有の「つながり」「皆で決める」ことへの志向性でとって替えればそのまま次の時代のリーダー像として十分かというと、決して十分ではないと思われます。というのも、女子が出産・育児の中で遺伝子の中に育んできた「つながり」「皆で決める」ことへの志向性の中には、遠くの異質な人々を受け止めることまでは含まれていないと思われるからです。

遠くの異質な人々をも受け止めることができるよう、女子力をバージョンアップした、女子力2.0といったものを築いていく必要があることになるでしょう。もしかしたら、女王の包容力と普遍的な法の支配が組み合わさって大英帝国の繁栄が築かれたイギリスのエリザベス一世やヴィクトリア女王の治世に、女子力2.0のヒントがあるかもしれません。

一方、そのような女子力2.0が花開いた時、これまでの企業の運営の主役は女性に譲って、男性はまた別の方向に進むべきことになるのでしょう。その方向とは、男性的な特徴をいっそう突き詰めることによる、次のいずれかになるのではないでしょうか。

X) これまで以上に多様なものを包摂できる「抽象度の高い枠組み」の創出と、その新しい枠組みに基くシステムや仕組みづくり・・・その仕組みでもって、これまでよりも高い視点から多様なものを「囲い込む」ことを目指してもらって結構!
Y) 全く未知の分野での「起業」・・・その未知の領域を独占してもらって結構!


プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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